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MLBオースター・ゲームのファン投票がスタート。候補に載っていない選手のライト・イン選出はあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター

4月25日、オールスター・ゲームのファン投票が始まった。2014年はミネソタ・ツインズの本拠地ターゲット・フィールドを舞台として、7月15日に試合が行われる。

ファン投票で選ぶことができるのは、ナ・リーグは捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手を1人ずつと外野手3人で、ア・リーグはそれにDHが加わる。球場で配布される投票用紙とオンラインの投票ページには、ポジションごとに各球団の選手が1人ずつ(外野手は3人)記されている。さらに、WRITE-IN(ライト・イン=書き込み)の枠もあり、候補に挙がっていない選手に投票することもできる。

過去、ライト・インによって選出を果たした選手は2人いる。1970年のリコ・カーティ(アトランタ・ブレーブス)と1974年のスティーブ・ガービー(ロサンゼルス・ドジャース)だ。

1970年の投票用紙に載っていたナ・リーグの外野手は18人。当時は12球団だったので、1球団につき1.5人の計算となる。ブレーブスにはハンク・アーロンがいたため、カーティは候補から漏れたのだろう。オールスター・ゲームでスターティング・ラインナップに名を連ねた外野手は、ウィリー・メイズ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)、アーロン、カーティの3人だった。なお、カーティはこの年に首位打者を獲得した。

ガービーの場合、1972年までは主に三塁を守っていて、1973年の途中からビル・バックナーに代わって一塁を守る機会が増えたものの、規定打席には達したことがなかった。1974年の開幕戦もバックナーが一塁手として出場し、ガービーの出番はなかった。ガービーにとって、1974年はブレイク・イヤーだった。一塁に定着し、リーグMVPに輝いた(バックナーは主にレフトを守った)。1981年まで続いた不動の内野陣、ガービー、デービー・ロープス、ビル・ラッセル、ロン・セイのカルテットは、この年から本格的に幕を開けた。

今後、カーティとガービーに続く3人目のライト・イン選出はあるのだろうか。

現在はオンライン投票ができる。投票用紙に書き込むよりも手間は少ない。特定の選手への投票を呼びかける球団もある。2013年はドジャースのキャンペーンが目を惹いた。ヤシエル・プイーグを推すためにドジャースがCMに起用したのは、他ならぬガービーだった。

このCMでは、シャンパンのグラスを手に寛ぐガービーが、テレビでプイーグのプレーを観た途端、グラスを捨ててオールスター・ゲームの投票用紙(なぜか何枚も置いてある)に次々とプイーグの名前を書き始める。ガービーが目にしたのは、プイーグが6月3日のデビュー戦で演じたプレーだ。1点リードの9回表1死一塁、ライトを守っていたプイーグはウォーニング・ゾーンでフライを捕ると、そこからダイレクトに一塁へ投げ、走者を刺して試合を終わらせた。

プイーグの得票は84万2915票に達した。これはライト・インでは2007年以降の7年間で最も多かった(2006年にピッツバーグ・パイレーツのフレディ・サンチェスが85万6685票を得ている)。だが、デビュー時期からすると実質的な投票期間は通常の半分弱だったとはいえ、プイーグの得票はナ・リーグ外野手3位の3分の1にも満たず、15位にすら入れなかった。

ドジャースという人気球団にいて、「プイーグ・マニア」なるファンを生み出した選手でさえこうなのだから、ライト・イン選出のハードルは極めて高い。MLB公式ページのオンライン投票には、25回までという制限もかけられている(ログインすれば、さらに10回の投票ができる)。

投票システムの裏をかくことも難しそうだ。ライト・インではないが、1999年にはコンピューター・プログラマーがプログラムを作成し、ボストン・レッドソックスの選手に膨大な量の票を投じた。ノマー・ガルシアパーラへの票は4万近かった。けれども、この行為は発覚して無効票となった。

ちなみに、2006年のサンチェスは監督推薦を受け、オールスター・ゲームに出場した。1999年のガルシアパーラは無効票を含めずに108万9974票を集め、2万446票差でニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターを抑え、ファン投票による選出を果たした(繰り返すが、ガルシアパーラはライト・インではない)。オールスター・ゲームの開催地は、2006年がパイレーツの本拠地PNCパーク、1999年はレッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークだった。

2013年のプイーグはファイナル投票の候補5人に入ったが、ブレーブスのフレディ・フリーマンに次ぐ得票2位に終わり、オールスター・ゲーム選出は叶わなかった(この年はニューヨーク・メッツの本拠地シティ・パークで開催)。2014年の投票用紙に載っているドジャースの外野手は、マット・ケンプ、アンドレ・イーシアー、プイーグの3人だ。そこには、カール・クロフォードの名前がない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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