ソシエダに現れたミレニアムベイビー。「至宝」バレネチェアに託された未来。
一人の若武者が、ビッグクラブを喰らった。
リーガエスパニョーラ第37節で、レアル・ソシエダは本拠地アノエタにレアル・マドリーを迎えた。その一戦で、アンデル・バレネチェアが得点を挙げ、ソシエダは3-1で勝利している。
17歳126日での得点。レアル・マドリー相手の得点者として、史上最年少記録だ。
■ミレニアムベイビー
2018-19シーズン、リーガ第17節のアラベス戦で、バレネチェアは初めてトップチームの選手としてピッチに立った。16歳359日でトップデビュー。ペドロ・イラストルサ(1934年に15歳288日でデビュー)に次いで、クラブ史上2番目の記録である。
バレネチェアは2001年12月27日に生まれた。ミレニアムベイビーと呼ばれる世代だ。21世紀生まれの選手として、初めてリーガ1部で試合に出場した選手になったとされている。
当然ながらと言うべきか、ソシエダは今季バレネチェアと2025年まで契約延長を行っている。契約解除金は6000万ユーロ(約74億円)。若きプレーヤーに対しては破格の待遇だった。
今季、9人のカンテラーノがソシエダでトップデビューを飾った。アシエル・ガリターノ前監督の下でデビューしたバレネチェアだが、イマノル・アルグアシル現監督はカンテラーノをより重視している。その追い風を受け、彼は順調に成長した。
また、バレネチェアの家はスポーツ一家である。彼の母親であるアス・ムグルサは、バスケットボールのチームで監督を務める。監督歴25年のベテランだ。現在は、1部リーグ(Liga Dia)に属するIDK Gipuzkoa(IDKギプズコア)で指揮を執っている。そういった環境も、関係しているかもしれない。
「母親からは何も言われていない。周囲の人に言われるのは、道を外れるな、ということ。フットボール以外にも、大事なものはある。そのすべてに意識を向けなければいけないんだ」とは、バレネチェアの弁である。
■狭き門という自覚
先のマドリー戦で、欧州カップ戦出場権に向けて前進する大きな勝ち点3獲得に貢献したバレネチェアだが、試合が終わるといつものように公共のレンタル自転車で帰宅した。17歳。まだ、自動車の免許を取得できないのだ。
今季リーガ序盤戦の10試合で、20歳以下の選手で試合に出たのは9選手のみだ。
ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)、フラン・ベルトラ(セルタ)、ペドロ・ポーロ(ジローナ)、クチョ・エルナンデス(ウエスカ)、ペルー・ノラスコアイン(アスレティック・ビルバオ)、マヌエル・モルラネス(ビジャレアル)、フェラン・トーレス(バレンシア)、ボルハ・ガルセス(アトレティコ・マドリー)、セルヒオ・モレノ(ラージョ・バジェカーノ)が檜舞台に立っている。
バレネチェアの場合、12月にデビューの時を迎えたが、フベニール(ユース)からソシエダC(テルセラ・ディビジョン/実質4部)でプレーした後、ソシエダB(2部B)でプレーすることなくトップで出場機会を得ている。いわば、「飛び級」だった。
「将来をどうするかは、まだ決めていない。試合の方が、試験より緊張するのは間違いないけれどね」
地に足の着いた物言いだ。
プロの世界は狭き門である。バレネチェア自身が、それを強く自覚しているのだろう。しかし、彼に対する期待値は高い。あどけなさの残る彼の笑顔に、レアリスタ(ソシエダファンの愛称)はすっかり虜になっている。