日本の少子化対策30年を採点しよう
「子ども・子育て支援法等改正案」の国会審議が本格しています。同法案に関しては、私たちの負担がいくらになるのかにばかり注目が行きますが、そもそもこの少子化対策法案で少子化は反転するのでしょうか?
加藤鮎子こども政策担当大臣は、国会で「少子化は我が国が直面する最大の危機であり、2030年代に入るまでが、この少子化傾向を反転させるラストチャンスです。こども未来戦略の加速化プランに盛り込まれた施策を着実に実施するため、給付面と財政面の改革を一体的に行うものとして、この法律案を提出いたしました」と仰っておられますが、この少子化対策が具体的に出生数に与える政策効果を示されたことはありません。
【速報】児童手当拡充や月450円の支援金創設、少子化対策関連法案が衆議院で審議入り(TBS NEWS DIG 2024年4月2日(火))
と申しますか、日本の少子化対策が本格的に開始されたのは1990年のいわゆる1.57ショック(1990年に公表されたひとりの女性が生涯に生む子供数の理論値を示す合計特殊出生率が、それまでの最低値である丙午だった1966年の1.58をしたん割って1989年に1.57まで下がったことを指す)を契機とし、1994年に文部・厚生・労働・建設各大臣(当時)で合意され、1995年から実施された「子育て支援のための総合計画(通称エンゼルプラン)」を嚆矢としています。
エンゼルプラン以降、数多の少子化対策が実行されてきましたが、その政策効果が検証されたことは今まで一度もないのです。
そこで、本記事では、1994年のエンゼルプラン合意以降の30年にわたる政府の少子化対策の成績を勝手に確認してみたいと思います。
成績は下表の通りとなります。
出生数はこの30年間で48万人弱減少しています(合計特殊出生率で見ても低下)。この点だけを見ても、少子化には歯止めがかからず、もちろん反転もしていないのですから、控えめに言っても落第でしょう。しかもこの間、家族向け社会支出は2.2兆円から13.5兆円と6倍強にも増えているのですから、少子化対策の失敗は少子化対策につぎ込むお金の問題ではないともいえるでしょう。
しかし、岸田内閣は、効果があったかも不確かなこれまでの少子化対策の延長線上でしかない施策に、新たに3.6兆円(しかもそのうち1兆円は新規負担増)の財源を確保してまで資源を投入しようとしている訳ですが、果たしてそんな余裕は、わが国にはあるのでしょうか?
これまでの少子化対策の効果検証を行うこともなく、しかもこれまで少子化を推進してきた官僚や有識者が中心となって、岸田内閣の下、新たな少子化対策を企画立案し、実行したとしても少子化に歯止めがかかるとは筆者には到底思えませんが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?