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朝ドラ? SPEC? 『未解決の女』の未解決な疑問をプロデューサーに聞いた。

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
『未解決の女 警視庁文書捜査官』写真提供 テレビ朝日

気になる点が3つある

『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系 木曜よる9時〜)は、テレビドラマのテッパン“刑事もの”のうえ、『相棒』に代表される“バディもの”の女性版として注目されている。

体育会系の矢代朋(波瑠)と頭脳明晰な鳴海理沙(鈴木京香)のコンビは、未解決事件の文書捜査(文書解読係)を扱う〈特命捜査対策室6係〉に所属し、文字や文書から事件を解き明かしていく。

極めて特殊な案件を、対称的な女性バディ(原作では男女のコンビだったがドラマでは女性ふたりに変わっている)が風変わりなコンビネーションで解決するという以外は、ヒューマニズムにあふれたオーソドックスな事件ものだから視聴率も安定している。

ただ、ところどころに気になる点が。

大きいもので、3つある。

「朝ドラ」と「SPEC」と「未解決事件」だ。

「朝ドラ」と「SPEC」は他局ものなので、こう書いてしまうと身も蓋もないのだが、初回では、この2点がSNSで話題になった。

プロデューサーは『トットちゃん!』担当者だった

『未解決の女』 山内圭哉と工藤阿須加
『未解決の女』 山内圭哉と工藤阿須加

まず「朝ドラ」。

脚本が大森美香、主演が波瑠、脇に山内圭哉と工藤阿須加と朝ドラ『あさが来た』(16年)のスタッフ、キャストが集結していることと、さらに遠藤憲一、沢村一樹とが、直近の朝ドラ『わろてんか』(17年後期)『ひよっこ』(17年前期)のヒロインのお父さん役であること、鈴木京香も『わろてんか』に出ていたことと、なじみの顔が勢揃いした。

「SPEC」は、第一話の冒頭、初登場の波瑠がギプスをはめていること。そして、特命捜査対策室6係が警視庁の地下深くの倉庫のようなところにあること。これが『SPEC』の設定に似ている。

換骨奪胎はものづくりにはよくあることでもあるし、こういう遊びを勝手に外側から推察することにも限界があるので、思いきって担当プロデューサーの服部宣之さんに聞いてみた。

服部さんは、東海テレビの昼ドラを多数、テレ朝の昼の帯ドラ『やすらぎの郷』『トットちゃん!』を手掛けた方、朝ドラに詳しいので、もしや……ということもある。

ただ『SPEC』に関しての接点は不明だ。

「鈴木京香さんは横地郁英ゼネラルプロデューサーが、前からキャスティングに動いていて、時期的にも『わろてんか』を見てから動いた訳ではないはず…(笑)。僕は『あさが来た』が大好きでしたが、山内圭哉さんと工藤阿須加さんの起用は偶然で、僕も嬉しかったです。ただ、もしも(僕が)キャスティングでAかBかと迷ったら、朝ドラで(僕の)印象に残っていた俳優さんを選ぶことは否めません(笑)」

朝ドラは半年スパンで制作され、登場人物も多いから、世の中に朝ドラ経験のある俳優はたくさんいるわけで、数あるドラマのどれかに必ず出演しても珍しいことではないが、脚本、主演、その他の出演者とこれだけ集まると話題にはなる。

「少なくとも、いまのテレビ朝日とNHKの朝ドラの視聴ターゲットは近いところがあって、他局よりもテレビ朝日だからこそ、そういったキャスティングがしっくり来るのかなとも思います。年齢だけでなく嗜好性も。波瑠さんは年齢的には、木曜9時の事件ものの主演としてはお若いほうだと思いますが、清潔感をはじめとした好感度が高く、お芝居も的確で、本当によく演じて下さっています。それはきっと、朝ドラで築かれたものなのかな……と思っています」

服部さんは、昼ドラ、昼の帯ドラを担当しているだけあって、「“帯ドラ”キャスティングには自信がある(笑)」とのこと。『未解決の女』にも今後、朝ドラでおなじみの人が出演するかもしれない。

朋のギプスの秘密はいずれ語られる

未解決の女 写真提供 テレビ朝日
未解決の女 写真提供 テレビ朝日

さて、もうひとつの『SPEC』に関して。

「プロデューサーとしては意識していなくて、オンエア中にSNSで『SPEC』のようだとつぶやかされているのを見て、そうだったのか…と知ったくらいなんですよ(笑)。朝ドラ以外には疎くて…。あの地下深く降りて行く感じは、台本に書かれている以上に演出の力で印象的になっていました。じつは、朋がなぜギプスをしていたのか、そのバックボーンが1話でもう少し詳しく説明されるはずでした(何かの事情で傷つき休んでいたらしいことは語られている)。謎のまま残したことで、視聴者の方の想像がいっそう膨らんでいったのでしょう。彼女の過去に何があったのか……はドラマの中盤で語られます」

過去『SPEC』(2010年)で、テレ朝の『トリック』『相棒』『時効警察』の出演者や部署のパロディがあったので、そのアンサーが8年越しにされたというところであろう。

なぜ未解決事件なのか

最後に「未解決事件」。毎クール、どこの局でも“事件もの”がかぶっているうえ、今期は『シグナル 長期未解決事件捜査班』(カンテレ)も、過去と現在を行き来して未解決事件を解決するドラマである。それについて、服部さんはこう言う。

「時効が撤廃されて、現実社会でも、テクノロジーが進化したり、過去には分からなかった事実が究明できるようになったりして、未解決事件が時を経て解決されたり、クローズアップされたりしているので、作り手としても着想が得やすいのだと思います。ただ、(今回のドラマは)1話のなかで過去と現在の事件を2本並行して走らせないとならないので、脚本づくりはなかなか大変です」

『相棒』と並ぶ、女性版バディものとして、受け入れて頂き、羽ばたいていきたいと語る服部さん。

「文書や文字、言葉から事件を解き明かす原作のキャラクターは、過去の未解決事件と親和性が高いな…と今さらながらに思います。個人的には、毎週、文字がらみの事件が起きるのは不自然かも…と思いますが、膨大にある過去の未解決事件なら、文字から解き明かす必然性がありますから」

ということは、エピソードはいくらでもできそうだ。

1話の中山美穂、3話の吉田栄作など、毎回のゲストも楽しみ。

5話は、宮迫博之と植草克秀がゲスト。

6話は・・・。

いつか、朝ドラヒロイン犯人シリーズなどをやってほしい。

『未解決の女』 写真提供 テレビ朝日
『未解決の女』 写真提供 テレビ朝日

profile

Nobuyuki Hattorri

1976 年5月11日生まれ。2000 年東海テレビ入社。『牡丹と薔薇』『偽りの花園』『インディゴの夜』『さくら心中』『赤い糸の女』『ほっとけない魔女たち』など多くの昼ドラに携わる。テレビ朝日入社後は、ドラマ『遺産争族』、昼の帯ドラマ劇場『やすらぎの郷』『トットちゃん』などを担当。

※好きな朝ドラは『ふたりっ子』『ひまわり』『ちりとてちん』『カーネーション』『あさが来た』『ひよっこ』など。

『未解決の女 警視庁文書捜査官』 テレビ朝日系 木曜よる9時〜 

原作 麻見和史 角川文庫

脚本 大森美香

出演 波瑠 沢村一樹 工藤阿須加 山内圭哉 高田純次 光石研 遠藤憲一  鈴木京香 ほか

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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