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6年1億4000万ドルの契約が満了する。チームメイトのおかげ(?)で4年連続の最多敗投手は免れる

宇根夏樹ベースボール・ライター
パトリック・コービン(ワシントン・ナショナルズ)Sep 26, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、パトリック・コービン(ワシントン・ナショナルズ)は、6年ぶりにFAとなる。ナショナルズと交わしている6年1億4000万ドルの契約は、2019年から2024年までだ。アウォード・ボーナスや繰り延べ払いはあるものの、2025年以降のオプションはついていない。

 契約1年目の2019年は、先発33登板で202.0イニングを投げ、防御率3.25を記録した。リーグ3位の93勝を挙げたナショナルズは、ワイルドカードの1番手としてポストシーズンに進み、モントリオール・エクスポズ時代も含め、初のワールドシリーズ優勝を飾った。

 だが、その後のコービンの防御率は、5シーズンとも4.65以上。2021年以降は、4シーズン続けて三桁の自責点を記録し、防御率は5.20を下回ったことがなかった。

 また、6シーズンのうち、14勝7敗の2019年以外は、白星の1.5倍以上の黒星を喫した。2020年が2勝7敗、2021年が9勝16敗、2022年が6勝19敗、2023年が10勝15敗、2024年は6勝13敗だ。

 2021~23年の黒星は、3シーズンとも、リーグ最多あるいは最多タイ。今シーズンの13敗も、ナショナルズが161試合を終えた時点では、リーグ最多タイだった。最後の162試合目に、チームメイトのジェイク・アービンが14敗目を喫した。

 ベースボール・リファレンスによると、ナ・リーグとア・リーグにおいて、4シーズン続けて黒星がリーグ最多の投手は、1958~61年のペドロ・ラモスと1977~80年のフィル・ニークロしかいないという。

 ちなみに、この4シーズンとも、ラモスは二桁勝利、ニークロは15勝以上を挙げた。1979年のニークロは、21勝20敗を記録し、同じシーズンに最多勝投手と最多敗投手になっている。

 ラモスとニークロと同様に、コービンも、低迷するチームで黒星を積み上げ続けた。ナショナルズは、ワールドシリーズ優勝の翌シーズンから、5シーズン続けて負け越している。今シーズンの勝率.438(71勝91敗)は、昨シーズンとまったく同じ。その前の3シーズンの勝率は、さらに低い。

 そのなかで、コービンは、怪我に見舞われることなく、ローテーションを守ってきた。

 短縮シーズンの2020年は、ナショナルズの60試合中11試合の先発マウンドに上がった。2021年以降の先発登板は、31試合、31試合、32試合、32試合だ。2019~24年の6シーズンに先発170登板は、アーロン・ノラ(フィラデルフィア・フィリーズ)の175登板とホゼ・ベリオス(現トロント・ブルージェイズ)の172登板に次ぐ。

 現在の年齢は35歳だ。今シーズンの32登板中、半数の16登板は、5イニング以上を投げて自責点3以下を記録した。来シーズンも投げるつもりなら、マイナーリーグ契約ではなく、メジャーリーグ契約を得ることができるような気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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