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U19代表で得た自信を糧にワールドカップのロスター入りを目指すジェイコブス晶

青木崇Basketball Writer
シュート力を武器に代表入りを目指すジェイコブス (C)Takashi Aoki

 八村塁のワールドカップ不参加は、NBAの制限付きフリーエージェントだったことなどを考慮すれば、日本バスケットボール協会(JBA)も想定していたはずだ。世界の強豪相手に戦い、パリ五輪の出場権獲得という目標を達成するうえで、八村の不在は日本代表にとって痛手だが、視点を少し変えてみれば、新たなチャンスが生まれたことを意味している。

 合宿で12人のロスター入りをかけた競争が繰り広げられている中で、U19ワールドカップで活躍した19歳のジェイコブス晶にとっては、さらなる飛躍を遂げる機会が巡ってきたと言っていい。その理由は、八村の欠場に加え、207cmで跳躍力がある渡邉飛勇はコンディション不良を理由に合流が遅れているからだ。203cmのジェイコブスはシュート力があり、リバウンドを奪った後に自らボールをプッシュして得点機会をクリエイトできることも強みであり、ホーバスコーチの戦い方にフィットできる。日本代表でも自身の持ち味は変わらないと話す。

「19の時と同じで、オールラウンドなプレー、身長がビッグですけど、外のシュートとか、ボールハンドルからインサイドとかアタックするなど、いろいろできる選手というところです」

 7月13日に練習の一部が公開されたが、経験豊富なメンバーの中でプレーしていても、ジェイコブスは持ち味を十分に発揮していた。戦力となれるか否かを見極めているホーバスコーチだが、選手としての可能性における評価は高い。

「彼は朝早くに体育館に入ってシューティングをやっているし、頭もいいです。すぐにうちのオフェンスをよく覚えている。今日初めて5対5をやってダンクも3Pショットもあったけど、まだまだ勉強中。だから、どこまでいけるか? ディフェンスが足りるかどうか? そこをよく見てます。でもポテンシャルがすごく高いと思います。本当は2番(シューティングガード)と3番(スモールフォワード)ができるかなと思うけど、ディフェンスの部分は2番と3番でついていけるかどうかわからない。今は4番(パワーフォワード)で見ているんです。4番で3Pショットがよく入っているけど、でもディフェンス力があるかどうかわからない。そこを見ています。でも、面白いね。色々できるから」

 A代表としての経験がない以上、ディフェンスとフィジカルの部分で懸念されるのは仕方ない。しかし、U19で世界の高さと長さ、フィジカルの強さを9日間で7試合というタフな日程で体感できたのはプラス材料。U19ワールドカップでは、すでにプロの舞台を経験しているヨーロッパの選手とマッチアップしたことに加え、NCAAディビジョン1の強豪でプレーする選手が多いアメリカ相手に20点を奪っている。

“まだ19歳じゃないか?”

 こう思う人はたくさんいるかもしれない。ただし、実力のレベルが同等ならば、年齢が若いほうの選手にチャンスを与える例は多々ある。中国は世界大会であっても将来性を嘱望されている選手に機会を与えており、1996年のアトランタ五輪に19歳だったワン・ジジ、2000年のシドニー五輪に20歳のヤオ・ミン、2004年のアテネ五輪に19歳のイー・ジャンリャンがメンバー入りしていた。2013年のアジア選手権(現在のアジアカップ)では、当時18歳だった渡邊雄太が日本代表のメンバーに入ったのを覚えているだろうか? 周囲の猛反対を受けながらも、当時代表を率いていた鈴木貴美一コーチは渡邊のスキルセットと将来性を高く評価し、チャンスを与えていたのである。

 ロスター入りに向けた競争している最中なので匿名にさせてもらうが、ある選手は公開練習後に「ジェイコブスは当時の雄太よりも上だと思う」と筆者に話していた。ディフェンスやフィジカルな攻防に対応できるかなど、ジェイコブスがホーバスコーチの信頼を勝ち取ってロスター入りできるかは、今後の合宿や強化試合のパフォーマンス次第。とはいえ、世界の強豪に比べると、200cmを超える選手の数が少ない日本にとって、ジェイコブスのサイズとスキルが大きな魅力なのは間違いない。

「U19で4ポジをやってもずっと身長が低い方でしたし、ワールドカップやオーストラリアのNBAアカデミーでの経験があるので、ビッグについたとしてもミスマッチにはなっていないと思います」と語ったように、ジェイコブスは合宿で練習を重ねるごとに、ワールドカップであっても自分はやれるという手応えを持ち始めている。まずは、7月22日と23日の韓国戦でチャンスを得て、いいパフォーマンスを見せることが重要。その後の強化試合でも戦えることを示すことができれば、ジェイコブスがワールドカップの舞台に立ったとしても決して驚かない。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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