9日、阪神競馬場で第83回桜花賞(GI)が行なわれる。出走はフルゲートの18頭。今年は出走ボーダーがとても高く、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)2着のシンリョクカが収得賞金1700万円で賞金順で除外の可能性があったほどだ。出走馬のステップレースの分散の影響もあり、この傾向は今後も続くとみられる。

　さて。JRAが発表した前日オッズでは、その阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を勝ったリバティアイランドが単勝1.7倍と断然の一番人気に推されている。当日11時現在、1.9倍と若干支持が落ちているが、それでも抜けた1番人気であることには変わりない。続く2番人気はライトクオンタムの6.8倍、3番人気はハーパーの11.3倍と2桁台。それほど、リバティアイランドが1頭抜けた存在なのか、といえば、やや疑問が残る。

■2022年阪神ジュべナイルフィリーズ(GI) 優勝馬 リバティアイランド

　確かにリバティアイランドは強い。しかし、2戦目のアルテミスSでは東京の長い直線で差し切れずラヴェルに先着を許しているように世代の中の"飛び抜けた"存在とは言い切れないのも事実。連軸としての信頼に厚いが、アタマではここまで絶対的な信頼がおけるか、というと懐疑心を抱いてしまうのは筆者だけではないだろう。

■2022年アルテミスS(GIII) 優勝馬ラヴェル(2着 リバティアイランド)

　父のドゥラメンテは皐月賞、日本ダービーを制した二冠馬だが、その前にデビュー戦と共同通信杯を２着に負けている。まぁ、あのアーモンドアイも新馬戦では2着に負けているし、クラシックまで勝ち続けなくとも本番で結果を出せばいい、とも言える。しかし、単勝1倍台という絶対人気を考えると、偏りが大きい印象だ。

　とはいえ、リバティアイランドがパドックに現れたら、その高く抜けたキ甲やみなぎるパワーを感じさせるトモの張りに目を奪われるだろう。成長度、完成度は申し分なく、距離適性は同じ舞台の阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を制しているという点でも言わずもがな、なのだ。

　ライトクオンタムはディープインパクトの最終世代の1頭。このシーズンの種付は少なく希少な産駒であり、その娘にディープインパクトの主戦だった武豊騎手が騎乗する。しかも管理するのは弟の武幸四郎調教師、と話題に事欠かない。キャリア2戦だが、新馬戦11頭立て、シンザン記念7頭立てと、他頭数で紛れの多い競馬の経験はない。420キロ台と華奢な牝馬だけに馬群に呑まれる競馬は厳しいと察せられる。そのうえ、軽い走りをする馬なので馬場の回復は必須条件。関西地方は土曜日に時折強い雨に見舞われており、前日の阪神競馬場の芝の馬場状態はやや重だった。とにかく馬場が回復し、パンパンの良馬場になればかなり面白い。

■2023年シンザン記念(GIII) 優勝馬 ライトクオンタム

　逆に馬場が渋り続けるなら、理論上ではモズメイメイのような先行馬の前残りに期待が高まる。モズメイメイは走りが軽いので極端な道悪には疑問が残るが、今年の桜花賞は当日の降雨はないし、そこまで極端な道悪にはならないだろう。阪神のマイル戦はこぶし賞、チューリップ賞と2連勝中なのも頼もしい。

■2023年チューリップ賞(GIII) 優勝馬 モズメイメイ

　3番人気のハーパーは友道厩舎とルメール騎手のタッグ。陣営の一番のターゲットはオークスだろうが、ここでも十分勝負になるだろう。とても根性のある馬だし、馬場も問わない。彼女のようなどんな状況でも果敢に走りぬく"ド根性娘"の敵は成長度。あくまでも桜花賞は通過点に過ぎない。それで結果が出るようなら、今後の信頼はさらに厚くなっていくはずだ。

■2023年クイーン(GIII) 優勝馬 ハーパー