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ニッサンGT-RがGT500で1年4ヶ月ぶりに優勝!大改革のシーズンで新顔コンビが結果を残した。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
今季初優勝したGT-R 3号車【写真提供:GTA】

「魔物」が棲んでいる、と形容されるほどに波乱のレースが起こりやすいスポーツランド菅生(宮城県)。菅生で開催された「SUPER GT」第7戦はまたもや波乱の展開に。レース直前に雨が降り出し、チームによってタイヤ選択が分かれ、その後は完全なレインコンディションに。難しいレース展開となったGT500クラスを制したのは今季ずっと未勝利だったニッサンGT-Rだった。

3連休で賑わいを見せたスポーツランド菅生【写真提供:GTA】
3連休で賑わいを見せたスポーツランド菅生【写真提供:GTA】

雨の中の激走で3号車が見事優勝

今季のシーズン開幕前は好調が伝えられながら、ここまで6戦を終えてGT500クラスで一度も勝つことができなかったニッサンGT-R。菅生でようやく勝利のチャンスが巡ってきた。

とはいえ、9月21日(土)に行われた公式予選は菅生を得意とするホンダNSX、安定したレクサスLC500に完全に負けてしまい、決勝を前にしてニッサン勢はすでに諦めムード。最上位は「#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R」(平手晃平/フレデリック・マコヴィッキィ)の7位。チャンピオン争いに唯一残っている「#23 MOTUL AUTECH GT-R」(ロニー・クインタレッリ/松田次生)は他車にラインを阻まれ、不運の10位となった。

もう、なるようにしかならない。まさに菅生の魔物を味方につけるしかない状況。レクサスLC500の「#6 WAKO’S 4CR LC500」(大嶋和也/山下健太)が2勝をマークし、圧倒的なポイントリードを築いている状況下では、ニッサン勢としてはここで何としてでも1勝し、チャンピオン争いの可能性を最終戦まで残すことが至上命題だったのだ。

CRAFTSPORTS MOTUL GT-R
CRAFTSPORTS MOTUL GT-R

そんな中でニッサン勢に舞い降りた恵の雨という訳ではなかったが、レースでは「#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R」の平手晃平が序盤から3位にジャンプアップ。引き継いだフレデリック・マコヴィッキィはピットアウト直後からペースを上げられなかったものの、セーフティカーの導入でGT500クラスのトップグループの差は帳消しに。そして、雨量がさらに増えたところでマコヴィッキィはトップに立ち、その後は他車を1秒、2秒上回るペースで走行。そして2位以下に20秒近い差をつけて見事優勝を果たした。

大改革は一つの結果に繋がった

レクサス時代に菅生で2勝をマークし、菅生を最もよく知るドライバーの一人である平手晃平。3号車が履くミシュランタイヤを最もよく知るフランス人、フレデリック・マコヴィッキィ。共に今季からニッサンに移籍してきたドライバーである。

GT-R今季初優勝となった#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの田中利和監督、フレデリック・マコヴィッキィ、平手晃平【写真提供:GTA】
GT-R今季初優勝となった#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの田中利和監督、フレデリック・マコヴィッキィ、平手晃平【写真提供:GTA】

今季、ニッサンは大きなドライバーラインナップの変更を行った。ワークスチームとなるニスモが走らせる「#23 MOTUL AUTECH GT-R」こそラインナップに変更はなかったものの、昨年末にドライバーオーディションを実施して平手晃平フレデリック・マコヴィッキィジェームス・ロシターを獲得。ニッサンはこれまで長年仕事を共にしてきたドライバーを大事にする傾向があったが、聖域にもメスを入れ、50%のドライバー変更という大改革を行なった。

とはいえ、継続ラインナップの「#23 MOTUL AUTECH GT-R」以外はなかなか結果に結びつかない難しいシーズンをまたもや送ることになる。開幕戦・岡山、第2戦・富士と「#23 MOTUL AUTECH GT-R」が2戦連続のポールポジションを獲得するも優勝ならず。第3戦・鈴鹿では「#23 MOTUL AUTECH GT-R」は痛恨のクラッシュを喫し、シリーズの流れはここで迷走を始める。

今季はレクサスLC500がどのサーキットでも安定した速さを見せており、途中終了となった開幕戦・岡山でホンダNSXが勝った以外は全てレクサスの勝利。トラブルによるリタイア、ノーポイントを最も避けたいシチュエーションだったが、今季のニッサンはとにかく運にも見放されていたと言えるだろう。

そんな中で今回のニッサンの勝利はまさに会心の一撃だった。雨の菅生ではABSやトラクションコントロールなど電子制御の恩恵を受けるGT300クラスのマシンの方がGT500クラスのペースを上回り、GT300がGT500を抜いていく珍しい現象が随所で見られた。逆にドライバーエイドとなるデバイスがないGT500ではプロ中のプロのドライバー達が神経を研ぎ澄ませて走らなければならない状況だった。

優勝した「#3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R」の2人は菅生の前、2戦連続で勝てる可能性の高いレースをノーポイントで終え、まさに背水の陣であった。特にマコヴィッキィに関してはミスも目立ち、期待以上のパフォーマンスが出ていない状況。しかし、今回の雨の激走で全て帳消しになったと言える。移籍組のプレッシャーという心理的にもタフな状況に追い込まれた2人が見せた最高の走りはニッサン勢の士気を高めることになるだろう。

最終戦は王者争いに首の皮一枚

「SUPER GT」の2019年シーズンはいよいよ残すところ最終戦・ツインリンクもてぎを残すだけとなった。ランキング首位は今季2勝の「#6 WAKO’S 4CR LC500」(大嶋和也/山下健太)=70点。ランキング2位に「#37 KeePer Tom’s LC500」(平川亮/ニック・キャシディ)=63点が続き、7点差の一騎打ちとなる。

WAKO'S 4CR LC500
WAKO'S 4CR LC500

レクサス同士のチャンピオン争いになるかと思いきや、「#23 MOTUL AUTECH GT-R」(ロニー・クインタレッリ/松田次生)が3位表彰台を菅生で獲得し、ポイント49.5点でトップとは20.5点差。最終戦での最大獲得ポイントは21点であるため、何とかチャンピオン争いには残った。しかし、逆転にはポールポジション獲得、そのまま優勝、なおかつ6号車、37号車がノーポイントという厳しい条件つきだ。

MOTUL AUTECH GT-R【写真提供:GTA】
MOTUL AUTECH GT-R【写真提供:GTA】

ポイント積算によるウェイトハンデがゼロになる最終戦は本当の意味での勝負。どのチーム、ドライバーも全てを出し尽くす激しいレースを展開することになるだろう。。2014年〜16年は圧倒的な強さを見せたニッサンGT-Rだったが、2017年〜19年は厳しい展開のレースが多くなっている。来季はいよいよマシンのレギュレーションが変わり、DTM(ドイツツーリングカー選手権)と共通規定の「クラス1」規定が導入。新時代の到来に向けて勢い付けるかどうか、最終戦はニッサンファンにとっても見逃せないレースになるはずだ。

【関連リンク】

SUPER GT 公式サイト

SUPER GT最終戦・MOTEGI GT250kmレース

※最終戦は11月2日(土)3日(日)に開催

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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