外国人が選んだ日本の温泉・総選挙 ブラタモリはどこに注目していた?(草津・別府・箱根・有馬・熱海)
関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。GW中ということもあり、多くの方が注目した「外国人が選ぶ好きな日本の温泉地総選挙」(テレビ朝日系列、4月29日放映)。
今回は、その上位の温泉の、ブラタモリでの着目点をまとめました。
1位 草津温泉
温泉地総選挙では、草津温泉は湯量と泉質、そして湯畑(写真)を中心とした温泉地の雰囲気を、海外からの人気の理由に挙げていました。
ブラタモリでも湯畑を訪ねましたが、タモリさんはその役割に注目。木製の樋(とい)は実は7列あり、火山性の高温のお湯を冷ますために使われています。
ブラタモリではさらに、湯畑のおおもとにも注目します。湯畑が温泉の蛇口だとすると、その供給元は草津白根山です(現在は立ち入り禁止)。
草津白根山に降った雪や雨は、火山ガスでアツアツの温泉になり、粘土層に守られ、高度が低い湯畑の場所で地上に出てきたのです。
筆者が草津温泉を訪ねて感じるのは、居住地と温泉街が厳密に分けられていること。多くの観光客がバスターミナルから湯畑や温泉街を通り、西の河原という場所に向かいますが、ここまで住宅はほとんどありません。まるで東京ディズニーランドのように、外界と遮断された雰囲気も草津の魅力です。
【ブラタモリ草津温泉 全ロケ地】アツアツの温泉と断然人気の秘密とは? #146(とらべるじゃーな!)
2位 別府温泉
温泉地総選挙では、別府温泉は、地獄めぐり(写真)やたけのこ狩りを合わせた地獄蒸しを、海外からの人気の理由に挙げていました。
ブラタモリでも「地獄」が連なる、別府温泉北側のエリアを訪ねています。千年以上前から、噴気や熱泥、熱湯が噴出する、近寄りがたい土地であったことから、地獄の名がつきました。
別府温泉は複数の温泉の集合体です。ではなぜ、各温泉地は上の地図のような立地となったのでしょうか?
河岸段丘上に温泉地が展開? 扇状地? 単なる偶然?
正解は2つの断層。断層が温泉の出口となり、別府温泉の全ての温泉は断層付近に立地していたのです。(☆印はタモリさんが断層の様子を確認した場所)
なお、2つの断層の直線が交わる点には、別府温泉のおおもとがあり、下の記事で紹介しています。
【ブラタモリ別府温泉 全ロケ地】タモリさんが日本一の温泉が湧く仕組みを探る #62 63(とらべるじゃーな!)
3位 箱根温泉
温泉地総選挙では、箱根温泉は交通の便が良く、温泉付きの部屋が多く、富士山が見られる点を海外人気の理由に挙げていました。
ブラタモリでは、箱根温泉の歴史に注目。
多くの観光客が通る箱根湯本駅周辺の川沿いに広がる箱根湯本温泉は、歴史を辿ると、奈良時代に発見された源泉1つに宿が数軒のみ。立ち寄り湯・和泉の近くに「箱根温泉発祥の地」の石碑があります(箱根湯本駅から徒歩6分)。
ブラタモリは、その石碑にも近い「萬翠楼 福住」(ばんすいろうふくずみ)を訪ねています。国から重要文化財に指定された宿です。
同旅館には、かつては箱根じゅうの旅館にあった「七湯の枝折(しおり)」という巻物が保管されています。湯本のほか、塔ノ沢、堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀、芦ノ湯の7つの温泉を紹介した湯治案内でしたが、江戸で観光ガイドとして流通し、七湯めぐりのイメージから箱根は知名度を得てゆきます。
温泉のデパートのイメージが庶民の心をつかんだのですが、現在の箱根温泉郷(17湯ないしは20湯)もまとめて1つの温泉郷を名乗ることで、各種ランキングでは有利という意見を聞いたこともあります。
さて、箱根七湯を巡るなら、宮ノ下駅がおすすめ。箱根七湯のうちの4つの温泉場(宮ノ下、底倉、木賀、堂ヶ島)があります。タモリさんが訪ねた底倉温泉は、小田原攻めのさい、豊臣秀吉が入浴した由緒もあります。
【ブラタモリ箱根 全ロケ地】タモリさんが箱根温泉の歴史や地形を探る#114,71,72(とらべるじゃーな!)
4位 有馬温泉
温泉地総選挙では、有馬温泉は、金湯と銀湯、特に赤茶色の金湯は、外国人にとって大浴場の恥ずかしさがやわらぐ点が人気の理由に挙がりました。
ブラタモリでは、火山がないのに温泉が湧く仕組みや、金湯・銀湯の色のもととなる地中の成分(鉄分・石灰石層)が紹介されました。
先日のYahoo!ニュースで紹介したばかりのため、詳細は譲ります。
さらばブラタモリ 大坂の陣・激戦地、秀吉が愛好した温泉など「関西地方」のロケ地を振り返る
5位 熱海温泉
外国人が選ぶ温泉地総選挙では、熱海温泉は昭和レトロな町並みや喫茶店、海沿いの花火大会が外国人に人気の理由に挙げられていました。
熱海温泉を余り下調べせずに訪ねると、どこに行って良いか分からず、駅前と海沿いを歩いて、旅館で過ごすとなることがあります。ブラタモリでは、「時代」に区切ることで、熱海の見どころを分かりやすく示しています。
明治時代の熱海に興味があるなら訪ねたいのは旧日向別邸(予約必要)です。明治中期に皇室が御用邸を建てたのがきっかけに、熱海には別荘が立ち並ぶようになりました。
別荘地からの美しい景色は、周辺の高台や伊豆山神社から眺めることができます。
江戸時代の熱海に興味があるなら、訪ねたいのは大湯の周辺(昨年11月16日で閉店)。
泉質に定評のあった大湯は、徳川家康が天下をとる前後に、湯治に来たことが記録に残っています。この一帯を中心に、27軒の湯治宿が立ち並んでいました。
最後に有史以前の熱海は、ホテルニューアカオから見える海食洞や海食崖からうかがい知ることができます。
タモリさんが間近で観察すると溶岩であることが分かりました。なぜ熱海の海岸に溶岩があるのでしょうか?
富士山の噴火でしょうか? あるいは、伊豆半島の火山の噴火?
正解は海底火山の跡です。熱海温泉は、海底火山が熱源となって誕生したのです。
【ブラタモリ熱海 全ロケ地】タモリさんが熱海温泉の地形と歴史を探る#27(とらべるじゃーな!)
総じて外国人は、母国にない景観、母国ではできない体験、大浴場に入らなくても済むという点で温泉地を選んでいるように感じました。一方、ブラタモリは衆知のように地形や歴史に注目しています。
このほかのブラタモリロケ地は、以下の記事から確認できます。
【完全版】ブラタモリ 過去放送のロケ地一覧(とらべるじゃーな!)