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【動画あり】スバル新型フォレスターを試す<前編>

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

先代にはない力強さと落ち着きを感じるデザイン

 2018年6月20日に発表会が開催され、正式に5代目としてデビューを果たしたスバル新型フォレスター。早速試乗の機会が与えられたので動画とともにレポートする。もっとも、発表されたとはいえ実際の発売は2.5Lモデルが7月19日から、そして話題の「e-BOXER」を搭載した「Advance」というグレードに関しては9月となる。こうした事情もあってナンバープレートがまだ交付前となるため、試乗場所はクローズドコースの伊豆サイクルスポーツセンターとなった。

 既に今年のNYショーを皮切りに、様々なショーでその姿を事前に見せてきたフォレスター。それだけに写真も多くウェブ上に広まり、「先代と比べて変わった感じがしない」といった意見も少なくなかった。筆者としても、デザインの変化としてはコンサバティブか、と感じていた。そうした中で今回の試乗会において、太陽の光の下で初めて新型を見ると、その印象は確実に変わった。端的に、新型の方が遥かに洗練されており、クラスが上がった感があり、佇まい全体に落ち着きが漂っている、と感じた。

写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛
写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛

 理由は先代よりもワイドに見えるため。新型は全長や全幅では15~20mm拡大されるが、全高はほぼ同じ。結果全幅と全高の比率でワイドに見え、低く構えて踏ん張った感じが増した。また横から見ると全長が15~20mm、ホイールベースも30mmしか伸びてないが、新型は先代よりも前後方向に伸びやかに見える。これはボディサイドに入るキャラクターラインや、前後ホイールを囲むように張り出したフェンダーなどによる効果。これがよりタフで力強い印象を生み、先代にはない落ち着いた雰囲気を醸し出す要素となっている。

写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛
写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛

 インテリアもやはり同じ印象で、現行型と比べると各部が洗練された上で力強さやSUVらしさが増した。チカラ強い造形の一方、トリムの縁にステッチを与えるなど、ギアとしての使い勝手と上質を融合した。この辺りは動画で確認していただくとして、実際に見るとデザインに関してはむしろ「先代と似ている」という印象はない。というかむしろ、新たなものになりながらも一層飽きのこないデザインへと進化したといえる。

2.0Lボクサー+モーターの「e-BOXER」を試す

写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛
写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛

 そうして最初に試乗したのは、2.0Lのボクサーユニットにマイルドハイブリッドを組み合わせた「e-BOXER」を搭載した、Advanceというグレードだった。2.0Lのボクサーユニットは最高出力145ps、最大トルク19.2kgmを発生する。そしてこのエンジンとトランスミッションの間に、最高出力13.6ps、最大トルク6.6kgmを発生するモーターを組み合わせている。このシステムはXVハイブリッドに搭載されていたものに対して、今回は電池がリチウムイオンとなったほか、出力がわずかに増したのが特徴だ。

 実際の走りは動画を参考にしていただくとして、発進および低速走行ではEVモードで走れる(バッテリー容量との兼ね合いでエンジン走行となることも)。この辺りはイマドキの電化されたパワーユニットを備えるライバルと同じで、純粋な内燃機関搭載モデルよりもスムーズかつ素早い発進が印象的だ。ただし、最近ではモーターもより大きな出力を持つモデルも多いため、e-BOXERの発進はスムーズかつ素早いけれど、力強さに溢れる、という感じではない。また実際にターボ・エンジンの方が、ターボが作動した時の力強さにおいて一枚上手なのは間違いない。e-BOXERのモーターは、特に発進から低速で効果を発揮するからなおさらだ。ただし、e-BOXERの走りはこれまでのターボとも違う“イマドキ”の電動車両を感じさせる部分があるため、新しさという意味では魅力的。特に走行シーンが街中や普段使いを重視する人はe-BOXERが魅力的だろう。

 シャシーに関しては、新たなSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を用いた第3弾として、実に優れた成長を果たしていた。まず基本的な乗り心地の良さが向上し、後席も含めて快適さは一段上になった。またこれまで以上にどっしりと幅広のスタンスで地面に対して踏ん張っている感じがあって、全体的に1クラス上になったようなゆとりを感じるのだ。

 ステアリングのフィールも優れており、センター付近は穏やかなものの、切り込んでいくとしっかりと頼もしい感触が得られる。それだけに流して走っている時は、SUVらしい悠々とした走り味と落ち着きある乗り味があり、休日の遠出などを想定した時に移動の時間を癒しに変えるだけの懐の深さがある。

写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛
写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛

 一方でワインディングを走らせると、想像以上にコーナリングに優れていた。特に伊豆サイクルスポーツセンターは、タイトなカーブが頻出するが、そうしたシーンでハンドル操作に対して、忠実に向きを変える感覚がしっかりある。またこの時のスッキリした感覚は、ひとまわり小さなクルマに乗っているように感じる扱いやすさがあった。

1クラス上を思わせる落ち着いた走り 

 今回試したe-BOXERを搭載したAdvanceは、しっとりとした落ち着きを伴った乗り味走り味が特徴だ。2.5に比べると車重は約90kg重くなるが、この重さがクルマの動きにおける落ち着きを感じさせる要素となる。結果、その走りは動画でも語っているが1クラス上を思わせる感覚が、このe-BOXER搭載車から感じられたのだった。

 今回は伊豆サイクルスポーツセンターというクローズドコースのみでの試乗だったので、その走りの全てを捉えたわけではない。特にこのコースでは動力性能的にも運動性能的にも、ついつい日常を超えた速度域や入力域になる傾向にある。とはいえ、そうした動力性能的にも運動性能的にも高い領域で、新型フォレスターは高いタフネスと走りの良さを見せたことは確かだ。つまり、このコースでこれだけ走れるならば一般的な走行ではさらに良い部分を見つけられるだろうとも思えた。

写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛
写真:SUBARU公式フォト/撮影:小平寛

 またe-BOXERに関しては特に街中でその良さを発揮するだろうから、公道で試すのが楽しみである。今後、公道での試乗会が開催された際には、その印象を踏まえてまたお伝えしようと思う。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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