「ゴーン氏の親戚だった」 逃亡手助けの米国人親子、その主張の重要な意味とは
カルロス・ゴーン氏の逃亡を手助けしたとして、犯人隠避罪で起訴された米国人親子。初公判で容疑を認める一方、弁護側は親子が「ゴーン氏の親戚だった」と主張した。これまでの報道では出てこなかった重要な事実だ。
「親族特例」あり
なぜこうした主張が示されたかというと、刑法が犯人隠避罪について「犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる」と規定しているからだ。これを「親族特例」と呼ぶ。
刑の免除は有罪判決の一種だし、「免除する」ではなく「免除することができる」という規定だから、あくまで裁判官にその判断が委ねられている。
それでも、もしこの規定が適用されたら、刑に服する必要がなくなる。たとえ裁判官がこの規定を適用しなかった場合でも、少なくとも情状面では考慮されるだろう。
「親族」の範囲は意外と広い
ただし、問題となるのは「親族」の範囲だ。民法の規定により定義され、「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」が該当する。「血族」とは養子縁組を含め法的な血縁関係にある間柄を意味し、「姻族」とは配偶者の血族と血族の配偶者のことだ。
読者も自らの家系図を書いてみたら分かると思うが、6親等の血族や3親等の姻族まで含めると、ほとんど顔を見たことがない人など、かなり広範にわたるはずだ。
それこそ、ゴーン氏の配偶者であるキャロル夫人だと、正面からこの親族特例の適用が問題となる。その意味で、米国人親子とゴーン氏が具体的にどの程度の関係だったのかが重要だ。弁護側が何らかの公的資料に基づいて立証するのではないか。
犯人隠避罪は最高でも懲役3年。情状次第で執行猶予すらあり得る。早期に裁判を終わらせ、執行猶予を得るとともに米国への強制送還を狙うといった戦略がうかがえる。(了)