なぜ中国人は日本の雪にあこがれる?春節の日本旅行でやってみたい意外なこと
2月5日は中国の春節(旧正月)。中国の大手旅行会社シートリップの調べでは、この大型連休中に日本を訪れる中国人観光客は700万人にも上るという。彼らの行き先は、かつてに比べて分散化、多様化しているが、2018年頃からホットなレジャーとして急浮上しているのがスキーだ。
スキー人気の理由としては、1、中国で2022年に北京冬季オリンピックが開催される予定で、ウインタースポーツの中でも、とくにスキーが注目されているから、2、まだやったことのないスポーツなので体験してみたいから、3、「爆買い」ではない新しい体験型の観光をしてみたいから、などが挙げられる。
だが、彼らがスキーに魅力を感じる背景には、潜在的に「日本の雪」へのあこがれもあるのでは、と感じる。それは、これまでに取材した中国人旅行者たちのこんな生の声があるからだ。
「北海道の雪は真っ白で、ふわっふわ。パウダースノーっていわれているそうですね。こんな真綿のような白い雪は中国では見たことがありませんよ。一面の銀世界ってこれだったんですね!」
こう語るのは上海から北海道にスキー体験にやってきた20代の女性だ。上海でも冬になれば多少は雪が降るが、東京とほとんど同じくらいであまり積もることはない。なので、これまでの人生で「雪だるま」を作った経験もないという。日本人でも必ずしもみんなが作っているわけではないが、その女性は北海道のふわっふわの雪で雪だるまを作ることがかねてからの夢で、スキー体験は「ついでの思い出づくり」だったと打ち明ける。
「スキーもおもしろいことはおもしろいですけど、これまで一生懸命スポーツをやってきた経験がないので、どちらかというとスキーはファッションの一部。それよりも、雪だるまを作ったり、ソリに乗ったり、雪合戦をすることのほうが第一の目的。そういうことをした経験のある中国人は、実はまだかなり少ないと思います。日本の美しくて白い雪を背景に、かわいいスキーウエアを着て写真を撮り、それをウィーチャット(中国のSNS)に投稿したい。それを実現するだけで、今のところは大満足です」(同女性)
ほぼ雪が降らない南の広東省・広州からやってきた30代の女性も同じく「“日本の雪”へのあこがれ」を熱く語るひとりだ。
「南でも冬になると意外に寒いのですが、雪はあまり降りません。だから、雪を見るだけでとても興奮します。中国国内でも北の黒竜江省や吉林省に行けば雪が降りますし、テレビでも見たことがありますが、中国の雪は、PM2・5などの影響でちょっと薄汚れているように思うんです。雪が降ったあと、クルマが通ると茶色くなって汚いこともありますね。それに中国の北方は、真冬はマイナス20度か、それ以下になりますから、寒すぎて凍えます。だから、中国では、あまり雪のある場所に行きたいとは思わなかったんです」
「でも、日本のスキー場はそこまで寒くないですし、雪が白くて中国とは雪の質も違うと感じます。雪があるところには、たいてい温泉もある。誰も足を踏み入れていない広いところなら、雪を口に入れて食べられそう!そんなことも、日本旅行で“挑戦”してみたいことのひとつです」
SNSの影響で、中国でも日本の情報をリアルタイムで入手できるようになった。テレビやドラマの影響もあり、「混浴」や「雪見酒」「かまくら」などの単語を知っていたり、理解している中国人も多い。とくに人気があるのは、岐阜県白川郷の合掌造りの家が雪に覆われた映像などだ。中国人の脳裏には「日本ならではの美しい風景」のひとつとして強く印象に残っており、あこがれの対象となっているからだ。
「一見、同じように見える雪景色なんですが、中国と日本では雪とセットで見る風景がまったく異なるんです。白川郷のような特別な観光地はもちろんのこと、札幌の時計台とか、金沢の兼六園とか、雪があると映えて、そこで写真を撮れば、中国人にも『あ、日本にいるんですね』とすぐにわかってもらえる。だからこそ、日本の雪にあこがれるんです」(広州の女性)。
今年の春節休暇は2月4日~10日までだが、春節のハイシーズンをあえて避けて来日する中国人観光客もまだまだ多い。日本人にとってはありきたりの風景こそが、彼らにとっては観光の魅力のひとつになっていることに、もっと日本人は気づくべきだろう。