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難病に勝つんだ! WBC左腕・大隣憲司の現在地

田尻耕太郎スポーツライター

「プロの意地」土壇場の2ラン

ホークスの1軍は今日から仙台遠征。なので、また雁の巣球場へ。

5月2日は福岡ソフトバンクホークス3軍と社会人の三菱重工広島との交流試合が行われた。試合については以下のとおり。

三菱重工広島 120000000 3

ソフトバンク 000010002 3

【戦評】

最終回にソフトバンクが3番・笹沼の2ランで追いつき引き分けた。序盤は三菱重工広島のペース。ソフトバンク先発の吉本が、走者を三塁においた場面での2度の暴投(いずれもフォークが抜けてノーバウンドでバックネットへ…)などで3点をリードする。先発の白濱は4回2死までソフトバンク打線をパーフェクトに抑える好投を見せた。

一方のソフトバンク。5回に中原が特大のソロを放って反撃。9回の一発で何とか追いつきプロの意地を見せた。投手ではリリーフ陣が好投。先日までリハビリ組だった2年目左腕の伊藤祐が1回打者3人をきっちり抑える投球を見せたのは好材料だ。

「元気です、って書いておいてくださいよ(笑)」

ところで、この日のお目当てはじつは試合ではなく、復活を期するあの左腕の近況だった。「元気です、って書いておいてくださいよ」と笑顔を見せたのは、大隣憲司である。昨年の春先には侍ジャパンの一員としてWBCに出場し、日本代表で先発もした左腕。しかし、シーズン開幕後に体に異変が襲った。「左足の感覚がなかった。温かいとか冷たいとか、それを感じることが出来なくなっていました」。6月、国指定の難病「黄色靭帯骨化症」にかかっていることが公表され、その後手術に踏み切った。

昨年秋には実戦復帰を果たし、今春のキャンプでも精力的に投げ込んでいたが、現在はまだ3軍で調整中である。ホークス球団公式サイトの3軍成績によれば、7試合に登板して2勝1敗、防御率1.17(5月2日現在)。4月6日の四国リーグ・愛媛戦では6回1失点。4月15日の四国リーグ・高知戦では7回3安打無失点に抑え、無四球と内容も良かった。先発として長いイニングもしっかり投げることが出来ている。

「投げるたびに状態は上がってきていますよ」

また、ホークス3軍の四国遠征はバス移動である。片道で7~8時間は当たり前。帰りは、デーゲームを終えてからそのまま福岡に向かう。到着が深夜、もしくは明け方になることもある。

「僕はそういうことを全然苦にしない方ですから。さすがに前回、帰ってから次に日は一日中寝ていましたけど、つらいなんて思ったことはないですよ。楽しんでます(笑)」

この難病にかかったプロ野球選手は過去にもいるが、完全に復活を果たした選手はいない。だが、大隣は全く悲観していない。3軍にいる以上1軍昇格はまだ先の話になりそうだ。だが、現実的に考えて、先発の頭数を必要としない交流戦での昇格はないだろう。夏以降の勝負どころでのキーマンへ、大隣は前だけを見据えて、一歩ずつ前に進んでいる。

大隣の次回登板は、5月6日の四国リーグ・高知戦(高知東部)での先発が予定されている。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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