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WBO/WBCスーパーウエルター級タイトルマッチは血まみれのスプリットディシジョン

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 現地時間30日にラスベガス、Tモバイル・アリーナで催されたWBO/WBCスーパーウエルター級タイトルマッチは、2-1の判定でセバスチャン・フンドラがティム・チューを下した。

 WBO王者だったチューは2度目の防衛に失敗。フンドラは空位だったWBCタイトルも手に入れ、2冠チャンプとなった。

 フンドラは昨年4月8日に、保持していたWBC暫定スーパーウエルターのベルトをKO負けで失っていた。左フック一発でリングに大の字になったシーンが強烈過ぎて、今回も不利と見られていた。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 両者には身長で23cm、リーチで24cmもの差があった。24戦全勝17KOで、ラスベガスにおける初陣となったチューは、初回、フンドラのジャブをかい潜って、右ストレート、左フックをヒットしてペースを握る。

 2回も同じような展開ではあったが、フンドラのジャブが当たるようにもなっていき、距離が徐々に197cmに傾いていく。

 翌第3ラウンド、WBOチャンプの頭部から、かなりの出血が認められた。2回の終盤に、偶然フンドラの左肘が当たり、裂けたのだ。以後、チューは流血で視界を奪われ、元暫定WBC王者のストレートを喰らう。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 4回、チューの顔面が真っ赤な血で覆われるなか、フンドラのジャブが冴える。ロングレンジからの左ストレート、左アッパーもWBOチャンプの顔面を捉えた。5回、チューは鋭いステップインで右を振るうが、グローブで両目を擦るシーンが目立つ。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 今回、チューはオーソドックスのキース・サーマンと戦う予定だったが、試合直前にサーマンが右上腕二頭筋を痛めたため、急遽、フンドラ戦が決まった。試合に向けたキャンプでは、サウスポー対策をしていなかったであろうが、チューが197cmのレフトハンダーを苦手としているようには見られなかった。

 タラレバにはなるが、鮮血が自らの目に入らなければ、チューが勝てたファイトだったと筆者は感じる。終盤に向かい、フンドラの手数は増したが、この長身選手には、ノックダウンに繋がるようなパワーが無かった。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 結局、 116-112でチューの勝ちとしたジャッジが一人。残る二人は、116-112、115-113でフンドラを支持。197cmの"The Towering Inferno"が、2本のベルトを獲得した。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 試合後、勝者は言った。

 「自分の鼻を折りたくなかったです。これが人生であり、ボクシングです。賢く戦う必要がありました。だから、頭を駆使したんです。今夜、僕の実力を見て頂けていたら、嬉しく思います。

 チューが世界チャンピオンであることには、理由がありました。彼とリングを共有し、歴史を築くことができて光栄ですね」

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 敗者も語った。

 「私は何があったって、常にリングに立ち、戦う。言い訳はしない。いつでも、誰とでも戦うよ。良い興行を打ちたいなら、誰に電話すればいいのか知っているだろう」

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 試合後のリングに元WBA/WBC/IBFウエルター級チャンピオンのエロール・スペンス・ジュニアが上がり、フンドラに対戦を要求した。このカードは実現しそうだ。が、個人的にはフンドラとチューの再戦が見たい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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