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一人暮らしの若者の食事構成の変化を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ オシャレなレストランでの食事。一人暮らしには無縁…かな?

単身若年層の外食は男性では減少、女性は横ばい

家庭持ちの世帯と比べて自ら調理した料理、つまり自炊による食事が少ないとのイメージが大きい若年層の一人暮らしの実情は、どのような状況なのだろうか。総務省統計局が2015年9月に発表した「2014年全国消費実態調査」の内容を元に、金額面から確認をしていく。

今回精査を行うデータは、一人暮らしの勤労者世帯のうち30歳未満が対象。その世帯を対象に、一か月の食料費項目の詳細を確認したものである。「外食」、「調理済みの食料(中食)」、そして「素材となる食料」「その他(調味料やお菓子、飲料、酒類など)」をまとめて「その他(素材食料)(≒内食)」と、合わせて三つに区分し、男女別に食料費全体に占める比率の変化をグラフ化したものが次の図。

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(男性)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(男性)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(女性)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(女性)

男性の外食比率が女性と比べて一様に高い。これは女性と比べて男性の昼食時における弁当持参比率が低いこと、仕事から帰宅した時の夕食の自炊率は男性の方が低いのが大きな要因。また同じ勤労状態にあるとしても、女性より男性の方が「付き合いの飲食」=外食の回数が多くなってしまうのも原因である。

中食比率は男女であまり違いが無い。男性で外食が女性と比べて多い分、そのまま「その他(≒内食)」が少なくなっている動きも興味深い。

中長期的な動きとしては、男女とも中食比率が増加している。ファストフード、コンビニ、スーパーなど購入経路は多種多様だが、自炊では無く、また外食でも無く、出来あいものを調達して自宅で食べる中食のスタイルが定着しつつあることがうかがえる。環境が整備されているのも大きな支えとなっているのだろう。

また男性では中食・自炊が増え外食が減る傾向が強まっているが、女性は中食の増加分が外食と自炊で少しずつ食われていく形となっている。若年勤労単身世帯における、食生活の変容ぶりが、男女間で異なる様相にあるのは、注目に値する。

金額ベースで確認

上記のグラフは「食料費」に占める外食などのシェア動向。それでは額面そのもので見た場合はどうなるのだろうか。男女、そして年ごとに食料費は異なるので、それぞれの金額を算出。そして積み上げグラフにしたのが次の図。この20年間、消費者物価指数にはほとんど動きがないので、経年による物価の変移は無視して問題ない。

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(金額、男性)(円)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(金額、男性)(円)
 ↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(金額、女性)(円)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成の推移(金額、女性)(円)

男女で総額が大きく異なるのが最初に目に留まる。そして女性の総額にはほとんど変化がないものの、男性は年と共に減少傾向にある(もっとも女性も今世紀に入ると減少に転じているが)。それぞれを詳しく見ると、大よそ次の通りにまとめられる。

・「中食」は男女とも漸増。

・「内食など」はぶれが多少大きいが、一定額内に収まっている。

・「外食」は女性では数千円の幅で動きを見せているが大きな変化は無かったが、今世紀に入ると減少方向に。男性は前世紀から漸減を継続中。1984年と比べ、直近の2014年では半分以下に減っている。

・男性は中食、自炊などが横ばいあるいは漸増しているが、外食の大規模な減少がそのまま食費全体の減少につながっている。

動きとしては一番目立つ、男性における外食費の減少にはいくつかの理由が考えられる。家賃負担の増加、消費支出(≒可処分所得)の減少に伴い、一番最初に削りやすい外食費を削っている。外食そのものの相場が下がっている。世間一般的に他人との付き合いが疎遠になり、会食的な外食の回数が減った。などなど、複数の理由によるもので「これが理由で他は関係が無い」のような、端的唯一の事由によるものではない。

節約の際には真っ先にターゲットとされることから、「外食費が減少している」事案がクローズアップされている。しかし少なくとも若年単身勤労者においては、外食費の減少は前々から起きている動きに他ならない。昨今の流れはそれが継続しているに過ぎない、と見てよいだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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