C・ロナウドはユヴェントスを欧州王者に導けるか?ピルロの采配と落ちない得点ペース。
ビッグクラブで幾度となくビッグイヤーを獲得してきた。
今年2月に36歳を迎えたばかりのクリスティアーノ・ロナウドだが、ユヴェントスで3クラブ目のビッグイヤーを虎視眈々と狙っている。彼はマンチェスター・ユナイテッドとレアル・マドリーで合計5回チャンピオンズリーグ優勝を経験した選手だ。
C・ロナウドは今季、セリエAで18試合16得点。ゴールの量産ペースはまったく落ちていない。
往年のストライカーでさえ、35歳という年齢ではC・ロナウドのように得点を挙げられなかった。ラウール・ゴンサレス(リーグ戦22試合9得点/当時所属アル・サッド)、ルート・ファン・ニステルローイ(28試合4得点/マラガ)、ティエリ・アンリ(27試合15得点/ニューヨーク・レッドブル)...。”フェノメノ”の愛称で親しまれたロナウドに至っては、コリンチャンスでノーゴールに終わり引退を決意している。
■努力の賜物とプロフェッショナリズム
無論、それはC・ロナウドの努力の賜物である。
ユヴェントスでチームメートだったメフディ・ベナティアが以前、「ベルガモで試合があった時に僕たちはベンチメンバーだった。監督がローテーションをしたからだ。3日後に次の試合を控えていたからね。その試合の帰りに、遠征バスで突然クリスティアーノから携帯でメッセージが届いた。『これから何をするんだい?』と尋ねてきた。『夜の11時だから自宅に戻って寝るよ』と返した」と語っていたことがある。
「そうしたら、『ジムに一緒に行かないか? 今日は汗を掻いていないから』と送ってきた。僕は『家に帰ってソファでテレビを見たい』と返したよ。その時、クリスティアーノは並の選手ではないと悟ったんだ。クリスティアーノの近くにいたら、それまで以上に彼に対する敬意を覚えると思う。彼は人生のすべてをフットボールに捧げている」
C・ロナウドがユヴェントスに加入したのは2018年夏だ。2017-18シーズン、マドリーでチャンピオンズリーグ3連覇を成し遂げた後、突如として退団希望を口にした。そして、ユヴェントスが移籍金1億ユーロ(約120億円)で彼の獲得を決めた。
当然ながら、ユヴェントスがC・ロナウドを獲得したのはチャンピオンズリーグ制覇の目論見があったからだ。C・ロナウドとマタイス・デ・リフト(2019年夏加入/移籍金7500万ユーロ/約89億円)の補強は欧州の頂を目指してのものだった。
ユヴェントスが最後にビッグイヤーを掲げたのは、1995-96シーズンある。決勝でアヤックスとの激闘をPK戦の末に制して、クラブ史上2度目の優勝を決めた。マルセロ・リッピ当時監督の下、エースにアレッサンドロ・デル・ピエロを据え、中盤ではアントニオ・コンテやディディエ・デシャンが目を光らせていた。
2019-20シーズン、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦でリヨンに敗れた12時間後にマウリシオ・サッリ前監督が解任された。「マウリシオは育成年代から指導を始めて、セリエAで優勝した。イタリアのフットボールにその名を刻んだと思う。しかしながらチャンピオンズリーグの結果は散々だった。いま、我々にとってそれは夢ではなく目標だ。我々の下には重要なチームがあり、世界一の選手がいる」とはアンドレア・アニェッリ会長の言葉だ。この大会を如何に重視しているかが分かるエピソードである。
アニェッリ会長が世界一の選手だと評したC・ロナウドは、サッリ前監督と折が合わなかった。途中交代や試合中の戦術に関する指示に、C・ロナウドが度々不満をあらわにしていた。
また、サッリ政権ではC・ロナウドのポジションが定まらなかった。「クリスティアーノは左ウィングの位置で700ゴール以上を決めてきた。しかし、少し中央寄りのポジションにしたとして、彼のような素晴らしい選手に大きな違いがあるとは思えない」というのがサッリの弁である。
■ピルロの采配
一方、この夏に就任したアンドレア・ピルロ監督は【3-5-2】【4-4-2】【4-2-3-1】と複数システムを使い分け、C・ロナウドに関しては基本的にアルバロ・モラタと2トップを組ませている。ポストワークをモラタが担当して、中盤にはウェストン・マッケニーやデヤン・クルゼフスキと走力のある選手が控える。「左サイドから中央に入ってくるのがクリスティアーノの最適なポジションだ」と指揮官が語るように、C・ロナウドが左に流れてボールを受ける動きはスムーズだ。
ミドルゾーンではアルトゥール・メロ、ロドリゴ・ベンタンクール、アーロン・ラムジー、アドリアン・ラビオと技術と戦術眼に優れた選手たちが試合をコントロールする。右サイドからはフアン・クアドラードが正確なクロスを送り、C・ロナウドがファーサイドから入ってきてヘディングを叩くという得意な形も作ることができる。またフェデリコ・キエーザという突破力のある選手がいて、攻撃に深みがもたらされる。
「700ゴールは過去のことだ。チームのために、もっとゴールを決めたい。バロンドール? 素晴らしい賞だけれど、個人賞は僕のメインエンジンにならない。重要なのはチームのタイトルだ。ユヴェントスやポルトガル代表の勝利を優先する。記録は、その先についてくる。フットボールは、僕にとって常に挑戦だ」
「33歳や34歳という年齢がキャリアの終わりを意味するわけではない。それは僕が証明していると思う。僕は成熟していて、なおかつトップフォームにある。試合に勝って、帰宅して、息子たちに祝福される。それが僕の最大のモチベーションだ」
かつて、C・ロナウドはそう語っていた。
とはいえ、バロンドールを5回受賞している選手である。リオネル・メッシ(6回受賞/最多)と2008年からバロンドールを独占してきた。そこに割って入ったのはルカ・モドリッチ(2018年)のみだ。
今季、チャンピオンズリーグのディナモ・キエフ戦で公式戦750得点を記録した際には「750ゴール、750の幸福な瞬間、愛すべき人たちの750回の笑顔。この数字に達するためにサポートしてくれたすべての監督とチームメートに感謝したい。僕をトレーニングにかきたてる対戦相手にも。次の目標は800ゴールだ」というコメントを残している。その瞳の先にビッグイヤーがあるのは間違いないだろう。