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目を凝らすべきは、決勝進出を決めた「U−21」より「U−25」。日本サッカーの空洞化を心配する

杉山茂樹スポーツライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 9月7日と11日、A代表はチリ代表、コスタリカ代表とそれぞれ親善マッチを行う。森保ジャパンの船出である。しかし、森保監督はいまU−21を率いてアジア大会を戦っている。30日に行われるA代表のメンバー発表も、場所は現地インドネシアである。

 森保ジャパンが誕生したのは7月26日。しかし、8月14日にはU−21のアジア大会初戦を控えていたので、A代表監督としてJリーグをじっくり視察し、選手選考にあたる時間的な余裕などなかったに違いない。にもかかわらず新メンバーを選出し、試合に臨まなくてはならない。スケジュールに無理を感じずにはいられない。

 サッカー観を共有する腹心の部下をスタッフとして抱えているのであれば、仕事を分担し、留守を任せることができるが、森保ジャパンは、まだ監督が決まったにすぎない。スタッフは発表されていない。船出の準備が整わぬうちに、その時を迎えることになったという格好だ。よくそんな状態で代表監督を受けたなと不思議になるほど何も決まっていない。

 森保新監督は西野ジャパンではコーチ役を務めた。前代表メンバーの実情は、ロシアW杯の最終戦(ベルギー戦)から2ヶ月近く経過したとはいえ、ある程度、掴んでいるだろう。

 問題はその他だ。新メンバーとどう融合させるかだが、西野ジャパンは若手を切って戦った。直前に三竿健斗、井手口陽介、浅野拓磨を外したことに象徴されるが、結局、25歳以下で選出された選手は昌子源、大島僚太、遠藤航、植田直通に限られた。西野ジャパンは平均年齢で28歳を越えるベテラン重視のメンバーでロシアW杯に臨んだ。

 その一方で、いま森保監督のもとでアジア大会を戦っているのはU−21だ。2020年東京五輪に向け、このカテゴリーはいっそう強化されることになる。

 ベテランと新人。その陰にすっかり追いやられているのが21歳以上、25歳以下の選手だ。2022年カタールW杯で、30歳以下の中核を成す選手として期待される層であるにもかかわらず。「U−25」は、日本サッカーのウィークポイントになっている。

 U−21、すなわち20歳前後の選手が、主力選手として活躍するのは、年齢的に見て次回というより次々回のW杯だ。また、現在U−21に選ばれている選手でも、大成しない選手はいくらでもいる。将来、代表チーム入りする割合はせいぜい3、4人。将来が確定されていない、過度な期待を寄せるべきでない集団だ。

 その点、U−25は不確定要素が少ない。大きく化ける可能性は低いが、中化けはある。

 足りないのは経験だ。海外組の絶対数は少ない。海外組であっても、浅野、井手口は出場機会に恵まれていない。文字通り羽ばたいているのは中島翔哉ぐらいだろう。

 ベテランを重視したのはハリルホジッチも一緒だった。正確には海外組重視の姿勢だが、それが25歳以下の出場機会を減らす原因になっていた。

 昨年末に行われた東アジア選手権。日本は、海外組を休ませ、A代表の国内組とJリーグで活躍する選手で構成されたB代表的なメンバーで臨んだ。しかし、その中核を占めたのはU−25ではなかった。割合は半分程度。25歳以上の実力派が25歳以下に、人数で勝った。

 U−25に優秀な人材が不足していることもまた確かなのだ。しかし、この年代の選手が中心にならなければ、日本代表はチームとして成立しない。五輪チーム(U−21)+ベテランでは、チームは空洞化する。強化されるべき一番の対象は、U−21というよりもU−25。

 東京五輪は自国開催なので、強化を図りたい気持ちはよく分かる。しかし、サッカー界では、たかが五輪だ。代表監督がわざわざ二兎を追う必要はない。それが2022年の代表の強化に直結するとは思えないのだ。

 2022年カタール大会を目指す代表監督が、それ以上に目を凝らし、強化に力を注ぐべきは、そのひとつ上の年代だ。21歳の前半生まれから25歳にかけての選手。日本サッカーの浮沈のカギを握るのはU−25。この年代のレベルがどれほど上がるかに掛かっている。アジア大会準決勝でUAEに辛勝。決勝で韓国と戦うことになった森保U−21だが、それに目を奪われすぎると本質を見失う。

 なにより森保監督本人が、いまその症状に陥っている。日本代表監督に求められている仕事ではないと思う。代表チームに専念し、25歳以下の強化に全精力を傾けるべき。それなしに2022年の好成績は望めない。僕はそう思う。

 

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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