地元からは「なぜ全国的に報道されない?」の声 静岡・山間部からのSOS 道路崩落、住宅倒壊の危機
台風15号による災害から1週間が経過。大規模な断水に見舞われた静岡市清水区では、1日時点で約5万5千戸で断水が解消。自衛隊による取水口の復旧工事も進み、全戸での解消も視野に入ってきた。
一方で、窮状の真っ只中にある地域もある。支援を待つのが、同じ清水区でも山間部の地域の住民たちだ。
JR清水駅から北に6.5キロ。車でわずか15分ほど走り高速道路のジャンクションをくぐってさらに進むと山間の地域に入る。
庵原川(いはらがわ)水系の2級河川、山切川(やまきりがわ)。台風の影響で24日未明に氾濫。川の左岸が削られて市道の2か所で道路が崩落。現在も通行止めが続いている。車が通行できる唯一の道が崩落してしまい10戸が孤立した。
住民によると、深夜2時過ぎから3時半ごろにかけて川が一気に増水し、濁流が岸を壊し、アスファルトが次々と崩落していった。雷や雨がひどく、住民の中には近所の人に起こされるまで異変に気が付かなかったという声も多数聞かれた。
道路のアスファルトが次々と崩落していく様子はこちらに記録が残っている。
そうした中、住民の皆さんは暮らしを維持するため、かろうじて岸の端に残された細い道を頼りに食糧や水の調達などを徒歩で凌いできた。
お年寄りが20キロ近くある水を運ぶのも一苦労だった。通行ができるその道も、よく見てみるとアスファルトの下が空洞になっている箇所もあり安全とは言い難い。
さらに、住宅倒壊の危機も迫っている。
崩落した箇所のすぐそばには戸建の住宅が並んでいる。破壊され剥き出しになった岸の土を、現在も川の水が侵食して削り出してしまっている。
先週29日、孤立した集落に両親の実家があるという千恵美さんから、SNSで繋がった清水区の住民を経由してLINEにメッセージが送られてきた。
『道路の早期復旧を望んでいますが、復旧には相当な時間がかかるだろうな、と割り切っている自分もいます。私と同じように近隣の惨状をツイートされてる方も多くいらっしゃるのに、なかなか目にとめてもらえていないのではないか、と、疎外感を感じ始めていました。生活道路がこんなに崩落して困っている地区もあることを知って欲しい」と思い、今回、友人知人に情報発信の協力をお願いしました』と、書かれていた。
すぐに連絡をとりリモートで千恵美さんの話を聞いた。
マスメディアによる報道はほとんど見当たらず、姉妹でSNSを頼りに情報発信を続け窮状を訴えてきた。
行政による対応も後手に回り、災害からまる5日が経った29日に初めて重機が2台現場に投入され、河川修繕のための基礎工事に着手しようとしていた。
現場でその他の住民の皆さんにお話を聞くと、行政サイドからの今後の見通しや危険が伴う歩道の取り扱いなど、住民が必要としている説明は、取材時点まで一切無いと憤っていた。
学校に通う子どもたちへも影響を与えている。
通学に使うスクールバスの通り道になっていたこの道。現在はバスの通行ができない。子どもたちは断水の影響もあり、災害発生以降、自宅での勉強を続けてきた。道路の復旧見通しが伝わってこないため不安も少なくない。
千恵美さんの父親は、孤立した集落の中で商売を営んできた。
道路の崩落によって車が使えず、生業を休まざるを得ない状況に追い込まれている。山梨や伊豆など、期日を迎えた完成品の納品が行えないからだ。
千恵美さんの父親によると、川の氾濫による影響は、山切地区に止まらないと話していた。近くを流れる庵原川を訪ねてみると、やはり大きな被害が出ていることにようやく気がつくことができた。
基礎の一部が剥き出しになってしまっている住宅を訪ねてみると、お年寄り夫婦がそのまま住み続けていた。既に地元の議員などが視察に訪れ、河川の復旧工事や住宅の基礎部分への応急措置を早期に行うよう業者に掛け合ったりしたという。
現場で作業を続ける工事関係者に話を聞くと、今行っている工事はまずは流れる川の水を堰き止め、侵食を止める下準備の段階に過ぎないと話していた。
次の雨に備え一刻も早く作業を前に進める必要があることには変わりない。
報道されていないが大きな被害を受けた地域はまだ他にもある。連絡をくれた千恵美さんは、現場で率直な思いを語ってくれた。
「山間部に対しての情報がないということが一番、そこが切ないなっていう部分があります。今後の対策に繋がればと思い、皆さんに実態を知っていただきたいと思っています。早期復旧を望んでいるのは間違いないのですが、そもそも、情報発信に関して、特にお年寄りはSNSはそれほど使えないのでやはり、(テレビやラジオなど)メディアを通していろんな情報を伝えてほしいです」
ぜひ、今回の映像リポートも見てもらえたら。