U-20女子W杯コスタリカに臨むヤングなでしこ。9日間の長期合宿の成果とは?
6月6日から14日まで、Jヴィレッジ(福島県)でU-20女子代表合宿が行われた。このチームは、8月に行われるFIFA U-20女子ワールドカップに出場する。コロナ禍で国際親善試合が行えないなど、大会への準備が限られた中、今回の合宿では男子高校生チームと3度のトレーニングマッチを実施。2カ月後に迫った本大会に向けて、急ピッチでチーム作りを進めている。
参考記事:U-20女子W杯コスタリカまで2カ月。ヤングなでしこは4年越しの連覇なるか
合宿時に池田太監督と選手たちに話を聞いた。
池田太監督
ーー練習試合の狙いと手応えを教えてください。
高い強度やスピード感の中で試合をしたいと思っていました。システム的には、(グループステージで)対戦するオランダやアメリカがベースとしている4-3-3、4-1-4-1のシステムを相手チームにリクエストして、選手の噛み合わせのミスマッチをどうするか、守備はどのタイミングで誰が(アプローチに)いくか、などをシミュレーションしました。
「インテンシティが高いゲームをしたい」と相手にお願いした中で、自分たちが積み上げてきたことを、声を掛け合いながら主体性を持ってプレーできていたところは評価できます。(2試合目は)しっかり得点を奪い、失点ゼロの引き締まったゲームができ、90分を通して集中力途切れずにやれたところはよかったです。
ーー3バックにトライしたのは、オプションを増やすためでしょうか?
この年代でいろんなシステムの経験値を上げて、一人一人のやれることを増やしていくこともありますし、チームとしてオプションが持てるように、選手の特性も考えながら(3バックに)トライしました。WEリーグで(3バックを)経験している選手もいますし、伝えたことの飲み込みや対応力、適応力、技術面も含めて、理解度の高いグループだなと改めて感じました。
ーー9日間と長い合宿でしたが、全体の手応えはいかがですか?
これまでの合宿は期間的に短かったので、9日間の中で中2日、3日という大会のスケジュールを考えたトレーニングセッションをシミュレーションできました。ミーティングのタイミングも含めて、この期間でやろうとしていたことがしっかりとできました。
GK 福田史織(三菱重工浦和レッズレディース)
ーー大会まで2カ月、チームとして大切にしていることは何ですか?
今まで全然、チームとしての活動ができていなかったので、1日1日を大事にして積み重ねていきたいです。
個々が得意なプレーを活かしていきたいと思うので、まずは全員とコミュニケーションをたくさん取るために、オフの場面でも「今日のところはどうだった?」と声をかけるようにしています。試合の中では、しっかり繋ぐところや、簡単にクリアすることが必要な時もあるので、時間帯や相手の状況によってはっきりさせるようにしています。
ーーGKとしての視野は、どのように広げているのですか?
(浦和のチームメートでもある)池田咲紀子選手のプレーをお手本にしています。さっこさんは練習中でもまず遠くから見て、少しでも隙があったら裏のスペースや、(菅澤)優衣香さんの足元に上手にボールを落とせます。自分が試合に出ていない時でも、さっこさんならどこに蹴るだろう?と想像しながら取り組むことでできるようになってきたと感じます。
ーー後援会のインタビューで、浦和の選手の皆さんが福田選手の身体能力の高さや1対1の強さを強調していました。どうやって鍛えたのですか?
私は低いボールを足で止めるプレーや、止まった状態から飛んでセーブしたり、反射神経を使うプレーを得意としています。兄が2人いるのですが、小さい頃から一緒に体を動かしたり、お兄ちゃんに物を投げられたりしていたので(笑)、瞬発力が鍛えられたのかな、と思います。
FW 山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
ーー今回の合宿では、どんなことを大切にしていましたか?
前回(5月)の合宿から積み上げたものをさらにレベルアップさせるために、本番の相手を意識した練習だったり、映像も見ながら取り組んでいこう、という話が(監督から)ありました。
絶対に勝つために1点だけでなく、2点、3点取りにいく姿勢や、ゴールを決め切る部分はもっと意識していきたいです。
ーー山本選手は前回のU-20代表でもアジア予選で活躍しました。その時から自身の成長をどう感じていますか?
(2019年の)アジア予選では試合に出ることができて、得点(5得点)もできたのですが、個の力不足を感じていました。それからWEリーグで試合経験を積んだ中で、相手を抜くとか、ゴールを決める個の力の部分は自信を持てるようになりました。ベレーザは判断のスピードや基礎技術が高く、練習や試合で大人のプロのサッカーを経験する中で、リーグ後半戦では試合に絡めるようになりました。FWとして(点を取って)チームを勝たせる立場ですし、自覚を持って取り組んでいきたいと思っています。
ーー本大会では、どんなことにチャレンジしたいですか?
ドリブルなどで相手を剥がす部分に自信を持っているので、チャンスメイクして点を取るという部分がどれだけ通用するかは個人的に楽しみにしています。楽しくプレーして、見ている人たちも楽しませるサッカーを目標にしています。
DF 長江伊吹(INAC神戸レオネッサ)
ーー今回の合宿のテーマと、感想を教えてください。
今回は5月の合宿から時間を空けず、前回の積み上げの確認もできているのは大きいです。(グループステージで)オランダ、ガーナ、アメリカと攻撃力のある国との対戦が続くので、センターバックとして守備の部分は突き詰めてやっています。失点ゼロを目指す中でラインの上げ下げとかマークを受け渡す時のコミュニケーションなど、細部を積み上げていかないと、世界には通用しないと思います。
ーー客観的に見て、どんなチームだと思いますか?
少し大人しいですが、試合になるとみんな人が変わるというか、年齢関係なく言い合えるチームだなと思います。
ーーINACはリーグ最少失点でしたが、U-20代表で生かせそうなことはありますか。
INACは普段の練習から「絶対に失点しない」という気持ちで、山下杏也加選手を中心に練習していました。檄を飛ばされることもありましたが、失点しなければ負けることはないですし、一つ一つのプレーに対してどうしたらいいかを確認しながらコミュニケーションの大切さを学ばせてもらいました。U-20ではディフェンスリーダーになっていかなければいけないと思っているので、(INACの守備を)参考にしながらやっていきたいと思います。
ーー本大会での目標を教えてください。
私はディフェンスの中では小柄な選手だと思いますが、1対1ではどの国のどの選手にも絶対に負けたくないので。小柄でも大きな選手に遠慮なく挑んで勝つ姿を見せたいと思っています。
MF 岩崎心南(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
ーー男子高校生チームとの試合(◯3-0)では2点目を決めました。
前からアグレッシブに行くところでみんなで前から行くことができて、最後のいい時間に点をとれて、後半もその流れでみんなで前から奪いに行くことができたました。インサイドハーフなので点を取ろうという気持ちで臨んでいて、中に入れば山本(柚月)選手からいいボールがくると思ったので、信じて入って良かったです。
ーー3バックのメリットは生かせていますか?
どんなポジションでもアグレッシブにということが私たちのコンセプトなので、みんなで前から行くところではいいんじゃないかなと思います。
ーー本番でトライしたいことを教えてください。
練習を重ねることで、一人ひとりの良さを出すために周りを見て、いい連係ができているんじゃないかなと思っています。ベレーザでは攻撃的なポジションをやっていて、その強みはU-20でも自分の良さとして出して行けたらいいなと。海外は人に強い部分があると思うので、周りを見て判断を早くしてプレーしたいです。
海外の選手は速いとか強いとかシュートが上手いと聞いたので、相手の良さを出さないようやっていかないといけないなと思います。
DF 竹重杏歌理(INAC神戸レオネッサ)
ーー男子高校生チームとの試合(◯3-0)の手応えを教えてください。
チームとして守備から入るところをしっかりできて、個々の特徴を生かしてゴールできたのは良かったです。自分の良さは空中戦やカバーリング、ロングフィードなので、これからもっと出せるようにしていきたいです。
ーー3バックにチャレンジしましたが、どうでしたか。
INACでも3バックをやっていたのでやりやすかったですが、(U-20では)全員が3バックをチームでやっていたわけではないので、最初は立ち位置などがうまくいかない時もありました。ただ、練習からどこで(プレッシャーを)かけに行き、その時に誰がどこから出るのか、というところをチームとしてしっかり声を掛け合いながら修正できたと思います。
ーーWEリーグの試合に多く出場した経験は生かされていますか?
チームでは山さん(山下杏也加)や(三宅)史織さんが高い要求をしてくださって、考え方が広がったおかげで臨機応変さが身についた気がします。自信を無くすこともありましたが、要求されることで「自分もまだまだ成長できる」と感じて、U-20でも自信を持ってプレーできています。
ーー本番で対戦するアメリカ、ガーナ、オランダの印象を教えてください。
海外の選手の映像を見ると、身体能力を活かしたり、長いボールを蹴ったり、日本ではない細かいパスなどの予期しないプレーが多いので、そういうことが起きることをしっかり頭に入れて対応していきたいです。本大会でも集中して、全部勝ち切っていきたいと思います。
DF 小山史乃観(セレッソ大阪堺レディース)
ーー今回の合宿は、チーム作りをしながら、メンバー選考のサバイバルという側面もありましたが、個人として意識したことを教えてください。
まずは自分の最大限できるパフォーマンスを発揮することにフォーカスしました。あとは監督が求めていること、チームとしてやりたいことを擦り合わせながら、自分の良さを出していけるようにしました。
自チームでは前目のポジションをやっていますが、代表ではサイドバックでプレーしています。サイドの1対1では絶対に負けないようにして、そこからどれだけ攻撃に関われるかを意識してプレーしています。
ーー本番まで時間が少ないですが、3バックには適応できていますか?
はい。試合が終わった後にみんなで映像を見て振り返って意図を合わせています。3バックになると前のスプリントがもっと求められるので、自分の特徴を生かしてプレーできる印象はあります。
ーー聖光学院高との試合は1試合目は1-1、2戦目は3-0でした。
(最初の試合では)サイドの選手の位置が低いと監督から言われていたのですが、逆サイドにボールがある時でも関わっていけるポジションを取れたので、攻撃に厚みが出てきたと思います。
ーー本大会ではどんなことを楽しみにしていますか?
まず、1対1でどれだけ通用するかというのと。2年間、コロナで海外のチームと対戦していないので。自分たちがどこまでできるかが楽しみです。
*表記のない写真は筆者撮影