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7・18三浦春馬さん一周忌を全国の「春友」さんたちはどう過ごしたのか

篠田博之月刊『創』編集長
テトラポットの見える海岸(切り絵・海扉アラジン)

7・18をめぐるアミューズの動きと母親のメッセージ

 三浦春馬ファンにとってはとても特別な日、一周忌の7月18日が過ぎた。昨年のその日、三浦春馬さんが突如亡くなったことに衝撃を受け、その喪失感からいまだに回復できないという「春友」さんたちにとっては、大きな1日だった。

 本当はその日、多くの悲しみに暮れる人たちと集い、春馬さんの遺影に手をあわせて献花するという「お別れ会」を望んでいた人が多い。そうしなければ心の空洞も埋まらず、ひとつの区切りもつかないというのが多くの人たちの思いだった。

 しかし、アミューズは、コロナ禍を理由に「お別れの会」は開催しないと発表。追悼サイトに特別な映像を公開するのでそれを見てほしいという要請を行った。

 7月18日、アミューズは追悼サイト内に特別の映像を公開した。1週間限定だったが、出演したドラマや映画などのシーンや、写真など、春馬さんの遺した作品が一望できる、なかなかすごい特設サイトだった。1週間でなく、ずっと見られるようにしてほしいという声がSNSなどにたくさんあがった。まだ辛くて見られないから今後も見られるような配慮をしてほしいという声もあった。

グリーフケアの一環、『創』の藍染めプロジェクト

 大切な人が亡くなった喪失感からの回復をめざす取り組みをグリーフワークというが、春馬ファンたちは「春友」という呼称でSNSで連携を強め、春馬さんの作品の再上映を求めるなど様々な試みを続けてきた。そうした活動の結果、『天外者』などの主演映画や、20年前に公開された『森の学校』など、多くの映画が各地で上映されることになった。三浦さんの地元・土浦で1月以降継続して春馬さんの映画を上映してきた土浦セントラルシネマズはファンたちの聖地にもなった。

 月刊『創』(つくる)はもう1年近く、春友さんたちの声を誌面化するなどしており、それらはグリーフケアと呼ばれている。特に今年の7・18へ向けて行った「藍染プロジェクト」は積極的な動きとなった。映画『天外者』に登場する藍染を何とか入手したいというファンの声は以前からあったのだが、販売はされていないため、それを徳島在住の「春友」さんが自分たちで作り、『創』が呼びかけて全国の春友さんに送るというプロジェクトだった。

藍染プロジェクトで送られたキセルと馬の抜染(筆者撮影)
藍染プロジェクトで送られたキセルと馬の抜染(筆者撮影)

 最初に発送したものは奇しくも7月18日に届いたようで、多くの春友さんたちがそれを見て感動したという。徳島で藍染を仕上げた女性たちは、包み紙まで凝ってしゃれたパッケージに仕上げたのだが、それを受け取って、もったいなくて開封せずに飾っているという人も多いようだ。

 ちなみに藍染当選者の発表は発送をもって代えさせていただいているが、メールがうまく届かずに当選者でまだ連絡がとれていない人が数人いる。編集部から電話をさしあげる予定なので対応をよろしくお願いしたい。

 8月6日発売の月刊『創』9月号の表紙は、春馬さんがサーフィンに通ったテトラポットのある海岸の切り絵だ。ここもいまや聖地となっているが、切り絵のもととなった写真は、春馬さんのサーフィンの師匠である卯都木睦さんの息子さんが撮影したものだ。

春馬クッキーや陶器など様々な試み

 実は『創』編集部には、そのほかにもいろいろな春馬グッズが送られてきている。ここに写真を掲載したのは、福岡市のお菓子屋さん特製の春馬クッキー。馬の形にクッキーを焼き上げたものだ。藍染を行った徳島のお二人に、お礼のために焼いて贈ろうとなったもので、残念ながら非売品だ。馬のほかにキンキーブーツのクッキーもある。

馬のクッキー(福岡の洋菓子店の春友さんより)筆者撮影
馬のクッキー(福岡の洋菓子店の春友さんより)筆者撮影

キンキーブーツのクッキー(福岡の春友さんが焼いたもの)筆者撮影
キンキーブーツのクッキー(福岡の春友さんが焼いたもの)筆者撮影

 福岡のその女性は、『創』編集部にも馬のクッキーを贈ってくれた。長旅ゆえに7枚のクッキーのうち何頭かの馬は脚を骨折していたが、とてもおいしいお菓子だった。

春友さんが焼いたキセルの陶器(作者撮影)
春友さんが焼いたキセルの陶器(作者撮影)

 また京都の春友さんからは、「天外者」に出てくるキセルを陶器に描いたものを送ってきた。全国の春友さんたちがネットを通じていまやいろいろな結びつきを強めているのだ。

 近々の春友さんたちの取り組みといえば、三浦春馬さんが出演する「映画 太陽の子」が6日から全国公開されるのを観に行くことだろう。『創』9月号も監督インタビューを掲載するなど大きな取り組みをしているが、この映画の反響も楽しみだ。

 その『創』9月号には、各地の春友さんたちから届いた「7・18をどう過ごしたか」という投稿を掲載した。たくさんの投稿のうち、ここでその中から3つほど紹介しよう。

 約1年にわたって読者投稿を特集してきて気づくのは、最初はただ衝撃を受けて立ち直れず号泣するばかりだった春友さんたちが、少しずつ前を向いて歩きだそうとし始めたことだ。ここで紹介する以外にもたくさんの投稿を掲載している『創』9月号の現物を見て、この1年間の経緯を振り返ってほしいと思う。

7月18日はこれからもずっとずっと特別な日だ

●7月18日。

 その日は朝から真っ青な青空だった。一年前のその日はまるで悲しみの涙のような雨模様の曇天だった。今日のこの日を少しでもみんなが明るく迎えられるように春馬さんが晴天を起こしてくれたと思った。

 今年は全国的に梅雨明けが早く、きっとたくさんの春友さんもこの青空を見上げて一日を始めてるよね、凄いね、春馬くんは究極の晴れ男になったんだねと空の春馬くんに声をかけた。

 今日は泣かないし、気分が落ちる事はしない一日と決めていた。しんみりするよりもテンション上げなきゃ。そんな気持ちで朝からファイトフォーユアハートをながし続けた。[ハァーアー]から始まる春馬くんの美声とアップテンポな曲調、テンション上げ上げモードで過ごしたら命日だなんて思えなかった。「いいよね、それで」と笑顔の[フォト春馬]に声をかけた。彼はいつでも飛びっきりのキラースマイルで迎えてくれる。

 午後いちで、スクリーンの春馬くんに会いに行った。あちこちの劇場でも特別上映会があったけれど私が選んだのは[五右衛門ロックⅢ]。そう、キラッキラの明智心九郎様に会いに。3時間ほどの上映で春馬くんが出ずっぱり。ああ何と幸せな時間だろう。「演じるのが楽しくってしょうがない」って感じの春馬くんが歌って踊る姿にひたすら見とれる。

 ハチャメチャな位楽しい作品が見たかった。いつもエンドロールに三浦春馬の字が流れてくると涙も流れてくるという、あの条件反射も起こさず「楽しかったよ、ありがとうね、春馬くん!」と思いながら劇場を後にした。

 7月18日はこれからもずっとずっと特別な日だ。忘れられない忘れさせない日、三浦春馬が永遠に心に生き続ける事になった、そのスタートの日。だから泣いて始めちゃいけないって私は心に決めて過ごした。

 夜になるとさすがに上げ上げモードでもいられなくなったけど、思ってたより普通に過ごせた。アミューズの追悼サイトを見たらさすがに「泣かない一日」は崩れちゃったけど、前みたいにボロボロ涙腺崩壊じゃなくて、「アミューズさんありがとう、春馬くん頑張ったね、お疲れ様、ありがとうね」って感じながらサイトを閉じて、18日という日は静かに過ぎ、心穏やかに終わった。

(神奈川県  匿名   60代)

夜は和蝋燭を灯し、春馬君好物の日本酒を

●7月18日。一周忌のこの日は、春友の彼女と車で彼の故郷巡りをしようかと話していましたが、高齢でもあり、車での遠出は断念しました。でも近隣の映画館で「森の学校」が上映されるとのニュースが入り、孫たちを連れて行こうということになりました。

 18日はちょうど孫たちも都合よく、我が娘、春友の彼女(我が娘の姑)と5人でで かけました。昭和10年頃の生活環境、便利な物は何も無い時代の子供達の様子を11歳の春馬君は生き生きと演じ、すでに、名優になる片鱗を見せていました。孫たちもわからないまでも、家族の温かさ、友人を大切にする心などは伝わったようでした。

 上映が終わりますと、いつものように拍手が起こり、どなたかが、黙祷しませんか、と声を掛けてくださり参加者全員で黙祷をいたしました。

 夜は和蝋燭を灯し、彼が好物だった日本酒を献じ、一緒に呑みました。

 春馬君がこの世に居ないということは口惜しく、残念でなりませんが、春馬君の笑顔に元気をもらいながら、心強い大勢の春友さん達の活動の一助になれれば嬉しいです。

 目下の願いは、「キンキーブーツ」の映像化です。

 彼への献句

春馬忌の夏うぐいすは鳴きやまず

     (川崎市 yocco 79歳)

7月18日は映画を観て号泣しました

●7月18日は一人で過ごすことが辛いので、ドリパスで『森の学校』『アイネクライネナハトムジーク』『真夜中の五分前』の3本の映画を映画館を移動して観ました。

 特に『森の学校』で春馬君が、ご苦労様、ありがとう。って叫ぶシーンが何度観ても切なくて号泣しました。

 たくさんの春友さんと映画が観れて、春馬君を感じられて幸せな時間を持つことができました。

 帰宅後は春馬ローラを感じたくて、CDや公開されている映像をできる限り観ました。

 この1年でキンキーブーツCDを何百回と聴き、キンキーブーツ〔映画〕キンキーブーツ〔ミュージカル〕共に何度も映画館で観て春馬ローラを重ね合わせて涙してきました。

 でも重ねきれないんです。

 春馬ローラを映画館で観たい。春馬君が命をかけて演じたローラが観たい。どうしても観たい。そして沢山の人に観てもらいたい。円盤化もして欲しい。

 それを願って願って…そして…三浦春馬記念館も作って欲しい。ファンクラブを作って会費と入館料で維持できないかな〜

 いくらでも払うから〜。なんて夢みたいなことも考えて18日が過ぎました。

 たくさん涙が出たけど、きっと春馬君は空になってみんなを見守ってくれてると思うことができた1日でもありました。

(大阪府  ボス  56歳)

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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