【アトピー性皮膚炎・乾癬と認知機能の関係】

アトピー性皮膚炎と乾癬は、多くの人々に影響を与える慢性的な皮膚疾患です。これらの疾患は、患者さんの心の健康にも影響を及ぼすことが知られています。最近の研究では、これらの皮膚疾患が認知機能にも影響を与える可能性が示唆されています。

アトピー性皮膚炎は、子どもの15〜30%、大人の2〜10%に影響を与える疾患です。一方、乾癬の有病率は国によって0.09%から11.43%とばらつきがあります。日本での有病率は約0.3%とされており、欧米に比べて低いのが特徴です。

これらの疾患は、皮膚の症状だけでなく、さまざまな合併症のリスクを高めることが分かっています。例えば、アトピー性皮膚炎の患者さんは、喘息や花粉症、食物アレルギーなどの他のアレルギー疾患を発症するリスクが高くなります。乾癬の患者さんは、循環器系の疾患や糖尿病、腎臓病による死亡リスクが高まる可能性があります。

【認知機能低下のリスク - 研究結果から見えてきたこと】

最新の研究によると、アトピー性皮膚炎と乾癬の患者さんは、認知機能の低下リスクが高まる可能性があることが分かってきました。認知機能の低下とは、記憶力の低下や集中力の困難、意思決定の問題などを指します。

ある研究では、アトピー性皮膚炎の患者さんは、健康な人と比べて認知機能の低下リスクが27%高いことが示されました。特に、アトピー性皮膚炎の重症度が高いほど、そのリスクも高まることが分かりました。

乾癬に関する研究でも同様の結果が得られています。乾癬の患者さんは、健康な人と比べて認知機能テストの成績が低く、MRI検査でも脳の変化が観察されました。

これらの研究結果は、慢性的な皮膚疾患が単に皮膚の問題だけでなく、脳の健康にも影響を与える可能性があることを示しています。

【患者さんへのアドバイスと今後の展望】

このような研究結果を踏まえ、アトピー性皮膚炎や乾癬の患者さんは、自身の認知機能にも注意を払うことが大切です。特に、記憶力や集中力に変化を感じた場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。

また、これらの疾患の治療には、皮膚症状の管理だけでなく、ストレス管理や心理的サポートも重要です。認知行動療法などの心理療法が、患者さんの生活の質を向上させる可能性があることも分かってきています。

慢性皮膚疾患と認知機能の関係は、まだ研究段階の分野ですが、今後さらなる研究が進むことで、より効果的な治療法や予防策が見つかる可能性があります。患者さんの皆様には、定期的な受診と自己管理を心がけていただくとともに、最新の研究動向にも注目していただければと思います。

皮膚疾患の治療と管理は、皮膚科医だけでなく、精神科医や神経内科医など、多分野の専門家が協力して行う必要があるかもしれません。このような包括的なアプローチが、患者さんの皮膚の健康だけでなく、全身の健康と生活の質の向上につながることを期待しています。

アトピー性皮膚炎や乾癬でお悩みの方は、まずは皮膚科専門医に相談することをおすすめします。適切な治療と管理により、症状の改善だけでなく、認知機能の維持にもつながる可能性があります。

参考文献：

1. Kuryłło, M.; Mojs, E. Do Atopic Dermatitis and Psoriasis Have an Impact on Cognitive Decline—Latest Research Review. Healthcare 2024, 12, 1170. https://doi.org/10.3390/healthcare12121170