乾癬患者さん必見!体重管理が症状改善のカギになる理由
【乾癬と肥満:密接な関係性】
乾癬は、赤くなった皮膚に銀白色のフケのような鱗屑が付着する慢性の炎症性皮膚疾患です。一方、肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。近年の研究で、これら2つの状態には密接な関係があることがわかってきました。
乾癬患者さんは、一般の方と比べて肥満になるリスクが約1.5倍高いことが分かっています。また、肥満の人が乾癬を発症するリスクも約2倍高くなります。つまり、乾癬と肥満は互いに影響し合う関係にあるのです。
肥満は乾癬の症状を悪化させる要因となり、治療効果も低下させる可能性があります。特に、おなかまわりの内臓脂肪が増えると、全身の炎症が強くなり、乾癬の症状も悪化しやすくなります。
【アディポカイン:肥満と乾癬をつなぐ重要因子】
肥満と乾癬の関係性を解明する鍵として、「アディポカイン」と呼ばれる物質が注目されています。アディポカインは脂肪細胞から分泌されるホルモンのような物質で、体内の炎症や免疫反応に関与しています。
代表的なアディポカインには、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、ビスファチンなどがあります。肥満になると、これらのアディポカインのバランスが崩れ、炎症を促進する方向に働きます。
例えば、抗炎症作用のあるアディポネクチンは肥満で減少し、逆に炎症を促進するレプチンやレジスチンは増加します。このアンバランスな状態が、乾癬の症状を悪化させる一因となっているのです。
アディポカインの研究は、乾癬治療の新たな可能性を示唆しています。将来的には、アディポカインをターゲットとした治療法が開発される可能性があり、乾癬患者さんの治療選択肢が広がることが期待されます。
【乾癬治療:肥満対策の重要性】
乾癬の治療において、肥満対策は非常に重要です。体重管理は単に見た目の問題だけでなく、乾癬の症状改善にも直結する可能性があります。
実際、体重を5%以上減らすことで、乾癬の症状が改善したという報告もあります。適切な食事療法と運動療法を組み合わせた生活習慣の改善が、乾癬治療の基本となります。
また、乾癬の治療薬の中には、体重に影響を与えるものもあります。例えば、TNF-α阻害薬と呼ばれる生物学的製剤の一部では、体重増加が報告されています。一方、IL-17阻害薬やIL-23阻害薬では、体重への影響は比較的少ないとされています。
乾癬の治療薬を選択する際は、患者さんの体型や体重の変化にも注意を払う必要があります。肥満がある場合は、体重に応じて用量を調整する薬剤を選択したり、体重への影響が少ない薬剤を検討したりすることも大切です。
最近では、糖尿病や肥満の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬が、乾癬の症状改善にも効果がある可能性が報告されています。これらの薬剤は体重減少効果があるため、乾癬と肥満を同時に改善できる可能性があります。
乾癬と肥満の関係性を理解し、適切な治療と生活習慣の改善を行うことで、症状のコントロールがより効果的に行えるようになります。乾癬でお悩みの方は、皮膚科専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。
参考文献:
1. Scala, E.; Mercurio, L.; Albanesi, C.; Madonna, S. The Intersection of the Pathogenic Processes Underlying Psoriasis and the Comorbid Condition of Obesity. Life 2024, 14, 733. https://doi.org/10.3390/life14060733