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名人挑戦権を争う藤井聡太竜王と斎藤慎太郎八段 A級4回戦、山場の一番始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月12日10時。愛知・名古屋将棋対局場において第81期A級順位戦4回戦▲斎藤慎太郎八段(2勝1敗)-△藤井聡太竜王(2勝1敗)戦が始まりました。

 今期A級すでに全勝者はおらず、混戦模様です。まだまだ先の長い戦いが続きますが、本局で勝った方が名人挑戦権争いで一歩先んじることに変わりはありません。

 藤井竜王と斎藤八段の過去の対戦成績は藤井4勝、斎藤3勝です。斎藤八段は藤井竜王、渡辺名人、永瀬王座、豊島九段に負け越していることについて、次のように語っています。

「そうした方たちに勝たないと先がないと思っています。それができなければもう、タイトルにからむことすら大変な時代になったので」「そうした状況を加速させているのは藤井さんの存在です。これまでも『もっと頑張らないと』とは思ってました。そこに藤井さんが現れたことでさらに壁が厚くなって『そんなにもう余裕はない』という危機感が出てきた。私は元来、かなりのんびりしている性格で、なんでも慎重なんです。焦らせてもらえるぐらいのほうがちょうどいいかもしれない」

(出典:『AERA』2022年10月3日号)

 藤井竜王は愛知県瀬戸市在住。本局は「ホーム」での対局です。斎藤八段は大阪府在住で「アウェイ」の立場となります。

 藤井竜王は9時37分、斎藤八段は42分に席に着きました。先後はあらかじめ決まっているため、振り駒はありません。

記録係「それでは時間になりましたので、斎藤先生の先手番でお願いします」

 10時、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間6時間の対局が始まりました。

 斎藤八段先手で、戦型は角換わりに進みました。これで8局の対戦のうち、7局は角換わりです。

 両者ともに腰掛銀に組んだあと、斎藤八段は中段に桂を跳んで動いていきました。

 41手目。斎藤八段は端9筋を突き捨てます。深い研究なくしては指せない順。これが用意の秘策でしょう。

 時間的にはまだ午前中。しかし藤井玉が三段目にひっぱりだされ、斎藤八段が馬(成角)を作る激しい進行となりました。

A級はこれから佳境

 昨日、名古屋対局場では▲広瀬章人八段-△稲葉陽八段戦がおこなわれました。広瀬八段は関東、稲葉八段は関西の所属。東西の棋士が名古屋でおちあって対戦という形式もあります。

 ▲広瀬-△稲葉戦は序盤の駆け引きの末に、広瀬八段が矢倉、稲葉八段が右玉に組みました。力のこもった息の長い中盤戦が続き、広瀬八段が少しずつリードを広げて押し切りました。リーグ成績はこれで広瀬3勝1敗、稲葉2勝2敗です。

 竜王戦七番勝負では第1局で藤井竜王に勝ち、A級でも暫定トップに立っている広瀬八段。現在は充実のときを迎えているようです。

 本日は大阪・関西将棋会館において▲佐藤康光九段(0勝3敗)-△菅井竜也八段(2勝1敗)戦もおこなわれています。

 後手の菅井八段は三間飛車。対して居飛車の佐藤九段はクラシカルな急戦の構えを見せました。ここまでただ一人、白星のない佐藤九段。勝てば今期A級はさらに混戦の度合を増しそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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