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マニュアルに固執?融通が利かない?ある中国人観光客が語った「日本のサービスへの不満」

中島恵ジャーナリスト
(写真:アフロ)

今後、本格的に回復が見込まれる中国人観光客。彼らの日本のサービスにかける期待は大きいが、中には思いがけないところで、不満を抱いている人もいるようだ。

ケーキのお持ち帰り禁止

それは、アメリカから中国に帰国する途中、日本に立ち寄った富裕層の中国人カップルに起きた話だ。

私の知り合いの在日中国人がその富裕層カップルを東京都内の高級レストランにアテンドした。カップルの1人が誕生日だったため、彼らは5000円の持ち込み料を支払って、食事の席に有名なケーキショップのホールケーキを2つも用意したという。

その知り合いは言う。

「キャンドルに火をつけたり、歌を歌ったり、その場はおおいに盛り上がって、いい雰囲気でした。

でも、私たちはフランス料理のフルコースを食べて満腹だったので、もうこれ以上食べられない。そこで、自分たちの責任で持ち帰りますから、とケーキの持ち帰りをお店に頼んだのですが、お店側から断られました。

『申し訳ありませんが、規則ですから、できません』というのです。

もちろん、ルールはルールだということは、私たちも理解できます。日本に来たら、日本のルールに従うべきだというのも、その通りです。私もお店側が言う通りに通訳しました。

しかし、そのレストランから宿泊先のホテルは目と鼻の先なんです。持ち帰る間にケーキが腐るとは思えません。それに、お誕生日のために特別に用意したケーキです。なぜ、そこまで頑なに断るのか。もう少し臨機応変に対応してくれないものか、と残念に思いました。

日本人スタッフのあまりの頑固さに、そのカップルはもちろん、その場にいた私たちも意気消沈し、悲しみや怒りのようなものがこみ上げてきました」

もったいないと感じることも

この話を聞いていて、自分も似たような経験があることを思い出した。

お料理の持ち帰りに関して、日本では衛生上の問題で断られることが多い。なので、そもそも「持ち帰りたい」とお店に頼むこともめったにないが、ときどき、あまりにたくさん余ったとき「もったいない……」と感じることもある。

高級なお店の特別なホールケーキだったら、諦めきれない気持ちもわかるし、お店を出たあと「あのケーキはどうなるんだろう……」と思ってしまうかもしれない。

空港の寿司店でも

インバウンドが盛り上がった2017~2019年頃にも、融通の利かない日本人について、不満を言う中国人の声を聞いたことがあった。

「中国への帰国直前、日本のある都市の空港で、最後に握り寿司を食べたいと思いましたが、私はタコが食べられないので、別のネタに交換してほしいと頼みました。ところが、Aセット、Bセットなど、あらかじめ決まっているセット内容は変えられないと断られました。

ささいなことですが、なぜできないのか、疑問に思いました。自分のお店ではなくアルバイトだから勝手に判断できないのかもしれませんが、マニュアルをひたすら守ろうとする日本人の姿勢を不思議に思いました。

結局、私はそのお店で握り寿司を注文しませんでした。

真面目で、決められたルールをきちんと守ろうとするのは日本人のよいところだと思います。でも、外国からやってくる観光客にとって、そこに行くのはたった一度きりのチャンスかもしれません。ですので、ちょっと残念に思います」

この中国人はこのように語っていた。しかし、これは中国人に限った話ではなく、他の訪日外国人も感じていることかもしれない。

食品の場合、何か起きたときの責任問題にもつながるし、ケース・バイ・ケースで、一概に言えない難しい問題ではあるが、こうした意見があることも確かだ。

参考記事:

来日した中国人富裕層が、関東近郊の「あるホテル」にガッカリした驚きの理由

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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