熱狂打楽器集団・ラセーニャス【前編】 『EIGHT-JAM』出演後の反響と番組Dが語るその音楽の魅力
打楽器集団・ラセーニャスが『EIGHT-JAM』に出演し、大きな話題に
打楽器奏者のみで構成された”熱狂打楽器集団”・ LA SEÑAS(ラセーニャス)が、9月22日『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)に出演し、注目を集めている。アルゼンチン発祥のハンドサインを用いた即興演奏法“Rhythm with Signs”を取り入れた日本初のグループで、以前同番組で放送された「生楽器の魅力を体感できるアーティスト」特集の中で、打首獄門同好会の大澤敦史(G/Vo)がラセーニャスを取り上げ、話題になっている中での今回の出演となった。番組に出演したリーダーの織本卓、柴崎仁志、福岡たかし、さのみきひと、椿拓也、ヒロシ、木川保奈美にインタビューし、ラセーニャスという唯一無二の打楽器集団について聞かせてもらった。
――『EIGHT-JAM』への出演後みなさんそれぞれ大きな反響があったとお聞きしました。
織本 以前『EIGHT-JAM』の「生楽器の魅力を体感できるアーティスト」特集の中で、打首獄門同好会の会長(大澤)さんが僕達のことを1分半くらいの映像と共に紹介してくださったのですが、番組終了後Xのトレンドに入ったり、SNSのフォロワー数もYouTubeの再生数が爆伸びしたり、大きな反響がありました。
――番組の影響力、強いですね。
織本 知り合いからメッセージがたくさん届いたり、出演した後はその時と比べものにならないほどの反響があり、実は放送日の翌日に渋谷のライヴハウスでライヴやりましたが、告知をしたのが直前だったにも関わらず、オープン前から長蛇の列ができて満員になりました。
――お客さんもいつとは違う客層でした?
織本 キャパは100人ちょっとのハコなんですが、半分以上のお客さんが『EIGHT-JAM』を観てきましたよっていう感じで、今まであまりいなかったすごく若い女性や子供連れの方が来てくださったり、本当にびっくりしました。
さの 友達とか周りの人からの反応はみんなそれぞれあったと思いますが、打楽器をやっている人、やっていた人、打楽器が好きな人がXで、こんな人達がいるんだ、面白そう、ライヴに行ってみようって言ってくれていたのがすごく嬉しかったです。僕らのやっている音楽を一度体感していただければ、絶対ハマるはずの層はいると思っていたので、『EIGHT-JAM』に出演しパフォーマンスできて嬉しかったです。
――2023年1月にラセーニャスのライヴ(日食なつことの2マン)を初めて観させていただいのですが、その時「なんでもっと早く聴かなかったんだろう」って思ったことを覚えています。
さの 嬉しいです、ありがとうございます。
――打首獄門同好会の会長や、『EIGHT-JAM』でも共演した東京スカパラダイスオーケストラの大森はじめさん等、多くのアーティストからも支持されています。
さの 日食なつこさんやRISEのベーシスト・KenKenさんもすごく気に入ってくださっていて本当に嬉しいです。
福岡 僕は番組放送当日は実家で祖母と一緒に観ていました。祖母にまだライヴも観てもらってなくて、ミュージシャンとしての孫の姿をちゃんと見せることができていませんでした。テレビの音楽番組にサポートで出た時も、小さくて見つけられなかったみたいで、でも『EIGHT-JAM』で僕が映った時、祖母が手を叩いて喜んでくれました。僕はその反応が一番嬉しかったです。
――最高にいい話です。
福岡 祖母世代にテレビの影響力は絶大です(笑)。
「色々な楽器メーカーの方が喜んでくださって、それが嬉しかった」(織本)
――『EIGHT-JAM』って、マニアックなことをポップに教えてくれる番組で幅広い層に支持されているので、視聴者にラセーニャスのよさや凄さが、わかりやすく伝わったと思います。
柴崎 しかもあの日がSUPER EIGHTさんの20周年のアニバーサリーデーで、そんな時に出演できて、一緒にセッションを楽しむことができて嬉しかったです。ずっと応援してくれているファンや知り合いがすごく喜んでくれて、それも嬉しかったのですが、僕は番組の中でカホンを紹介させていただいて。そのメーカーさんがすごく喜んでくれて、長野県のメーカーさんの珍しいカホンなんですけど、「打楽器を広めてくれてありがとう」って感謝され、感激しました。
織本 本当に色々なメーカーの方達が喜んでくれました。和太鼓はみなさん知っていると思いますが、あまり知られていない打楽器もたくさんあるので、番組を観てこんな楽器があるんだって知ってもらうことができたのが嬉しいです。これで打楽器を始める人がいたら最高です。
柴崎 メンバーそれぞれの楽器でお気に入りのメーカーがあって、そういう方達から感謝の言葉をいだけるのは演奏者としては本当に嬉しいです。
「ラセーニャスはパーカッショニスト集団で、他のアーティストのサポートもやっていて、映像に映ってもステージに立っても後ろにいる人間の集まり。そういう我々を特集してくださって本当に嬉しかった」(ヒロシ)
――続いてヒロシさんお願いします。
ヒロシ ラセーニャスはパーカッショニストしかいない集団で、他のアーティストのサポートもやっていて、映像に映ってもステージに立っても後ろにいる人間の集まりなんです。そういう我々を特集してくださったことは本当に嬉しかったし、SNSでの反響もすごくて、「なんかパーカッションの人ってすごいんだね」という言葉を色々な方からいただけたことが励みになりました。
椿 僕は和太鼓をやっていて、応援して下さるのは上の世代の方が多いのですが、ラセーニャスのライヴを観たことがないという人が多く、そういう方達に『EIGHT-JAM』を通してパフォーマンスしている姿を伝えることができてよかったです。先ほど他のメンバーからも出ましたが、僕も石川県の和太鼓のメーカーさんからわざわざ連絡をいただき、喜んでいただけました。僕はラセーニャス歴が一番浅いのですが、ラセーニャスのよさを和太鼓界に広めることができたらいいなと思います。
木川 『EIGHT-JAM』の反響で嬉しかったことが二つあって、まず友人の小さな子供たちがテレビを観て、打楽器のリズムに反応して踊っていたということを聞きました。それと番組内でパンデイロというタンバリンによく似た楽器を紹介させていただいて、その叩き方がタンバリンと少し違うのですが、子供がおもちゃのタンバリンを引っ張り出して来て、パンデイロと同じ叩き方でテレビを観ながら一緒に“セッション”してくれていたようなんです。子供達が喜んでくれたというお話を聞いてすごく嬉しかったです。それから打首獄門同好会の会長さんから放送終了後にすぐにLINEが届きました。しかもXの打首さんのアカウントで愛あるコメントを投稿してくれたり、自分のことのように喜んでくださって、もう本当に感謝しかないです。
「『生で観たらスゴいアーティスト』で、打首獄門同好会の会長が紹介してくださり、その時は映像だけでの紹介だったにも関わらず、出演者の食いつきがスゴかった」
『EIGHT-JAM』の制作スタッフにも話を聞くことができた。同番組のディレクター・高尾あずみ氏にラセーニャスの魅力、そして出演までの経緯、当日の共演者の反応などをメールインタビューで答えてもらった。
高尾 「打楽器の特集をやりたい」という話は、以前から番組の会議でも挙がっていたのですが、どのように形にしたらいいか…と模索していた中で出会ったのがラセーニャスでした。放送でも触れていたように打首獄門同好会の大澤会長が「生で観たらスゴいアーティスト」として紹介してくださり、その時は映像だけでの紹介だったにも関わらず、出演者の食いつきがスゴかったです。その日のうちに「ラセーニャスをゲストに呼んで、打楽器特集をやろう!」という話が出たほどでした。
「“多彩性”と“一回性”、そしてデカい音が魅力」
――ラセーニャスとその音楽の魅力はどこにあると思いますか?
高尾 「多彩性」と「一回性」だと思います。放送では紹介し切れなかったのですが、指揮をするメンバーが替わると演奏が全く違うものになり、番組で披露したようなアッパーなものもあれば、夜の月の光を漂うような曲や、どこの国の音楽なのかわからないような演奏もある。且つそれがその時たった一度しか聴けない(即興なので当然なのですが)という特別さが魅力なのではないでしょうか。それと単純にあれだけの数の打楽器が一気に鳴るのですから音がデカい!デカい音を間近で聴くだけで、体温がグワッと上がります。こればかりは残念ですがテレビではお伝えし切れません。ぜひライヴに足を運んで、実感していただきたいです。
「スタジオが一気にラセーニャスの熱狂に飲み込まれたセッション」
――収録当日のスタジオの雰囲気、共演者の反応はいかがでしたか?
高尾 冒頭のパフォーマンスから皆さん一気に引き込まれていて、古田新太さんは立ち上がってご覧になっていたほどです。ラセーニャス側から「23人でパフォーマンスしたい」とご提案いただいたのですが(スタジオが狭いのでなかなか大変だったのですが…)、23人でやって間違いなかったです!スタジオが一気にラセーニャスの熱狂に飲み込まれました。番組の最後にはSUPER EIGHTの丸山さん・大倉さん、東京スカパラダイスオーケストラの大森はじめさんにご参加いただいて、ハンドサインでのセッションを行いました。3人とも大興奮でした。段取りの確認のために、事前に私も同じようにハンドサインのレクチャーを受けて体験したのですが、演奏しながら隣のメンバーがそっと声をかけて教えてくださったり、ソロのパートがうまくできると全員で歓声を上げてくださったり…とにかくウェルカムな空気感がハンパない!3人もそれを実感したようで、たった数分で一気に一体感が生まれました。
メンバーは固定しないで活動。「グループLINEは39人」いるが、「『EIGHT-JAM』に出た23人が今の中心メンバーで、固定になりつつあります」(織本)
スタジオの熱狂が画面を通して伝わってきたが、ラセーニャスの音圧と渦巻くリズムには誰もが心を揺さぶられる。初ライヴは2016年。そのライヴの凄さが少しずつ広がっていった。メンバーは固定しないで活動している。
織本 すごく流動的で、それこそ結成して初めてライヴやったときのメンバーで、今日参加しているのは僕と(福岡)たかしとヒロシだけなんです。当時のメンバーはラセーニャスを立ち上げたリーダーを含めて全部で15人で、僕が2代目リーダーになったのを境にメンバーがどんどん増えていきました。『EIGHT-JAM』に出た23人が今中心メンバーで固定になりつつあります。
福岡 グループLINEは39人います。
ヒロシ 年一でライヴに出演するメンバーもいます(笑)
織本 ワンマンライヴや自分達が主催のライヴは23人出演しますが、僕達は学校を訪問して演奏したり、町のお祭りやイベントにも積極的に出ているので、そのときは3~10人の小さな編成でパフォーマンスします。
今使用している楽器は50種類位。「これだけパーカッショニストが揃っていてもまだ誰も知らない楽器がある」(柴崎)
――楽器の種類でいうと、今の所属してるメンバーが使っている楽器は何種類ぐらいあるんですか?
織本 大体50種類ぐらいで、1月に発売した1stフルアルバム『Country of Frenzy~熱狂の国~』ではそれを全部使っています。ライヴでは、初めて使う楽器を持ってきたりするので、まだまだ増えそうです。
柴崎 これだけパーカッショニストがいても、まだ誰も知らない楽器があります(笑)。
織本 メインで使っているのはブラジルやアフリカ、キューバの音楽で使われているもので、椿は和太鼓、僕はインドのパーカッションを使ったり、アラブ中東地域のパーカッションとか、打楽器のこのジャンルじゃなければいけないとか、縛りやこだわり一切ないので、面白そうとか、これ入れたらかっこいいかもと思う楽器は、どんどん取り入れるようにしています。【後編】に続く