拳四朗が5度目の防衛に成功 KO防衛に向けての課題と期待
年末恒例となったボクシングの世界タイトル戦が、30日に東京都の大田区総合体育館で行われた。5度目の防衛戦に臨んだWBC世界ライトフライ級王者の拳四朗は、挑戦者同級7位のメキシコのサウル・フアレスと対戦した。拳四朗は現在3試合連続KO中で、KO防衛記録の更新にも期待が掛かる一戦となった。
序盤から拳四朗ペースで試合が進む
速い出入りと的確なジャブで拳四朗が序盤からペースを握っていった。フアレスもパンチを振ってくるが、スピードの違いがあり捉えきれない。拳四朗は、ストレート主体のボクサーファイターだ。出入りを活かしながらパンチを当ててもらわない、自分の距離で戦うのが得意だ。
この日も得意な距離感を活かし、ヒットアンドアウェイで相手をコントロールしていた。また、接近戦でのアッパーやボディなど多彩なパンチを披露して相手にダメージを与えていった。時折放ついきなりのノーモーションの右も相手の顔面を捉え、明確なポイントを稼いでいった。
WBCルールでは、4ラウンド、8ラウンドでラウンドの途中に公開採点がある。そこでもほぼフルマークでポイントを稼いで、内容でも圧倒した。あとは、4試合連続のKO勝ちへの期待がかかった。
期待が掛かったKO防衛だが
今回の試合では最後まで相手に粘られ詰めきれず、3-0の判定で退ける結果となった。KOできるチャンスもあったが、追撃できず判定での勝利となった。
ボクシングは必ずしも、パンチ力とKO率は比例しない。物凄くパンチ力があるけど、KO率が低い選手は結構いる。逆にパンチ力は普通でも倒す選手はいる。特にKOは強いパンチで倒れるのではなくて、見えないパンチで倒れる。強くても来るのがわかっていれば対処できる。だからこそ、タイミングがすべてなのである。特に軽量級は、1発のパンチで倒せることは稀なので、いいタイミングで当てた後にいかに追撃できるかがKOに結びつけるポイントだ。
童顔の拳四朗だが、14戦してここまで8つのKO勝ちがある。体重が軽い軽量級では、KO率が高い部類に入るだろう。私は取材で彼のパンチを受けた経験があるが、得意としている右ストレートはパンチも伸びてきて、キレと硬さがある。相手を倒すには十分な力がある。踏み込みを活かし、出入りをすることでパンチにキレを出している。また、接近戦で打つボディ打ちも迫力がある。今回の試合でも、相手に十分なダメージを与えていた。
KOに結びつけるには、パンチが入った後の連打が必要になってくるだろう。相手にいいパンチが入ったタイミングでパンチをまとめられれば、KOに繋がっていく。またKOを焦るばかりに後半動きが雑になり、相手のパンチをいいタイミングでもらう場面もあった。今後は自分の得意なスタイルを活かしながら、KOチャンスをものにしていく仕様にモデルチェンジをしていく必要性がありそうだ。
今後の拳四朗の防衛ロード
5度の防衛に成功した拳四朗は、現役世界王者でトップの防衛回数を誇る。防衛を重ねる度にできることが増えていて、まだまだ伸び代はある。今の勢いで行けば、今後もさらに進化していくだろう。
最近は防衛し続けるという結果と共に、内容も求められてきた。強い選手との試合やKO勝ちも期待されている。ボクシングというとKOが華ではあるが、技術が高い拳四朗のボクシングは観ていて面白い。そこにより一層の磨きをかけていけば、人気もついてくるだろう。
本人はビックマッチを希望しているようだし、統一戦を視野に入れていくのもいいだろう。31日には下から階級を上げた、同級の京口紘人の世界タイトル戦もある。アマ時代からのライバルが勝ち進めば、この階級もさらに盛り上がるだろう。長期防衛ロードも視野に入れて、ますます活躍していってほしい。