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関ジャニ∞ 初野外フェスで見せた、ロックバンドとしての強さとプライド、アイドルとしての覚悟

田中久勝音楽&エンタメアナリスト

音楽というのやっぱり正直なものなんだ、アイドルというのは器用なんだという事を、5月21日、東京・新木場 若洲公園で行われていた『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017(メトロック2017)』のメインステージ・WINDMILL FIELDに立っている関ジャニ∞の姿、その音に盛り上がっているお客さんの姿を見て思った―――。

”バンド力”を鍛え、満を持しての初野外フェス出演

関ジャニ∞の野外フェス初出演が、開催直前の5月12日に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)内で電撃発表され、大きな話題になり、SNS上では肯定的な意見、否定的な意見が飛び交った。同フェスのオフィシャルサイト上では、この日の出演アーティストの最後の一組がなかなか発表されずに、音楽ファンの間では色々なアーティストの名前が出て、憶測を呼んでいた。そこに関ジャニ∞出演決定のニュースである。否定的な意見、肯定的な意見が出てくるのは当たり前で、良くも悪くも出演前から盛り上がっていた。しかし季節を問わず全国各地で行われるようになったフェスは、数が増えれば当然その顔ぶれは、どのフェスも似たようなラインナップになる。そんな中で、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で、音楽と真摯に向き合い、“バンド力”を上げながら、様々なアーティストからも評価されている姿が世の中に伝わってきている7人の出演は、フェスのオリジナリティという部分を考えると大正解だ。

そしてチケットがほぼ完売している中での発表だったので、関ジャニ∞ファンも大挙して応援に来ることができないという点からも、「アウェー」という言葉を使うファンやメディアが多かった。確かにアイドルが、人気ロックバンドが揃うフェスに出る事は、考え方によってはアウェーと映るのかもしれないが、フェス、特に野外フェスというのは音楽はもちろんだが、その雰囲気、空気、時間を楽しもうという人も多い。

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ちなみにこの日は、関ジャニ∞の他にKANA-BOON、キュウソネコカミ、classicus、Cocco、サカナクション、Suchmos、 SHISHAMO、MY FIRST STORY、Mrs. GREEN APPLE、MOROHA、夜の本気ダンス、LOVE PSYCHEDELICO 忘れらんねえよ、wacci、そしてWANIMAと、若手からベテランまで人気アーティストが3つのステージに分かれ、ライヴを行っていた。でもそこに集まったお客さんは、それぞれのアーティスのファンだけではない。フェスに参加するロックファンは、どのバンドに対しても寛容なのだ。例え演奏している曲を1曲も知らなくても、とにかく楽しめればいいという人が多い。もちろんコアなロックファンもいるが、新しいバンド、才能を見つけにきたという人も多い。そういう意味でフェスはどんな音楽、アーティストにも寛容で、関ジャニ∞もこの「メトロック2017」のステージは決してアウェーではなかったのだ。個々の技術も飛躍的に伸び、強い“バンド力”を手に入れた7人としては、“満を持して”の出演だった。

その演奏力の高さに、客席の空気が変わって、温度が一気に上昇

この日のメインステージのトリである、サカナクションの前に登場した関ジャニ∞。彼らの演奏をひと目見ようと、他のステージに行っていたお客さんも続々と集まり、広大なスペースがぎっしり埋まった。そして7人が登場。青空の下、どこまでも広がる人の波を目にして、ステージ上の7人はどんな想いだったのだろう。オープニングナンバーは「High Spirits」。歌が無く、メンバーの演奏だけで披露されるこのインスト曲は、ドラム大倉忠義、ベース丸山隆平、ギター安田章大、ギター錦戸亮、キーボード村上信五、トランペット横山裕、そしてブルースハープ渋谷すばるのそれぞれの音をフィーチャーし、音を紡いでいく。ここで関ジャニ∞のライヴが初体験というほとんどのお客さんも気がついたはずだ。「こいつらやる」と。そしてそのまま「ズッコケ男道」に突入。イントロが始まった瞬間に、客席の温度が一気に上がった。“有名人見たさ”にその場にいたお客さんも、彼らの名前と曲とが一致するこの曲は、盛り上がらないわけにはいけないとばかりに、全員がジャンプし、コール&レスポンスも決まっている。渋谷のブルースハープがさらに客席を煽る。続くシンプルなパンクチューン「言ったじゃないか」では7人が自信を持って楽しみながら演奏しているのが伝わってきた。

「純粋に音楽を届けに来た」事を証明した熱いパフォーマンス

村上が「改めまして関ジャニ∞です。関ジャニ∞、テレビではバカな事ばっかり、ふざけたりばっかりですけど、今日の今日だけは純粋に音楽を届けます。関ジャニ∞の音楽聴いてくれー!」とメンバー全員の素直な想いを伝える。丸山のスラップベースがリズムを刻むイントロは「NOROSHI」だ。音が重なっていき、横山のトランペットで厚みが加わり、和のメロディとファンクのノリが融合した、彼らしい一曲。このあたりで、客席の彼らを見る目が完全に変わったと感じた。前へ前と向かうバンドの音をしっかり受け止め、お客さんの気持ちが、前方だけでなく後方で観ている人も全員が徐々に前のめりになっていくのが伝わってきた。「宇宙に行ったライオン」は、どこか浮遊感を感じさせてくれるグルーヴが印象的で、ボーカル渋谷は細みの体全体を使って吠えるように歌い、凄みを伝える。鬼気迫る表情がスクリーン映し出され、その迫力はまさにカリスマ性を湛えるロックボーカリストだ。横山はトランペット、ボンゴ、ティンパニとあらゆる楽器を駆使し、村上のキーボードと共に、ロックサウンドに繊細さという名の彩りとノリを加えている。

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「宇宙に~」と共に、極上のバンドアンサンブルを楽しませてくれた「象」は、高橋優が彼らに提供したナンバーで、安田がボーカルをとる。安田のギターも関ジャニ∞の大きな武器だ。テクニックはもちろんそのヘヴィーなギターソロが、彼らのロックをより骨太なものにしている。リフを刻む錦戸、歌うように弾く渋谷のギター、3人のギターのバランスが絶妙で、バンドとしての音の佇まいをよりはっきりとしたものにしている。「象」をやり切り、間髪入れずに丸山の太いスラップベースが音を刻みはじめる。そこに大倉のドラムが加わり、3人のギターが乗り、セッションがスタート。渋谷が丸山に何やら耳打ち。実はこのくだりは丸山がソロのタイミングを間違えていたというオチだが、アクシデントもしっかりジャムセッションとして聴かせる事ができる余裕と自信。

そして錦戸が「楽しんでますかー。後ろのほうの遊具で遊んでる人たちも楽しんでってくださいね。でもこれから静かな曲やります。レキシが作ってくれた曲です」と紹介し、前日同じステージに出演していたレキシが作詞・作曲を手がけた「侍唄(さむらいソング)」を歌い始める。錦戸の力強いアコギと、渋谷とは全く違うタイプのボーカルが印象的だ。安田のコーラスも重なり、レキシが作った切ないメロディが胸に迫る。

本当はここで披露するはずだった、丸山のベースソロが改めて聴こえてくる。全員の音が重なりガレージサウンドを奏でる「Tokyoholic」。作詞・曲・アレンジを錦戸が手がけた、それぞれの音がまさに襲い掛かってくるような感覚を味わう事ができる、バンド・関ジャニ∞を最も感じさせてくれる1曲だ。丸山のベースと、大倉の切れ味鋭い、安定感抜群のドラム、強力なリズム隊がこのバンドの要になっている事を改めて感じさせてくれる。夕暮れが迫り、風が少し冷たくなってきたが、OKAMOTO’Sが提供した「勝手に仕上がれ」を披露するステージ上の7人の演奏はさらに熱を帯び、渋谷の歌は感情がより露わになり、伝えようという想いがエネルギーとなって客席に向かっていく。

「関ジャニ∞っていうアイドルグループやっています」―――バンドとしての自信、プライドを感じるメッセージ

「関ジャニ∞っていうアイドルグループやってます!ありがとう『METROCK』!!」」と渋谷が叫ぶ。音楽で真向勝負しているバンドとして、そしてアイドルとしての覚悟と自信、強いプライドを感じさせてくれた。村上がライヴ前半で言った「純粋に音楽を届けに来た」という言葉が同時に頭の中で響いた。ラストは「LIFE ~目の前の向こうへ~」。シングルとしては初のバンド曲という、彼らの中でも特別な1曲になっている。バンドとして進化していくきっかけになった曲で、最後に想いを伝える。客席の盛り上がりも、歓声と笑顔、そしてサークル、モッシュが起こりクライマックスを迎えた。例え知らない曲でもいい音楽、楽しい音楽が流れてくれば、自然と盛り上がる。それがフェスだ。今回の出演は決してアウェーではないし、もしアウェーだったとしても、自信を持って臨んだ彼らは、生演奏と歌で、集まった人達に想いを伝え、盛り上げ、ホームに変えてしまったのだ。

アイドルでもあり、ロックバンドであり、しかも両方とも中途半端ではなく100%の力で真っ向勝負で臨んでいる関ジャニ∞。極めて器用な7人であり、奇跡的な組合せの7人でもある。フェス初出演だった2015年の『テレビ朝日ドリームフェスティバル2015』に続き、今回の野外フェス初出演となった『メトロック2017』でも、バンドとしての爪跡を、そこにいた全ての人の心に深く残した。そしてバンドとしての強さを証明した。

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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