早わかり「婚姻届」を届出ると何が起きるのか
婚姻(結婚)の意義は、「一組の男女の継続的な共同生活を目的とした法的結合関係」とされています。そのため、事実上夫婦として生活していても、婚姻の届出をしなければ法律上の夫婦とはみなされません(民法739条1項)。
民法739条(婚姻の届出)
1.婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
そして、婚姻の届出をして婚姻することを「法律婚」といいます。憲法24条には、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」とうたっていますが、この「両性」の解釈をめぐって議論が活発になっています。
「婚姻届」を届出ると起きること
婚姻届を役所に届け出て受理されると、主に次のような法的効果が発生します。
1.夫婦同氏
婚姻の際に定めた、夫または妻の氏を名乗ることになります(民法750条)。
民法750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
この夫婦同氏をめぐっては、ご存知のように選択的夫婦別姓制度の議論の対象となっていま
す。
2.同居、協力、扶助の義務
夫婦は同居し、協力し合って扶助(助け合う)する義務があります(民法752条)。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
3.姻族関係の発生
血のつながりのある血族と同様の親等で、婚姻した配偶者の血族と親族関係ができます(民法725条)。
民法725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
なお、姻族関係は他方の配偶者が死亡しても当然には消滅しません。生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をする、すなわち戸籍係へ姻族関係終了の届出(俗にいう「死後離婚」)をすることによって終了します(民法728条2項)。
民法728条(離婚等による姻族関係の終了)
1.姻族関係は、離婚によって終了する。
2.夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
4.相続権の発生
配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
民法890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
5.成年擬制
未成年者が婚姻をすると、そのときから成人とみなされます(民法753条)。
民法753条(婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
なお、成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」が来年2022年4月1日から施行されます。
これにより、2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになります。 2004年4月2日生まれ以降の方は、18歳の誕生日に成年に達することになります。
以上ご覧いただいたように、婚姻届を届け出ることによって、様々な権利や義務が発生します。そういったことも理解して婚姻届を届けることが、夫婦円満の秘訣のひとつになるかもしれませんね。