アトピー性皮膚炎の子どもに見られるADHD・自閉症の症状 - 親が知っておくべき皮膚と脳の関係
【子どものアトピー性皮膚炎とADHD・自閉症の意外な関連性】
皆さんは、お子さんのアトピー性皮膚炎とADHD(注意欠如・多動性障害)や自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連があるかもしれないと聞いたら、驚かれるのではないでしょうか?実は、最近の研究でこれらの疾患の間に興味深い関連性が見出されているのです。
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性的な炎症性皮膚疾患で、先進国の子どもたちの約20%が罹患していると言われています。一方、ADHDは注意力の欠如や多動性、衝動性を特徴とする発達障害であり、ASDは社会的コミュニケーションの困難さや限定的・反復的な行動パターンを示す発達障害です。
これらの疾患は一見全く異なるように思えますが、実は共通点があるのです。
【感覚処理の問題:アトピー、ADHD、ASDに共通する特徴】
アトピー性皮膚炎、ADHD、ASDのいずれも、感覚処理の問題を抱えていることが分かっています。感覚処理とは、外部からの刺激を適切に受け取り、整理し、反応する能力のことです。
アトピー性皮膚炎の子どもたちは、健康な子どもたちと比べて感覚に対する反応が過敏であったり、逆に鈍感であったりすることがあります。同様に、ADHDやASDの子どもたちも、音や触覚、光などの感覚刺激に対して特異な反応を示すことがよくあります。
この感覚処理の問題が、アトピー性皮膚炎とADHD・ASDを結びつける重要な鍵になっているのではないかと考えられます。皮膚は最大の感覚器官であり、脳との密接な関係があることを考えると、皮膚の状態が脳の発達に影響を与える可能性は十分に考えられます。
【アトピー性皮膚炎とADHD・ASDの関連性:統計が示す驚きの事実】
研究によると、アトピー性皮膚炎の子どもたちがADHDを発症するリスクは、健康な子どもたちと比べて1.56倍高いことが分かっています。また、ASDについても同様の傾向が見られ、アトピー性皮膚炎の子どもたちのASD発症リスクは2.57倍も高くなっています。
これらの数字は、単なる偶然ではなく、何らかの関連性があることを示唆しています。しかし、この関連性がどのようなメカニズムで生じているのかについては、まだ十分に解明されていません。
【皮膚-脳軸:新たな研究分野の可能性】
アトピー性皮膚炎、ADHD、ASDの有病率が世界的に増加していることから、研究者たちは「皮膚-脳軸」という新しい概念に注目しています。これは、皮膚の状態が脳の発達や機能に影響を与える可能性を示唆するものです。
例えば、アトピー性皮膚炎による慢性的な炎症が、脳の発達に何らかの影響を与えている可能性が考えられます。また、アトピー性皮膚炎特有のかゆみによる睡眠障害が、ADHDやASDの症状を悪化させる要因になっているかもしれません。
しかし、これらの仮説を裏付ける十分な科学的証拠はまだ得られていません。そのため、今後さらなる研究が必要とされています。
アトピー性皮膚炎とADHD・ASDの関連性について理解を深めることは、これらの疾患を持つ子どもたちとその家族にとって非常に重要です。早期発見・早期介入によって、子どもたちの生活の質を大きく改善できる可能性があるからです。
アトピー性皮膚炎、ADHD、ASDの関連性についての研究はまだ始まったばかりです。今後の研究の進展により、これらの疾患のメカニズムがより明らかになり、新たな治療法や予防法が開発されることが期待されます。
参考文献:
1. NguyenNT, et al. Shared symptomatology between atopic dermatitis, ADHD and autism spectrum disorder: a protocol for a systematic scoping review. BMJ Open 2024;14:e081280. doi:10.1136/bmjopen-2023-081280