Yahoo!ニュース

コミッショナーが痛烈ダメ出し!新球場建設か?本拠地移転か?待ったなしの状態に追い込まれたオークランド

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
30チームで唯一平均観客動員数が1万人を割るオークランド・コロシアム(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【コミッショナーがアスレチックス本拠地球場を痛烈批判】

 いよいよオークランドの新球場建設問題が、待ったなしの状態に追い込まれた。

 オールスター戦開催中に毎年実施される全米野球記者協会主催のコミッショナー定例会見で、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは新球場建設問題を抱えるアスレチックスとレイズについて言及した。

 その中で同コミッショナーは、現在アスレチックスが使用しているオークランド・コロシアムについて、以下のような厳しい発言をしている。

 「最近自分もコロシアムを訪れたが、施設の状態は我々にとってかなり深刻な問題になっている。これは以前にも話していることなので、改めてニュースになるようなことではないが、現時点でコロシアムは施設として、メジャーリーグの質を維持していない」

 オークランド・コロシアムは、アスレチックスが1968年にカンザスシティから本拠地を移転してからずっと本拠地球場にしてきたが、マンフレッド・コミッショナーは現在のコロシアムが、メジャーリーグの公式戦を実施できる施設ではないと改めて断言したのだ。

【現在は誰もが認めるMLB最悪の球場に】

 コロシアムは1964年に開業したもので、MLBには同施設以前に開業した球場(フェンウェイパーク、リグリーフィールド、ドジャースタジアムの3球場)が存在している。

 だがそれらの球場は何度も大幅な改装工事が実施されている一方で、コロシアムは1995年から2年間NFLのレイダーズを再誘致するための改装工事が実施されただけで、それ以降はまったく手つかずの状態だった。

 マンフレッド・コミッショナーが話しているように、施設としての質はMLB最悪で、随分以前から選手たちからも不満が上がっていた。自分も現場記者時代に何度も利用してきたが、メディアの立場からもコロシアムが間違いなく30球場の中で最も劣悪だった。

 ファンとしてもコロシアムの観戦環境は決して芳しくなく、チームの低迷ぶりも相俟って、7月20日現在で今シーズンの平均観客動員数が8637人と、30チームで唯一1万を割り込んでいる。

 そのためアスレチックスとしてもオークランドと協力しながら新球場建設を模索してきたのだが、ずっと棚上げ状態が続いていた。

【2025年に新球場が開業できなければ本拠地移転が決定的】

 アスレチックスは現在、オークランドと2024年までコロシアムのリース契約を結んでいる。今回マンフレッド・コミッショナーが同施設の劣悪環境について改めて言及したことで、現状のまま契約延長は不可能であることが明確になった。

 その上でマンフレッド・コミッショナーは、以下のような発言もしている。

 「(アスレチック・オーナーの)フィッシャー氏は、アスレチックスをオークランドに残すため市議会が認可しようとしている案に合意したいのか、それとも合意できると考えているのか、決断を下さなければならない。

 もし不可能なら、我々は本拠地移転の申請を取り扱っていくことになるし、オークランドに残れないのであれば、新しい本拠地を決めていくことになる」

 オークランドのリビー・シャーフ市長は、オークランド港内のハワード・ターミナルに新球場を建設する再開発案を推進し、何とか市議会で承認してもらえるよう働きかけている。

 ただオークランドとしては、この再開発案をゆっくり審議する猶予はまったくない。遅くとも2025年春までに新球場を開業させる保証がなければ、マンフレッド・コミッショナーは発言通り、リーグとして本拠地移転を進めていく方針を示しているからだ。

 とりあえずオークランドの市議会の審議結果を待つことになるが、年内にもアスレチックスの本拠地がどこになるのか、はっきりすることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事