「カルガモ走行」でETCレーンを突破して料金免れた男 どのような罪になる?
ETC車載器やETCカードを設置していないトラックで東京都などの高速道路を通行し、出口のETCレーンで前方のトラックとの距離を詰め、そのまま通過して料金の支払いを免れたとして、愛知県の陸送会社社長の男らが逮捕された。「カルガモ走行」と呼ばれる手口だ。
詐欺罪が成立しない訳
この会社は、愛知県などのオークション会場で落札された中古トラックを運転し、千葉県などに送り届ける業務を行っていた。請負代金は、高速道路の通行料金などを含めて1台あたり約4万円だった。
社長らは、経費を浮かせるため、高速道路に入る際にETCのついてない入り口で通行券を受け取り、出口のETCレーンで「カルガモ走行」に及んでいた。3年間で850回以上繰り返し、約750万円の支払いを免れていたとのことで、容疑を認めているという。
もっとも、この社長らを刑法の詐欺罪に問うことはできない。ETCレーンは機械が対応する仕組みとなっており、詐欺罪の成立要件である「人をだます」という要素がないからだ。
刑法にはコンピュータシステムに虚偽の情報や不正な指令を与えて誤ったデータを作らせ、財産上の利益を得たといった従来型の詐欺罪では対応できないケースを処罰するため、「電子計算機使用詐欺罪」という犯罪があるものの、この罪に問うこともできない。
他人名義や偽造・変造したETCカードを使っていればこの罪が成立するものの、「カルガモ走行」は単純な手口であり、ETCシステムに対して虚偽の情報などを与えていないからである。
刑事・民事のペナルティは?
したがって、もっぱら金銭的なペナルティが中心となる。すなわち、こうした不正通行は、高速道路の料金徴収や管理などについて定めた「道路整備特別措置法」で禁止されている。刑罰は1回あたり最高で罰金30万円だ。
罰金は併科できるので、例えば100回の不正通行で有罪となり、1回あたり罰金30万円を科されると、総額で3千万円になる。強制執行すべき財産がなければ、「労役場留置」といって、罰金を納付する代わりに刑務所に収容され、強制労働に従事し、罰金分を完納させられる。
さらに、高速道路の運営会社からも、道路整備特別措置法の規定に基づき、不正に免れた料金に加え、その2倍に相当する割増金を徴収されることになる。合計で正規料金の3倍になる計算だ。督促状まで発送されていると、その手数料のほか、免脱額と割増金の合計額の10%程度にあたる延滞金も併せて徴収される。
逮捕容疑は昨年10月と12月の不正通行だが、料金所のカメラ映像などから、具体的に何件の余罪が特定され、立件されるかが重要となるだろう。
高速道路の運営会社は、料金所のカメラを増設し、警察にも積極的に通報しているという。バレないと高をくくっていても、忘れたころに割増金を請求されたり、逮捕されたりすることがあるので、不正通行などやめておくべきだ。(了)