クラブ選手権出場を逃がすも、元阪神・野原祐也監督が率いるOBC高島の今後に期待
先日は、元阪神タイガース・穴田真規選手の所属する和歌山箕島球友会が『第42回全日本クラブ野球選手権』の西近畿代表になったことをご紹介しました。2年ぶり7度目の出場です。その記事はこちらから。→<元阪神・穴田真規選手もチームMVPの活躍!クラブ選手権出場を決めた和歌山箕島球友会>
和歌山箕島球友会が出場を決めた翌日、7月2日には京都、滋賀、奈良の1次予選(奈良は都市対抗1次予選を兼ねています)を突破した3チームがリーグ戦で代表を決める『東近畿2次予選』が、滋賀県の甲賀市民スタジアムで行われました。3チームでの争いですが、京都の強豪チーム・ミキハウスベースボールクラブが1次予選にエントリーしなかったこともあり、実質は大和高田クラブとの一騎打ちと言っていいでしょう。
ことしから、元阪神タイガースの野原祐也監督が就任した滋賀のOBC高島は、創部3年目の2008年と翌年の2009年に全日本クラブ野球選手権に出場していて、2009年にはベスト4の成績でした。一方、奈良の大和高田クラブは創部1年目の1997年に全日本クラブ野球選手権初出場、ベスト4の成績を収め、昨年まで本大会出場が15回(うち優勝3度、準優勝6度)。また社会人日本選手権にも2度出て最高がベスト8、2010年には都市対抗出場の経験もあります。
つまり、ここを倒さなければ代表にはなれない、OBC高島にとっての大きな壁というわけです。しかし今季、都市対抗野球の京滋奈1次予選ではその天敵を破り、京滋奈の第1代表として近畿2次予選に初出場しました。→<元阪神・“野原祐也監督”率いるOBC高島が、都市対抗近畿2次予選へ初進出!>
今回も打倒・やまたか!の思いを胸に、滋賀1次予選を勝ち抜いて東近畿予選に臨んだOBC高島。滋賀1次予選の結果は下記の通りです。
《第42回 全日本クラブ野球選手権大会 滋賀1次予選》
1回戦近江八幡野球クラブの棄権により不戦勝
準決勝甲賀アカデミークラブに8対1、8回コールド勝ち
決勝湖南ベースボールクラブに16対1、6回コールド勝ち
【東近畿2次予選】第1試合
では、お待たせしました。7月2日に行われた東近畿2次予選です。まず第1試合・京都代表との戦いは8時45分から2時間弱、7回コールドで完封勝ちしました。私は第2試合からの参戦でしたので、ここは結果と経過のみ書いておきます。
OBC高島-京都城陽ファイヤーバーズ
高島 000 035 0 = 8
京都 000 000 0 = 0
※大会規定により7回コールドゲーム
◆バッテリー
【高島】小田(6回)-濱崎(1回) / 村上
【京都】夏冨(7回) / 吉田晏
◆三塁打 高島:三浦
◆二塁打 高島:中野、森 京都:吉田晏
<試合経過>
4回まで0対0のままだった試合が、5回に動きます。濱西の右前打や森の四球などで1死一、二塁とし、1番・中野がセンターへのタイムリー二塁打で2人を還しました。2死三塁となって3番・三浦は右中間へ三塁打!この回3点を取って先制です。
6回にも白石の四球と今崎の右前打、相手エラーなどで無死満塁の大チャンス。まず8番・村上が中前タイムリーで 2点、続く森は左翼線へのタイムリー二塁打、さらに中野のb右前タイムリーでもう2点!計 5点を追加しています。中野は3打数2安打4打点でした。
投手陣は先発の小田が三者凡退で立ち上がり、2回は先頭に四球を与えるも村上が盗塁阻止し、3人で片付けます。3回、4回は1安打ずつ許しながら無失点。5回は2死から二塁打を浴びましたが0点に抑え、6回は連続三振を含む三者凡退!8対0で迎えた7回裏は濱崎が登板し、内野安打と四球があったものの無失点。7回コールドで試合終了です。
【東近畿2次予選】第2試合
第1試合が終わったのは10時43分、第2試合開始が11時25分。約40分のブランクがあったとはいえ、一番暑い時間帯で30度を超える気温、風も時おり止まるような厳しいコンディションでの連戦となりました。OBC高島の選手たちは水分をしっかり摂っていたと思いますが、相当きつかったのでしょう。足がつってしまう選手が続出しています。
まず4回の攻撃で佐竹選手が、次は6回裏に那珂投手がマウンドで。7回表の濱西選手は打席でカウント1‐1となったところ。8回表、佐竹選手が出塁したときに。ここはさすがに交代です。そして8回裏には、2試合連続フルでマスクをかぶっていた村上選手の足が…。もちろん他の選手も、いっぱいいっぱいだったでしょうね。お疲れ様でした。
大和高田クラブ-OBC高島
高島 000 000 001 = 1
大和 100 002 03X = 6
◆バッテリー
【高島】那珂(5回1/3)-永井(1回2/3)-三宅(0/3回)-坂本(1回) / 村上
【大和】山本(8回)-山田(1回) / 恩庄-杉原(9回表)
◆三塁打 大和:廣井
◆二塁打 大和:金井
<試合経過>
第2試合の相手は大和高田クラブ。先発・那珂は1回、先頭の岩永に初球を右前打され、犠打と四球(暴投)で1死一、三塁として4番・金井に中犠飛を許します。しかし2回、3回を三者凡退に、4回は内野安打2本と味方エラーがあったものの0点に抑え、5回は内野陣の守備にも助けられて三者凡退と踏ん張りました。
ところが6回、先頭に内野安打され、ボークや二ゴロで1死三塁として金井に右越えのタイムリー二塁打。ここで、この回2人目の打者へ1球投げたあと足がつったようだった那珂が降板。代わった永井は続く廣井に右前タイムリーを打たれ、3対0とリードを広げられます。
続投の永井は7回を三者凡退に切って取り、8回の先頭にヒットを許したところで交代。3人目の三宅は3番・内山に見事なバスターを決められ、これが左前打となって一、二塁。続く金井の犠打を捕った三宅の野選で無死満塁となり、廣井に走者一掃の左前タイムリー三塁打(レフトが前へ突っ込むも捕れずボールは後ろへ…)。ここで三宅は降板し、代わった坂本が連続四球を与えて、また無死満塁。しかし連続三振と投ゴロで後続を断ち、コールド負けを阻止しました。
打線は1回に中野が中前打、2回は白石が左前打と先頭を出しながら得点できず。3回は三者凡退で、そのあと4回は佐竹が中前打、5回も今崎の中前打とここも先頭がヒットで出ます。でも4回は送りバント失敗もあってチャンスを広げられません。5回は犠打で進め、村上が左太もも?への死球(投球が当たった瞬間、いやその直前だったかも…村上選手は「よっしゃー!」と叫びました)、2死後に中のが四球を選んで2死満塁とするも無得点。
6回は三者凡退で、7回は村上の死球のみ。8回は1死から佐竹が左翼線へヒットを放ちますが、そのあと連続三振で0点でした。その裏に3点を取られたものの、何とか6点差で9回に。大和高田2人目の山田から5番・白石が中前打、代打・山下は右前打で無死一、三塁として、1死後に村上が右犠飛!1点を返して試合終了です。
大家GMと野原監督の言葉
第3試合は京都城陽ファイアーバーズと大和高田クラブの対戦でしたが、開始直後から真っ黒な雲に覆われ、大粒の雨が降り出したかと思うと一気に土砂降りとなって中断。再開は不可能な状態だったため、2回裏で降雨ノーゲームになりました。翌3日の午後に仕切りなおすことが決まり、代表決定は持ち越し。もし大和高田クラブが負けた場合は1勝1敗で並び、その点差やポイントによりOBC高島が優勝という可能性はあったのですが、それはなかなか難しいことで…。
よって第3試合の結果を待たずに敗戦の弁となってしまいました。
まず、OBC高島の大家友和ゼネラルマネージャー。「常にいいゲームをしたいと思っていて、きょうもいいゲームをしていました。向こうの方が野球が上手だったから負けただけです。一番は選手が一生懸命やっていること。勝てば強くなる。でもうまくいく時、いかない時はありますよ。ただ、応援してくれている人たちに喜んでもらいたいですね」
よく粘った、というのは結果論になってしまうかもしれませんが…と言うと「選手も一生懸命、監督も一生懸命です。結果でどうこう言われるのは僕だけでいい。何かあれば僕にお願いします。一緒に野球を見ましょう、と言いますよ」と大家GM。これで全国大会につながる試合は終わりですが、まだ公式戦も残っていますね。「そう、まだ終わっていない。一生懸命やらないと、野原監督に怒られる」。最後は野原監督の顔を見て少しニヤリ、という感じでした。
野原祐也監督は「4対3で勝つ野球をしなくちゃいけなかったんですよ。序盤からついていきたかったのに、(バントで)送れないとか、ミスで点を取られたりしてしまいましたね。これから詰めてやっていかないと。向こう(大和高田)は、そつがないというか…」と悔しさがにじむ言葉です。それはきっと、この選手たちなら何とかできたはずと思えるからでしょう。
「高島に来てまだ少しですけど、変わってきましたね。みんな」とのこと。監督に就任して、選手と顔を会わせたのが2月。対外試合もできるようになってからは4か月足らずですが、確かな手応えはあると思います。「大きい大会は終わってしまったけど、公式戦はまだ8試合あるので頑張ります!もちろんプロを目指している選手もいますから」と野原監督は前を向きました。
9回まで戦えた天敵にエールを
続いて選手のコメントをご紹介します。といっても、すぐに話をきける状況ではありません。肩を落とす選手、目を赤くした選手…。なので、しばらく時間を置いて2人だけ聞いています。
まず先発の那珂大心投手。1回の先頭打者は飛んだコースがよかったというヒットで、そのあと犠飛での失点に「そういうヒットのランナーを還してしまったのが悔しいです。1回はもったいなかった…」と悔やみます。味方の援護を待ちながら、5回までよく踏ん張ったのですが、6回は内野安打からの二塁打で2点目を失い、ここで途中交代。「足もつっていたので。まあ永井もいたし」。降板後もベンチで、リリーフ陣に大きな声援を送っていました。
そして、キャプテンの佐竹誠人選手です。初回に失点したものの、以降は那珂投手も粘りのピッチングをしてくれたのでは?「そうですね。何とか1点を、5回までに追いつければと思ったんですけど。なかなかつながらなかった。5回までに取れていたら変わっていたでしょう」。最後は坂本投手が満塁としながらも後続を断ったところは「あそこを抑えてくれたから9回があって、1点を取れました。8回コールド負けもあったわけで。8回で終わるのと9回までいくのとは違いますからね。よく抑えてくれた」と振り返っています。
佐竹選手自身は、4回にヒットで一塁を駆け抜けた時に足がつって、そのあと守備でもきつい場面があり、とどめが8回に左翼線へのヒットを打った時。「二塁を狙う様子だけは見せながら…」と苦笑いでしたが、ここはもう無理だったんですね。監督が交代を告げて戻る際も足は引きずる感じで。試合終了で整列してからベンチへ戻る際、立ち止まって体を折り曲げたまま動けなかったくらい悔しかったのでしょう。
「途中で代わってしまったことが悔しいですね。キャプテンとしても、自分が最後までフィールドに立っていないといけないのに…。それに自分が下がってから、また点を取られたので」と言葉を絞り出したあと、こう続けました。「そういう選手がこれからOBCに出てくれば、そういうヤツが1人いればチームはもっと強くなると思います」。どんな意味が含まれていたのかは聞かなかったけれど、佐竹主将の存在は野原監督にとっても、チームにとっても大きいはず。それは間違いありません。
天敵ともいえる大和高田クラブに対して「壁は高いですね。まとまっていて、本当にいいチーム」と佐竹選手。負けた悔しさはあるものの「本大会で優勝してこい!って言いました。1番の岩永は大学の後輩やし、3番の内山も同じ京都。知り合いが多いんで」とエールを送ったそうです。来年はしっかりお返しできるように祈っています!
佐々木監督、来年は見ていてください
大和高田クラブの佐々木恭介監督にも聞いてみました。佐々木監督も阪神OBと言えますね。現役を近鉄で過ごし、その後は近鉄で監督、阪神や西武、中日でコーチ、女子野球チームの監督も務めています。近鉄の監督時代にドラフト会議で福留選手(現・阪神)を引き当てた際の『ヨッシャ―!』は代名詞になりましたね。この日の試合で死球を受け「ヨッシャ―!」と叫んだOBC高島の村上選手は、たぶん知らないでしょうけど。
野原新監督の印象を尋ねると「野原は礼儀正しくて、いつもキッチリ挨拶に来てくれて、両手で握手してくる。だから、あんまり戦いたくないんよ」と笑う佐々木監督。「まだ今のところは自主性に任せて、のびのびやらせている感じかな。でも、のびのびだけでは無理になってくるからね。そのうち変わってくるでしょう。でも去年までに比べて、野球らしい野球になったように思いますよ」
それにしても大和高田さん、さすがですね。あのバスターなんて「ひゃあ!」って声が出ちゃいましたよ。「はは!ひゃ~って思ったやろ?」とニヤリ。「でも、やっとやで。やっとここまで来たんや」。西近畿代表は和歌山箕島球友会だと言うと「箕島には借りがあるからね、返さんと!」と気合の言葉です。
2006年に箕島が初優勝した時、決勝の相手が大和高田クラブだったことでしょうか?そういえば決勝での近畿対決も、その2006年に続いて2012年もあり、この年は滋賀高島ベースボールクラブが優勝(その後、解散した滋賀高島から佐竹選手と余投手がOBC高島へ移籍しています)、箕島が準優勝でした。2013年は東近畿代表のミキハウスREDSをシャットアウトした箕島が2度目の優勝。さてことしは?
なお3日に行われた再試合で京都城陽ファイヤーバーズに2対1で勝ち、大和高田クラブは4年連続16回目の本大会出場を決めました。『第42回全日本クラブ野球選手権』は9月1日から4日まで、メットライフドームで行われます。