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アラタナ約束を果たすその日まで。KAT-TUN LIVE『10Ks!』

杉谷伸子映画ライター

『KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR “10Ks!” 』のファイナルを飾った5月1日の公演をもって、充電期間に入ったKAT-TUN。充電期間前ラストライブとなった同日の東京ドーム公演を取材。公演前には囲み取材も行われた。

充電期間前の最後の航海

選び抜かれた楽曲、練り上げられた構成。そうしたアーティストの魅力とこだわりが最大限に詰まったライブの空気を決めるのは、ステージに立つ彼らの気迫と会場を埋めたファンの熱気だ。デビュー10周年の記念に、ファンへの感謝の気持ち“10Ks!”(テンクス=サンクス)をタイトルに掲げたツアーが熱いものにならないはずがない。それも、この節目の年に、充電期間に入るという驚くべき決断をした彼らとハイフン(KAT-TUNファン)にとっての締めくくりとなる日のライブ。東京ドームを包む空気には、熱いだけではない、特別な何かがあった。

記念すべきデビュー10周年の3月22日に、KAT-TUNはベストアルバム『KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY BEST “10Ks!”』をリリース。その期間限定盤1にはファンの投票で選ばれた楽曲が「Hyphen Selection」として収録されているが、その15曲もすべて披露したライブは、これまでの10年をファンと共に振り返る濃密な時間。

はためくドクロの海賊フラッグが映しだされた正面ステージには巨大な船首のセット。まだデビュー前だったKAT-TUNの名を知らしめたライブDVD『海賊帆』にも収録されている名曲『Gold』で幕を開け、久々にがっつり聴かせてくれたデビュー曲『Real Face』と続く序盤から、まさにKAT-TUNといったワイルドな世界に引き込んでいく。

ファンとともに特別な時間を過ごしたいという思いから、バックダンサーは登場せず、最初から最後までステージ上は亀梨和也上田竜也中丸雄一のKAT-TUN3人だけ。MC中には「まだ3人での立ち位置に慣れないので、センターがずれがち」的なトークで笑いを誘ったり、デビュー前の人気企画TEN-G(KAT-TUNの弟分という設定のグループ)やかつてのツアーで人気を博した吸血鬼と歯医者コント、さらには最近のKAT-TUNライブのお楽しみでもある中丸入魂のコーナー「カトゥネット高丸」といったバラエティに富んだ企画をふんだんに盛り込みながら、ヒット曲の数々をKAT-TUNらしい迫力のステージングで魅せていく。

コミカルな演出で会場を和ませる一方、得意のビートボックスはもちろん、レーザー光線を巧みに操るソロパフォーマンスなど、エンターテイナーとしてのスキルの高さを見せる中丸。伸びやかさの増した歌声で曲を聴かせ、観客を誘うクールな指の動きや、鍛えられた両腕を広げる姿だけでロックな世界観を作りあげる上田の存在感。ウィンクや唇舐めで観客を沸かせる亀梨の色気。「今回は特別なので、ステージのクオリティは求めつつも、まずはそれぞれが好きなことをやろうと」とお遊び要素も多い構成について、囲みで話していた彼らだが、メンバーの個性を生かしながら、ひとつの世界を築きあげ、東京ドームという巨大なライブ空間を自在に操れるのは、ドームライブで育ってきたKAT-TUNの底力。

ハイフンへの感謝と約束

桁外れの量の炎や、水、レーザー光線を駆使した、これぞKAT-TUNというド迫力の特効で魅せる最新シングル『UNLOCK』がもたらすクライマックスの興奮。そして、デビュー曲『Real Face』を手がけたスガシカオが3人のために同曲の歌詞を織り込んで書き下ろした『君のユメボクのユメ』に託されたKAT-TUNだけではなく、ファンのものでもある願いが5万5千人の胸を熱くするなか語られた彼らの想いに、ハイフンの胸にさらに熱いものがこみあげる。

「この10周年という記念にこんなに楽しいライブができるとは、本当に嬉しいです。KAT-TUNという船が動き始めて、デビューしてから10年。楽しいことだけじゃなくて、悲しい思いもさせてしまい、船の進んでいる最中にメンバーが降りてしまったこともあります。それに続いてファンの方も降りて行ってしまったんじゃないかなっていうふうに僕は思っています。でも、それでも10周年という記念の日に、この東京ドームという場所でこれだけのたくさんの方々がKAT-TUNを応援しに来てくれていることが、俺たちKAT-TUNはとても嬉しく思っています」と率直に語る上田は、「できればファンの方々には笑っていて欲しいです。そのためにも自分たちがしっかりと成長し、もっともっと人を魅了できるように、たくさんの人を笑顔にできるようになって必ず戻ってきたいと思います。だから、みなさん、これからも応援宜しくお願いします。そしてまた、大きくなって戻ってきた時にたくさん笑いましょう」と締めくくった。

「充電期間というのを話し合いで決定した時にも、ちょっとどこか納得できない部分が、僕、心の中ではあったんです。時間が経って、情報が頭の中で整理できて、これまでも、どんでもない想像を超えるような出来事が3回あったから、今後の長いKAT-TUNのグループ活動を考えて、そのジャッジはベストとは言えないですけども、あんまり後ろ向きなものではないんだなあと、整理がつきました」という中丸も、「そのあとにね、力をつけた我々が集まって、また何か面白いものが生まれると思っているので。その時に集まってね、みなさん、楽しく盛り上がりましょう」と約束。

「6人から5人へ、5人から4人へ、そして4人から3人へ。その都度都度、みなさんの前に立って、自分たちの思うこと、みなさんに掲げることをお話させてもらってきましたが、何度もそれを僕たちはかなえることができませんでした。それを本当にKAT-TUNというグループの一員として、情けなく悔しく、みなさんに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と振り返った亀梨。「僕たちKAT-TUNは、K=亀梨和也、A=赤西仁、T=田口淳之介、T=田中聖、U=上田竜也、N=中丸雄一。この6人で結成されたグループです。この6人が集まらなければKAT-TUNというグループはもしかしたらなかったかもしれないし、僕自身もKAT-TUNのメンバーとして、今、みなさんとこうして出会うことはなかったかもしれません。なので、ここにいる2人はもちろん、いろいろありましたけど、抜けていった3人にもしっかりこの歩みを感謝したいと思います。ありがとう」と深々と頭を下げると、「ここから先はね、誰もほんとに経験したことのない未知の部分に進んでいくわけで。時に皆さんを不安にさせてしまうことや僕達自身が不安になることもきっとあると思います。でも、これがKAT-TUNを守るために必要な時間だったと絶対に思えるように、僕たちは未来を作り続けていきたいと思います。なので、もっともっとしっかりと力強く繋がって、しっかりとついてきてください」と決意を見せた。

充電発表後も常に笑顔を見せてきた亀梨が、ひと言ひと言噛みしめるように伝えた言葉。メンバーから「リーダー」と呼ばれるようになっても、グループのかたちが変わり続けたことへの無念さをときに滲ませはしても、普段あまり自分の心情を語らない中丸が明かした葛藤。『オールスター感謝祭』(TBS)での激走に限らず、硬質な男気の中にのぞかせていた去りゆくメンバーへの優しさや、KAT-TUNやファンへのまっすぐな覚悟で、いつもハイフンの胸を熱くする上田。想いの出し方は違っても、3人の想いはひとつだということは、涙の止まらない中丸と上田が抱き合い、駆け寄る亀梨と肩を抱き合う姿が物語っていた。

あるべき場所に彼らとともに還るために

「まさか、メンバー3人になっているとは思っていなかったです」と中丸が囲みでデビュー時を振り返ったほど波瀾続きの10年。だが、そのすべてがKAT-TUNをかたちづくってきた大切なものなのだということは、上田のピアノに、中丸のビートボックスと亀梨のボーカルが重なるアンコール曲『PRECIOUS ONE』に象徴されていた。ファンセレクトの1曲でもあるこの曲は、デビューツアーで本編のラストを飾った曲でもある。

「自分がやってきたことのなかで何ができるだろうと考えた時に、とても意味のある曲でピアノを弾かせてもらうことが、自分のやりたいことだなと。デビューした時の最後の歌で、自分たちにとってもファンの方にとっても思い入れの深い曲なので。それを3人だけで、ピアノとボイパとボーカルだけでやるっていうことが、とても何か伝わることがあるんじゃないかなって思って、今回はやらせていただきました」(上田@囲み会見)

シンプルなスタイルが彼らの飾らない想いを伝える『PRECIOUS ONE』が、やがて観客の歌声と溶けあって、さらに大切なものになったアンコール。そして、Wアンコールでは新曲『BRAND NEW STAGE』も披露。

そのWアンコールが終わってもやまないKAT-TUNコールに応えて、姿を見せた3人がトリプルアンコールで『Real Face』を再び歌っても「もう一回!」コールはやまない。アンコールを求め続ける客席に、「俺たちを困らせるんじゃねえよ(笑)」と上田が返したり、KAT-TUNらしいやり取りでハイフンを笑顔にさせた3人がステージ上で肩を寄せ合って相談して選んだのは、「KAT-TUN」のスペルを明るく連呼する歌詞がライブをパーティー気分にしてくれる『Peacefuldays』。メンバーの願いに応えるように、最後は思いっきり笑顔も弾けた。

これだけのことができるのに、充電期間が必要なのか。グループのかたちが変わるたびに、周囲の雑音とは裏腹に気迫のこもった素晴らしいライブを見せてくれた彼らの確固たる力を知るハイフンには、そんな疑問も嘆きもあるのは当然だろう。だが、あくまでも前向きに彼らの決めたこと。これまでもありえないはずの出来事を何度も乗り越えてきたKAT-TUNが、この最大の衝撃の向こうにどんな世界を見せてくれるのか。メンバーにも客席にも涙はあったけれども、その涙は前に進むためのエネルギーに変わる。

そして、波瀾万丈の航海にも船を降りなかったファンとの間に生まれた新たな約束。今度こそ、その約束を果たせるかどうかは、亀梨もトリプルアンコールで話していたように、彼ら次第であると同時にハイフン次第でもある。「ドームでライブができるグループじゃなかったら、帰ってきちゃいけないと思うので。そこは一つの目安として掲げてやっていきたい」と亀梨は開演前に決意を見せていたが、「有言実行な! 絶対デカくなって戻ってくるから!」という上田の叫びも頼もしい。

KAT-TUNという船が東京ドームという彼らのあるべき場所に還ってくるその日まで、彼らとともに進み続けるだけ。ピンク、ブルー、パープルのメンバーカラーの3つの輝きがひとつに溶け合い、ハイフンへと変るエンディング映像とともに、その思いがハイフンの胸に刻まれた。

【KAT-TUN 10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR “10Ks!”】(5月1日公演セットリスト)

OVERTURE

1  GOLD

2  Real Face

3  BIRTH

4  THE D-MOTION

5  ONE DROP

6  WHITE

7  PERFECT

8  春夏秋冬

9  DON’T U EVER STOP

10  MOON

11  In Fact

12  NEVER AGAIN

13  僕らの街で

14  KISS KISS KISS

15  Will Be All Right

《 M C 》

2006〜2009メドレー

16 a  ハルカナ約束

b  RESCUE

c  LIPS

d  YOU

e  White X’mas

2010〜2012メドレー

17 a  Love yourself〜君が嫌いな君が好き〜

b  CHANGE UR WORLD

c  STAR RIDER

d  Going!

e  不滅のスクラム

f  RUN FOR YOU

《TEN-G コーナー》

2013〜2015メドレー

18 a  RAY

b  Dead or Alive

c  BOUNCE GIRL

d  4U

19  TRAGEDY

20  UNLOCK

21  君のユメ ぼくのユメ

〜挨拶〜

ENCORE

1  GREATEST JOURNEY

2  喜びの歌

3  Keep the faith

4  Peacefuldays

5  PRECIOUS ONE

W ENCORE

1  BRAND NEW STAGE

TRIPLE ENCORE

1  Real Face

2  Peacefuldays

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『SCREEN』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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