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東芝のこだわり語る冨岡鉄平監督、ジャパンは「本物と偽物…」スーパーラグビーにも言及【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
現役時代の冨岡監督。所属選手で現日本代表の大野均の1学年上。(写真:アフロスポーツ)

この国のラグビー界は転換期を迎えている。

日本代表は9月から4年に1度のラグビーワールドカップ・イングランド大会に臨み、翌年からは南半球最高峰リーグのスーパーラグビーに日本拠点のチームが参戦する。

もっとも、後者に関する準備内容は表面化されているとは言い難い。関係者によれば選手との契約もままならぬようで、一部では参加枠返上の噂も表出している。

8月21日、東京は府中市の東芝グラウンド。日本最高峰ラグビートップリーグの東芝とサントリーが練習試合をおこなっていた。21―19で勝った試合を喜んだのは、東芝の冨岡鉄平監督。昨季、ヘッドコーチに就任した同監督は、2002~06年度にチームの主将を務めて通算7つの国内タイトルを獲得してきた。9月4日よりプレシーズンリーグが始まるトップリーグにあって、6季ぶりの王座奪還を目指す(各国代表組が揃う本格的なリーグ戦は、11月13日に開幕)。

日本代表のキャプテンを務めるリーチ マイケルら、5人のワールドカップ出場選手候補を在籍させている。スーパーラグビーの日本チームにも、選手の供出について水面下でのやりとりを交わしたことがある。

以下、一問一答。

――まずは試合内容。接点(ブレイクダウン)で手ごたえを掴んだのでは。

「うーん。いまのこの時期にしてはしまった試合でした。よくやってくれたと思います。きょう、ブレイクダウンで圧倒したでしょう。ここが今季、トップリーグでナンバーワンになろうとしているポイントでもあるから。これはもう、中居(智昭フォワードコーチ)が一番こだわってやってくれている。彼が持っている知識と経験で…。東芝のブレイクダウンがこうだというものを映像でも示してくれて、理想を明確に示している。いい準備ができているなと思います」

――そのフォワードでは新人が4人。

「もう、あいつらは新人のつもりではないね。公式戦に出るんだという思いを持っている。それにふさわしかったら、僕も、出すしね。非常にいいです。プレシーズンリーグは、縦割りで行こうと思っている。チーム内でのコンペティションを、と。そこで勝ち残った人がトップリーグで出ます」

――新人では、大学選手権6連覇中の帝京大学から来たロック小瀧尚弘選手が出色の働き。ブレイクダウンで激しかった。

「ね。嬉しいよね。山本浩輝(フランカー)もよかったし、知念(雄・プロップ)もよかったし、徳永(祥尭・ナンバーエイト)も…。バックスでは松岡(久善・センター)もです。皆、よかった(いずれも新人)。若い選手が出ないと」

――ジャパン組については。

「あいつらは最後のひと踏ん張りです。全員、行って欲しいし、そうなると信じている。あいつらが日本のために身体を張っていけるように残って欲しい…。ただそれだけ」

――第3フッカーの位置づけだった湯原裕希選手が、ここに来てスクラムで存在感。

「ね。頑張ってるから。きょう(スクラムで優位だったサントリー戦)も観てわかるでしょう。セットプレーが安定しないとラグビーは勝てないから。その部分ではあいつがナンバーワンだから」

――本番直前。指揮官はどんなマインドが必要でしょうか。

「新しいことはやらないですよ。そうすると選手が動揺するから。いままでやってきた、勝ち得てきたスキルと知識を使って選手の気持ちをひとつに凝縮する。あとは対戦相手の分析をきちっとして、『自分たちの武器をこのように使えば勝てるんだ』を選手に伝える。そこはエディー(ジョーンズヘッドコーチ)の長けているところだと思うんです。絶対、強くなる」

――8月21日時点では対外試合で4連敗中。ただ、いまボスが観ているのは結果よりも中身のような。

「いまは最後の最後で、エディーがブラッシュアップをしていると思うんです。ブレイクダウン、スクラム、キック…と細切れに観ていると思うんですよね。逆に、勝つために作るゲームプランは細かく整備していなかった。それは、これからじゃないですか。観てみたいね。勝つ試合を」

――土壇場で底力を出す選手は、何人かいます。

「そこはね、出てくると思うよ。本物と偽物が」

――東芝のフォワードをもう何人か連れて行って欲しいとは思いませんか。

「いい選手はいるからね。でも、そこは選ぶ人の趣味趣向があっていいと思うんですよ。そこに、誰が観ても選ばれる選手になればいいんでしょうから」

――スーパーラグビーの日本チームについて。

「開かれるのであれば悪い話じゃないので、頑張ってほしい。ただ、運営についてのハードを協会、企業、関わっている人間が整えてあげないと。そうでないと、選手が翻弄されていますよ。ウチはウチのルール上で協力するけど…」

――ルール。選手を出す人数の上限ですか。

「それもそうだし、拘束時間や条件など、色々ね。それ以上は難しいということも、協会には伝えてあります」

―― 一部では、チーム発足そのものがなくなるという噂もありますが。

「(去り際に)なくなるということは、ないと思います。ただ、相当なパワーゲームになると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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