ヤンキースにいる「三つ頭の怪物」は迫力満点ながら、寿命は短いかも(でも、来シーズンに復活するかも)
今シーズン、ニューヨーク・ヤンキースのブルペンには「スリーヘッディッド・モンスター(三つ頭の怪物)」が誕生した。英文記事ではこのニックネームをよく見かけたが、わかりにくければ、ケルベロスやキングギドラ、あるいは「ハリー・ポッターと賢者の石」に出てくるフラッフィーでもいい。
デリン・ベタンセス、アンドルー・ミラー、アロルディス・チャップマンの3人のことだ。彼らがブルペンに揃ったのは5月9日、初めて同じ試合でマウンドに上がったのは5月14日。チャップマンは昨年12月にシンシナティ・レッズから移籍したが、DVによる出場停止処分を受け、開幕1ヵ月は投げられなかった。
彼らの迫力は、まさに三つ頭の怪物と呼ぶのにふさわしい。打者から三振を奪う割合は、ベタンセスが45.0%、ミラーが45.2%、チャップマンは36.7%。救援25イニング以上で2人を上回る投手はおらず、チャップマンの上にも3人しかいない。チャップマンの数値は例年に比べるとおとなしいが、その分、与四球が減っている。しかも、スピードの衰えは微塵もなく、7月18日には、2010年に続いて2度目の105.1マイル(約169.1km)を計時した。防御率は、3人のうち最も悪いベタンセスでも2.54だ。彼らが7回以降に1イニングずつ投げる可能性があるのだから、対戦相手には脅威以外の何物でもない。
ヤンキースは6月9日から、ヒップホップ・グループのRun-D.M.C.に引っかけた「ノー・ランズDMC」Tシャツを39ドル99セントで販売している。得点(ラン)を与えない、D(デリン)とM(ミラー)とC(チャップマン)ということだ。「恋のハッピー・デート」などを歌ったノーランズとは関係ない。
ただ、三つ頭の怪物の寿命は、意外に短いかもしれない。
この夏、ヤンキースはトレード市場で売り手に回るとの噂が飛び交っている。その理由には、チームのもたつきと高齢化がある。今シーズンの巻き返しはまだ無理ではないものの、ブライアン・キャッシュマンGMは若返りを図りたいようだ。ヤンキースの高齢化は、今に始まった問題ではない。特に、野手陣は年齢が高く、26歳の二遊間デュオを除くレギュラー7人が32歳以上だ。
放出の候補に挙がっている選手は少なくなく、そこにはミラーとチャップマンも含まれている。この2人のうち、キャッシュマンGMがより成立させたいのは、チャップマンのトレードだろう。左のリリーバーという点は同じながら、2人の契約には違いがある。ミラーは今シーズンが4年契約の2年目。それに対し、チャップマンは今シーズンが終わるとFAになる。出場停止が45日以上なら、FAが来シーズン終了後にずれ込む可能性もあったが、そうはならなかった。ちなみに、ベタンセスは右投手で、FAになるのは、最短でも2019年のシーズン終了後だ。
チャップマン(もしくはミラー)の放出が実現すれば、三つ頭の怪物は姿を消す。けれども、それは一時的なものかもしれない。どうやら、チャップマンはニューヨークで投げることを気に入っているらしい。ニューヨーク・デイリー・ニューズのマーク・フェインサンドはこうツイートしている。「チャップマンは、トレードによる放出はFAとして戻ることの妨げにはならないと言っている。“トレードされたとしても、喜んでカムバックして再びチームの一員になる”」
チャップマンの移籍先としては、シカゴ・カブスやワシントン・ナショナルズなどが有力視されている。