【雇止め】2018年問題に備えよう!
労働界には2つの2018年問題があると言われています。
1つは期間の定めのある労働者の雇止めの問題です。
もう1つが派遣労働者の派遣切り問題です。
今回は、このうち期間の定めのある労働者の雇止め問題を解説します。
今年、2018年は、契約期間に定めがある労働者の大量雇止めが危惧されています。
なぜでしょうか。
それは、2012年に改正された労働契約法までさかのぼります。
ご存じでしょうか?無期転換ルール
2012年に改正された労働契約法では、同じ会社との間の契約期間の通算が5年を超える有期雇用の労働者には、期間の定めのない契約に転換できる権利が与えられました。
この権利は、使用者が「使っちゃダメ」と言っても労働者の一存で使うことができ、ひとたび使えば、次の契約期から無期契約に変更できるというものです。
たとえば、1年間の労働契約を繰り返し更新しているAさんという人がいたとしましょう。
このAさん、B社に勤務しているのですが、2017年4月1日から2018年3月31日までの契約期間を加えると、ちょうどB社との労働契約の通算期間が5年ぴったりになるという人でした。
このAさんが次の契約期間である2018年4月1日から2019年3月31日の労働契約をB社と結ぶと、通算期間が5年を超えることになります。
ですので、契約を更新した瞬間に、Aさんは契約を無期雇用に変える権利をゲットしたことになります。
ただ、この無期雇用に変える権利は、権利ですので、行使しなければ何も変わりません。
そこで、Aさんは、権利を行使します。
すると、その契約期間の次の契約期間から無期の契約に変わるのです。
ややこしいですが、つまり、権利をゲットして行使したときの契約期間である2018年4月1日から2019年3月31日の期間は、まだ期間の定めがある契約なのですが、その次の2019年4月1日からの契約は無期契約となるのです。
これが、無期転換ルールです。
なぜこの法律を導入したのか?
しかし、なんで、こんなややこしい法律を作ったのでしょうか?
当時の説明では、この法律は、普段は期間なんて意識しないで働かせていたのに、人を切るときだけ期間を持ち出して、簡単に人を切るようなやり方が横行しているので、それに対する制度と説明されたり、そもそも期間があることによって、毎回雇用が打ち切られるのではないかという不安の中にいる有期雇用労働者の立場を、ちょっとでもよくしようという目的だと説明されたりしました。
とはいえ、5年を超えなければ権利をゲットできないので、権利獲得まで時間がかかることや、クーリング期間と呼ばれる通算期間をリセット(ゼロに戻す)できる裏技もあるなど、いろいろ問題がある法律として賛否両論ある中で生まれたのでした。
しかし、それでもこの法律によって、企業の側が、積極的に有期雇用の労働者を無期にしていったり、労働組合の交渉によって、5年を待たずに無期に転換させる例なども出ているなど、いい結果をもたらしていることも事実です。
ただ、当時からの最大の懸念は、無期転換権が付与される直前での雇止めを誘発するのではないか?というものでした。
それが2018年問題です。
ついに2018年が来てしまった!
2018年問題は、この法律が2013年4月1日に施行されたことから来る問題です。
通算期間のカウントは、この法律が施行された後に締結されたり、更新されたりした労働契約が対象となります。
つまり、2013年4月1日以降に締結されたり、更新されたりした労働契約が対象です。
4月1日に締結している1年更新の契約の場合は次のとおりとなります。カッコ内は通算契約期間です。
2013年4月1日~2014年3月31日(1年)
2014年4月1日~2015年3月31日(2年)
2015年4月1日~2016年3月31日(3年)
2016年4月1日~2017年3月31日(4年)
2017年4月1日~2018年3月31日(5年)
そうです。
2018年3月31日でちょうど通算契約期間が5年となります。
となると、次の契約更新で、ついに無期転換権がゲットできることになります。
ところが!
です。
これを阻止するために、上記例で言えば、2018年3月31日の契約で雇止めをする悪い使用者が多発すると危惧されているのです。
既に、その危惧は現実化しつつあり、ニュースにもなっています。
また、こういう場合、弱い立場の人が狙われやすいという指摘もあります。
・2018年は派遣や有期契約社員が狙われる?!マタハラ防止施行から1年、動向を専門弁護士に聞いた。
負けないように備えよう!
契約期間の確認と相談先を調べておくこと
2018年問題は、まず自分の契約状況を確認することが大事です。
2013年4月1日以降の自分の契約期間を通算して、5年を超えることになるかどうか、確認してみてください。
そして、次の更新で、通算契約期間が5年を超える場合は、契約更新に臨むにあたり少し警戒しておきましょう。
何かあったときのために相談先をあらかじめ調べておくことが大事です。
期間制限や不更新条項を入れられている場合
また、既に無期転換権を阻止するため、契約の最長を「5年まで」としていたり、「本契約で更新はしない」という文言を契約に潜ませる使用者もいます。
最新の契約書をチェックして、そのような文言が入っていないか確認してください。
そして、もしそういう文言が入っている場合は、その文言を入れた理由を上司や社長などに尋ねてみてください。
その際は、録音することが大事です。録音は密かに行っても問題ありません。
それをもって、弁護士や労働組合、労基署など、労働問題の専門家に相談しましょう。
こうした文言が入っていても、場合によっては雇止めができないことありますので、諦めないことが大事です。
また、労働組合の運動で、こうした制限を撤廃させたという事例もあります。諦めないことが大事です。
雇止めは簡単に有効にはならないことを知っておくこと
また、いきなり雇止めを予告してきたり、契約の不更新を告げられたりする場合もあります。
ただ、その場合でもそう簡単には雇止めはできないということを知っておいてください。
この制度ができたのとほぼ同時に、労働契約法に、雇止め法理と呼ばれる条文が追加されました。
これは、最高裁の判例を法律にしたものです。
内容は、契約の期間満了により雇止めをする場合でも、労働者が次の契約の更新に期待する合理的な理由がある場合や、既に契約が有期ではなく無期と同視できるような場合(更新の手続きが全然ないような場合など)は、単に期間満了だからという理由で、雇止めはできないというものです。
この場合の雇止めは、客観的で合理的な理由や社会通念上相当である場合でないと、労働契約は継続するとみなされることになります。
このあたりの判断は、難しいところもありますので、専門家に聞くのが無難です。
労働問題を扱う弁護士や労働組合などに相談することをお勧めします。
なお、無期転換権を労働者に与えたくないから雇止めしたという理由は通用しませんので、おそらく使用者は、別の理由で雇止めしてくると思われます。
早い備えで、雇止めに素早く対処しましょう!
<弁護士の相談先の例>
<労働組合>
・大きいところ
・非正規労働者問題に取り組んでいる労組(一例)
など。このほかにも多数あります。