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田中将大を一発勝負の「ワイルドカード・ゲーム」に先発させるには? 次回登板は9月30日がベスト

宇根夏樹ベースボール・ライター
田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)SEPTEMBER 13, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

9月23日、ニューヨーク・ヤンキースは地区首位のトロント・ブルージェイズに敗れ、その差は3.5ゲームに開いた。両チームの直接対決はすべて終わり、ブルージェイズが残り10試合で5勝5敗だったとしても、ヤンキースは残り11試合で9勝しなければ追いつけない。一方、ヤンキースはワイルドカード・レースではトップを走り、2番手のヒューストン・アストロズに4.0ゲーム差、3番手のミネソタ・ツインズには5.0ゲーム差をつけている。ヤンキースの残り11試合に、アストロズ、ツインズとの対戦はない。

よほどのことが起きない限り、ヤンキースがポストシーズン(プレーオフ)を勝ち進んでいくためには、まず、ワイルドカードの2チームが対戦する「ワイルドカード・ゲーム」に勝つ必要がある。2012年から始まったワイルドカード・ゲームは、1試合限りの一発勝負だ。ここで敗れれば、ポストシーズンから姿を消す。

ピッツバーグ・パイレーツは昨年、ゲリット・コールが先発登板したレギュラーシーズン157試合目にポストシーズン出場を決め、そこからローテーションを調整することなく、最終戦にもコールを投げさせた。そして、3日後のワイルドカード・ゲームではエディンソン・ボルケス(現カンザスシティ・ロイヤルズ)を先発させ、サンフランシスコ・ジャイアンツに敗れた。

この時、パイレーツが最終戦でシンシナティ・レッズに勝ち、セントルイス・カーディナルスがアリゾナ・ダイヤモンドバックスに敗れれば、パイレーツとカーディナルスはナ・リーグ中地区の首位に並んでいた。また、当時のコールはまだ現在のようなエースではなく、シーズン防御率はボルケスの方が良かった。

ただ、カーディナルスは最終戦に勝利を収め、パイレーツの勝敗に関係なく、地区優勝を決めた。さらに、打者を圧倒する力とコントロールは、コールがボルケスを上回っていた。ボルケスの奪三振率6.54と与四球率3.32に対し、コールは9.00と2.61だった。

ワイルドカード・ゲームで、パイレーツがマディソン・バンガーナー(ジャイアンツ)に完封されたことを思えば、どちらが投げていても同じ結果だったかもしれないが、コールであればと思ったのは私だけではない。ピッツバーグ・トリビューン紙のボブ・ビアテンプルは、パイレーツがポストシーズン出場を決める1週間以上前に「ワイルドカード・ゲームでは、コールをコールすべき」と書いている。先発投手としてコールの名前をコールする(告げる)すべきということだ。

さて、ヤンキースはワイルドカード・ゲームの先発マウンドに誰を立てるのか。誰を投げさせるべきなのか。

右太腿裏の状態さえ万全であれば、田中将大だろう。

マイケル・ピネイダとルイス・セベリーノの2人は、直近3先発の防御率が4点を超えている。また、セベリーノは8月にメジャーデビューしたばかりだ。CC・サバシアは直近3先発で防御率1.04と奪三振率9.35を記録していて、これらはわずかながら田中を凌ぐが、サバシアの投球回は田中より3.2イニング少なく、与四球は7も多い。

何より、シーズンを通した安定感において、サバシア(とピネイダ)は田中に遠く及ばない。例えば、サバシア(とピネイダ)は自責点5以上の登板が6度、自責点4以上は10度以上あるのに対し、田中は前者が2度、後者も5度に過ぎない。3人のなかでは田中の23先発が最も少ないが、ピネイダとは1先発しか違わず、サバシアも4先発多いだけだ。

他にも先発投手はいるものの、ネイサン・イオバルディは肘の炎症によって9月5日を最後に投げておらず、レギュラーシーズンが終わるまでに復帰できるのかすら危ぶまれる。イオバルディが故障しなければ、アダム・ウォーレンはリリーバーのままだったはずだ。田中に代わって9月23日に先発したイバン・ノバは、6回途中に降板するまで得点を許さなかったが、その前は7先発続けて3点以上を失い、9月半ばにローテーションから外されていた。

10月6日のワイルドカード・ゲームに田中を先発させるためには、以下のようなローテーションが考えられる。

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9月24日~9月26日のピネイダ、サバシア、ウォーレンは、ほぼ決まっている。田中が9月27日のシカゴ・ホワイトソックス戦か28日のボストン・レッドソックス戦に先発することもあり得るが、その場合はワイルドカード・ゲームまでの登板間隔が「シナリオ1」の中6日よりも長くなる。中6日ならまだしも、中7日や中8日では少し空きすぎだろう。また、「シナリオ1」もそうだが、田中がレギュラーシーズンにあと2先発すると(例えば9月27日と10月2日)、ワイルドカード・ゲームまでは中3日以下となってしまう。

一方、田中が9月30日のレッドソックス戦に投げれば、ワイルドカード・ゲームは中5日だ。10月1日の同カードの場合、中4日となる。よりベストなのは、前者の「シナリオ2」だ。こちらなら、10月5日にワンゲーム・プレーオフを行う必要が出てきても、計算上は(あるいはそれを睨みつつ調整させておけば)、中4日で田中をそこに立てられる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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