釜山映画祭レポ(その1)イキのいい韓国映画を今年も先取り【イケメン20代編】
今月初め、毎年恒例の釜山映画祭に行ってまいりましたー。前日から前ノリするマジメなライターさんたちを尻目に、いつも通り初日に釜山入りしてレッドカーペットと開会式を冷やかし、美味いもん食って……なーんてのんきに思ってたら、釜山を直撃した台風のせいで飛行機が大邱(釜山から車で1時間半…)に到着という大アクシデントがー!!(なんと同じ飛行機にはジブリの鈴木さんも!)なので残念ながら開会式のレポはないんですけど、これから日本で公開しそうな映画はたくさん見てきましたから、そこらへんをレポいたしましょう。まず初回の今日は【イケメン20代編】!(【イケメン30~40代編】【演技派オヤジ編】【個性派監督遍】と続く予定ですー)まずは今の韓国を席巻しているユ・アインからいってみましょう。
●韓国の観客動員記録を更新した大ヒット作『ベテラン』
破りなベテラン刑事の活躍を描く『ベテラン』は、昨年の『国際市場で会いましょう』の観客動員記録を塗り替えた大ヒット作。ユ・アインは、ファン・ジョンミン(『国際市場で会いましょう』『新しき世界』)演じる主人公の刑事を叩き潰さんとする、極悪の財閥御曹司をこれ以上ないくらいに憎々しく演じています。
以前、彼に取材したことがあるんですが、韓国によくいる「品行方正な二枚目俳優」とは全然違う、なんというか、自由で遊び心のあるタイプなんですよね。特にこの役はドラッグに暴力に強烈な女性蔑視まである、キレやすい残虐な男の役。彼はただの二枚目俳優で終わる気はないんだなー、と思わせる1本です。
監督は『ベルリン・ファイル』のリュ・スンワンで、殴り合いからカーチェイスまでアクションの見どころもたっぷりなんですが、『ベルリン』の苦味あるシリアス路線から一変、コミカルでスカッとできる勧善懲悪ものの仕上がり。70年代あたりの劇画風な、コテコテの音楽とかエンドロールものりのりですっごく楽しい。
釜山映画祭では、まさに公開中の主演作「思悼(サド)――8日間の記憶」のプロモーションも含めて、ユ・アインは様々なイベントに登場していました。ちなみに「思悼」とは李朝21代世宗の息子で、22代正祖(ドラマ「イ・サン」のイ・サン)のお父さん。
彼を疎んで死に追いやる父親役を演じるのは、映画祭の開会式で司会を務めたソン・ガンホで、10月3日の海岸の野外ステージでのイベントには二人揃って登場。こちらの作品も観客動員1000万人越えが見えてきたようです。放映中のドラマ「六龍が飛ぶ」では、後に李朝3代国王太宗となるイ・バンウォンを好演中。これが終わったら、来年は早々には兵役かなーって感じのスパートをかけとります。
●キム・ウビン&2PMジュノ主演『20歳』
シン・ミナの恋人として知られるキム・ウビンと、野獣アイドル2PMのイ・ジュノ、演劇畑のカン・ハヌルが演じる青春映画『20歳』は、勢いだけの3人組が爆笑に次ぐ爆笑で、かなり気に入りました。
韓国の宣伝惹句で「一番恥ずかしい時代を共にした」とあるんですけど、ホントにその通りで、友達が女をベッドに連れ込む様をクローゼットからのぞき見してたら興奮のあまり飛び出してもうたとか、飲み会でべろんべろんに酔って吐きまくったこと自分だけが覚えてないとか、誰もが身に覚えのあるバカバカしい若気の至りがてんこ盛り。人生の厳しさが垣間見える瞬間にも、「20歳が突っ走らないでどうする!」と飛び込んでいく3人が、アホらしくも爽快で不覚ながら感動的だったりもします。
特にキム・ウビン演じる「モテるだけ」のチホは、カッコよさと底抜けのアホさのバランスが絶妙。鍛え上げた身体もきっちり見せてくれて、ファンならずとも大満足でしょう。
2PMのジュノは、3人の中で一人だけやけに貧乏な「夢だけ」のトンウを演じていますが、こちらも哀愁を感じさせるなかなかの演技。トンウが好きで付きまとう友達の妹ソヒとのやりとりなんか、キュンとする女子も多いんじゃないかなー。
会期中の最初の週末は、若手の3人は舞台挨拶にイベントにと大忙しで、どこにいっても真っ黄色な声援を浴びておりました。若いアイドルが飛び回ってこそ、映画祭も盛り上がるってものです。
●ジス&EXOスホの『グローリーデイ』
こちらは『20歳』のB面のような作品。20歳になったばかりの4人を主人公に、ある夜の事件を境に引き裂かれてしまう友情を描いた苦い青春ドラマです。海兵隊に入ることを決めたスホ演じるサンウを送るための1泊2日の旅で、サンウは事故に遭い意識不明に、それ以外の3人は殺人の容疑をかけられて窮地に陥ります。そして意識不明なのをいいことに、その罪をサンウにかぶせてしまおうと言い出すものが出てきて……。
ほとんど新人と言っていい20代前半の4人が演じる20歳は、まだ子供っぽさも残ってなんともフレッシュ(『20歳』の連中もそこまで年上じゃないけど、25歳超えると一気に少年感がなくなるのはなんでかなー?)。特にあくまで友達を守ろうとするリーダー格を演じたジスと、悲劇的な事故に遭うサンウを演じたEXOスホが魅力的です。
ジスは186cmと長身で存在感に骨っぽさもあり、もう少し年を重ねて線の細さが無くなれば、ひとりで主役を張れる俳優になるのではないでしょうか。
おばあちゃんと二人暮らしの優しい貧乏少年を演じるスホは、リアルな育ちの良さからくるピュアさに泣かされます。そしてさすがの顔立ちの良さ!俳優としてはまだまだ未知数ですが、これからの活躍が期待できるのではないでしょうか!
この作品は韓国ですでに公開された作品ではなく、映画祭で初公開された作品でしたから、チケットもあっという間に売り切れてしまったようです。野外ステージでのイベントも大盛況!今年は中国からの観光客がすごく多かったのですが、スホ目当ての人もすごーく多かったように思います。日本での公開は未定ですが、限定公開で買う配給会社がありそうな気がする!と希望的観測!
ということで今回はこのあたりで。次回【20~30代イケメン編】もお楽しみに~。
(C) 2015 Busan International Film Festival