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「ゴーン氏の親戚だった」 逃亡手助けの米国人親子、その主張の重要な意味とは

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:ロイター/アフロ)

 カルロス・ゴーン氏の逃亡を手助けしたとして、犯人隠避罪で起訴された米国人親子。初公判で容疑を認める一方、弁護側は親子が「ゴーン氏の親戚だった」と主張した。これまでの報道では出てこなかった重要な事実だ。

「親族特例」あり

 なぜこうした主張が示されたかというと、刑法が犯人隠避罪について「犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる」と規定しているからだ。これを「親族特例」と呼ぶ。

 刑の免除は有罪判決の一種だし、「免除する」ではなく「免除することができる」という規定だから、あくまで裁判官にその判断が委ねられている。

 それでも、もしこの規定が適用されたら、刑に服する必要がなくなる。たとえ裁判官がこの規定を適用しなかった場合でも、少なくとも情状面では考慮されるだろう。

「親族」の範囲は意外と広い

 ただし、問題となるのは「親族」の範囲だ。民法の規定により定義され、「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」が該当する。「血族」とは養子縁組を含め法的な血縁関係にある間柄を意味し、「姻族」とは配偶者の血族と血族の配偶者のことだ。

 読者も自らの家系図を書いてみたら分かると思うが、6親等の血族や3親等の姻族まで含めると、ほとんど顔を見たことがない人など、かなり広範にわたるはずだ。

 それこそ、ゴーン氏の配偶者であるキャロル夫人だと、正面からこの親族特例の適用が問題となる。その意味で、米国人親子とゴーン氏が具体的にどの程度の関係だったのかが重要だ。弁護側が何らかの公的資料に基づいて立証するのではないか。

 犯人隠避罪は最高でも懲役3年。情状次第で執行猶予すらあり得る。早期に裁判を終わらせ、執行猶予を得るとともに米国への強制送還を狙うといった戦略がうかがえる。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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