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永瀬拓矢九段、菅井竜也八段との相穴熊の熱戦を制す 王将リーグ開幕戦

松本博文将棋ライター

 9月24日。東京・将棋会館においてALSOK杯第74期王将戦・挑戦者決定リーグ戦1回戦▲永瀬拓矢九段(32歳)-△菅井竜也八段(32歳)戦がおこなわれました。


 10時に始まった対局は19時22分に終局。結果は147手で永瀬九段の勝ちとなりました。

両者、いつもながらの熱戦

 前期リーグで最後まで挑戦権を争った両者。今期は開幕戦での対戦となりました。

 リーグはあらかじめ抽選により、全局先後が決まっています。本局、後手の菅井八段は角交換からダイレクト向かい飛車を選びました。互いに攻めの銀が中段でけん制し合う形となり、戦いは起こらず、互いに穴熊に囲い合う進行となりました。

 午後の戦いに入った直後の42手目。菅井八段は自陣中段に角を打ち据え、攻めの態勢を作ります。そして52手目。角を銀で取られるところに出て、攻めをつなげようとしました。対して永瀬九段はその角を取らず、互いに相手陣に馬を作り、駒を取り合う展開に。形勢ほぼ互角のまま中盤戦が続いていきました。

 78手目。菅井八段は飛車を銀と刺し違え、永瀬陣に迫ります。対して永瀬九段は83手目、手にした飛車を自陣の飛車に並べる形で打ちつけ、容易に崩れない姿勢を見せます。

 84手目。菅井八段は永瀬陣に歩を打ちます。しかし結果的にはこの歩の打ち捨ては必要ではなく、あとで歩の1枚の有無が大きく響くことになります。

 手を休めず攻め続ける菅井八段に対して、永瀬九段は自陣に龍と馬を引き付け、受け続け、両者の棋風がよく現れた終盤戦となりました。

 116手目。歩切れの菅井八段は、相手の守りの要の馬の頭に、タダで銀を叩きつけます。菅井八段らしい、見たことのないようなハードパンチ。しかし永瀬九段は着実に受け続け、ついにはっきりと優位に立ちました。

 菅井八段も手段を尽くして迫り続けるものの、永瀬九段得意の受けつぶしの展開に。最後は菅井八段が攻防ともに手段が尽き、147手で終局となりました。

 永瀬九段は幸先のよいスタート。前期挑戦者の菅井八段はここから巻き返しなるでしょうか。

 両者の通算対戦成績は永瀬11勝、菅井7勝。直近では永瀬九段の3連勝となりました。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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