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年俸調停で敗れた直後にトレード。新天地でブレイクなるか。兄はこの球団へ移った1年目に首位打者

宇根夏樹ベースボール・ライター
ドノバン・ソラーノ(左)とニック・ゴードン Apr 10, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2月11日、ミネソタ・ツインズは、ニック・ゴードンをマイアミ・マーリンズへ放出し、交換にスティーブン・オカートを獲得した。ゴードンは28歳のユーティリティ・プレーヤー、オカートは32歳のリリーバーだ。

 2人とも、今オフは、年俸調停の申請権を持っていた。オカートは、1ヵ月前に年俸調停を回避し、106万2500万ドルの年俸で合意に達した。一方、ゴードンは、期限までに金額が折り合わなかった。申請額は、ゴードンが125万ドル、ツインズは90万ドル。調停の結果、ゴードンが敗れ、2024年の年俸が90万ドルに決まったのは、トレードの前日だ。

 オカートは、2シーズン続けて60試合以上に登板し、それぞれ、防御率2.98と防御率4.45を記録している。ゴードンは、2022年が136試合で打率.272と出塁率.316、9本塁打と6盗塁。2023年は、5月半ばに自打球で右の脛骨を骨折し、34試合で打率.176と出塁率.185、2本塁打と0盗塁に終わった。

 過去2シーズンのスタッツからすると、オカートのほうが期待できそうだが、ゴードンは10年前のドラフト全体5位だ。高校生の野手では、最初に指名された。オカートは、12年前の4巡目・全体148位。大学からプロ入りした。また、FAになるのは、ゴードンが2027年のオフ、オカートは2026年のオフだ。

 ゴードンは、父と兄もメジャーリーグでプレーした。父のトム・ゴードンは、21シーズンに138勝と158セーブと121ホールド。1998年は46セーブを挙げ、タイトルを獲得した。兄のディー・ストレンジ-ゴードンは、11シーズンに1118本のヒットを打ち、336盗塁を記録している。タイトルは、盗塁王が3度と首位打者が1度。最多安打と最多三塁打も1度ずつだ。ドラフトの順位は、父が1986年の6巡目・全体134位、兄は2008年の4巡目・127位だった。

 兄は、2014年12月のトレードで、ロサンゼルス・ドジャースからマーリンズへ移った。マーリンズ1年目の2015年は、前年に続く2度目の盗塁王に加え、両リーグ最多のヒットを打ち、首位打者を獲得した。

 当時、兄が守っていた二塁には、2シーズン続けて首位打者――2022年はツインズ、2023年はマーリンズで獲得――のルイス・アライズがいる。だが、三塁手のジェイク・バーガーは、守備を考えると、三塁よりもDHが適任だろう。遊撃は、ジョン・バーティが有力ながら、こちらも弟のゴードンと同じく、ユーティリティ・プレーヤーだ。父と兄のようにタイトルを獲得できるかどうかはわからないものの、弟が新天地で花開くチャンスは、皆無ではない。

 なお、今回のトレードにより、マーリンズがFAのジオ・アーシェラと契約を交わす可能性は低くなったと思われる。アーシェラについては、こちらで書いた。

「エンジェルスを含む4球団が興味!? 62試合で2本塁打のアーシェラが人気を博している理由は…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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