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ブランド若返りの鍵はSUV。超高級SUV、ベントレー・ベンテイガに乗る。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

ベントレー初のSUVであるベンテイガは昨年登場したモデル。お馴染みベントレーという雲上ブランドから送り出されたモデルだけに、超高級SUVといって良い存在である。実際に、その価格も2739万円となり、同価格帯にはレンジローバーの上級グレードくらいしか見当たらない。

今回試乗したモデルは、様々なオプションが装着されており、3000万円を遥かに超えるものとなる…まさに限られた人のための1台といって良い存在だが、興味深いのはこのベンテイガがベントレーのラインナップに加わったことで、ブランド自体に若返りの傾向が見られるようになったことだと、ベントレーモータースジャパン広報部の横倉氏は言う。

「ベントレーのユーザー層の平均年齢というのは、かつては60代でした。しかしこのベンテイガがラインナップに加わったことによって、アクティブなライフスタイルを持つユーザーの方にご購入いただくようになり、ブランド全体が若返ったのです。驚くことに、ベンテイガ・ユーザーの平均年齢は49歳と、一気に若返りました。もちろん、それまでにも”コンチネンタルGT”をラインナップしたことなどで若返りは図られていたのですが、今回のベンテイガでさらにブランドの裾野は広がったといえます」

理由はやはり、これまでベントレーにはラインナップされていなかったSUVである、ということが大きいという。SUVであることが、これまでベントレーと接点がなかったユーザーにアピールする要素になっているという。

「実際、去年は434台を販売しましたが、ベンテイガはそのうちの85台を占めています。しかもこれは約3ヶ月間だけの販売期間でのことです。今年は通年で、昨年の倍以上を予定していますので、かなりの割合でベンテイガが占めることになります。今後は様々なバリエーション展開等もしていく予定で、今年もブランドとして勝負していきます」

と、その見通しを語った。

ベンタイガに搭載されるエンジンは、6.0Lの排気量を持つW12ツインターボ・エンジンで、最高出力608ps、最大トルク900Nmを発生する。これをZF社製8速ATを介して4輪を駆動する。

内外装の豪華で超高品質な仕上げには、まさにため息が出るほど…であるが、実際に走らせた時の印象はさらにインパクトがある。詳しくは動画を参照いただくとして、まず走らせて感じるのは超高級サルーンに匹敵する快適性の高さだ。SUVでありながらも極めて優れた静粛性とビロードの上を歩くようなのり心地の良さを提供してくれる。後席で目をつぶれば、立派なショーファードリブンといっても良いだろう。

そうした超高級サルーンの快適性を持ちながらも、動力性能は圧巻。608ps/900Nmだけに、2tを遥かに超えるその巨体ながら全く重さを感じさせずにアクセルをわずかに開けるだけでスッと加速する。高速道路等ではスポーツカーも真っ青な加速を味わうことができる。

さらにハンドリングにも優れており、街中では極めて落ち着きのあるサルーンの振る舞いをする一方で、ワインディング等では電子制御のスタビライザー等が働いて、カーブでもほとんど車体の傾きを感じさせないような走りを実現してしまうのだ。

信号待ちからアクセルを踏んでクルマがスッと前へ進む感覚は、先日試乗した電気自動車のスーパーサルーンであるテスラ・モデルSにも匹敵する、滑らか静かでチカラ強い、が実現されていた。

そんな風にして考えると、もはやベンテイガのようなスーパーな性能を与えられるとそのボディ形状のSUVの枠には収まりきれない1台になると言っても良い。

これ1台で、超高級サルーンであり、超高級ワゴンであり、超高級クロスカントリービークルにもなり、超高級スーパースポーツカーにもなる。まさにそんな表現が相応しい、万能な1台である。

しかしながら、実際の形状はイマドキの主力であるSUV。従来のクルマ好きの価値観を持たない若者等にも受けるだろうし、アクティブライフを嗜む富裕層にも響くものがあるのだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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