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【防災週間】レトルト食品の『レトルト』ってどういう意味? 初めて“月”に行った食材は?

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
ニシキヤキッチンのレトルト食品/筆者撮影

 8月30日から、きょう9月5日までは『防災週間』です。このところ頻繁に発生する地震や台風10号の影響などで、備蓄や防災意識がさらに高まった方も多いのではないでしょうか。

 食料の備蓄としてはレトルト食品が役立ちますが、そもそも『レトルト』とはどういう意味なのでしょう。

 今回は元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、カレーやスープなどのレトルト食品約120種類を販売しているニシキヤキッチンの菅原幸太さんに、『レトルト』の語源や歴史についてお話を伺いました(構成・文=コティマム)

ニシキヤキッチンの菅原幸太さん/筆者撮影
ニシキヤキッチンの菅原幸太さん/筆者撮影

語源はオランダ、その後フランス→イギリス→アメリカと変遷をたどったレトルト食品

『NISHIKIYA KITCHEN』自由が丘店/筆者撮影
『NISHIKIYA KITCHEN』自由が丘店/筆者撮影

 ニシキヤキッチンを手掛ける株式会社にしき食品は、1939年に宮城・仙台市で佃煮製造業として創業。その後、75年にレトルト殺菌装置を導入し、81年に本格的にレトルト業へ転換しました。なんと、会社案内もレトルトパウチに入っているのです! 現在は通販の他、仙台市や東京・自由が丘などに直営店舗を構えています。

パウチに入っているにしき食品の会社案内/筆者撮影
パウチに入っているにしき食品の会社案内/筆者撮影

――『レトルト食品』という言葉を当たり前のように使っていますが、そもそも『レトルト』ってどういう意味なのでしょうか。

菅原さん(以下、菅原):諸説あるのですが、もともとの語源はオランダ語で『蒸留器』を表す『retort』が由来とされています。熱や圧力に耐えられるように作られた蒸留釜を指していたそうですが、やがて「レトルト加熱処理した食品」という意味になったようです。

――もともとは『蒸留器』なのですね。

菅原:歴史的な流れでいうと、レトルトは1800年代にフランスで発明されました。フランス政府が「軍事用に長期保存できる技術」を募集し、その流れでニコラ・アペールという人物がガラス瓶を用いた食品保存・製造原理を発明したといわれています。もともとは瓶詰で、長期保存できる兵隊用の食料でした。

――最初のレトルトは瓶だったのですね。

今はパウチが主流のレトルトも最初は瓶だった/筆者撮影
今はパウチが主流のレトルトも最初は瓶だった/筆者撮影

菅原:瓶は割れやすいので、次にイギリスで缶詰が発明されました。瓶、缶と進化して、1950年代にアメリカの陸軍がレトルトパウチの研究を始めました。その後、宇宙食や軍事用で研究が進んでいきました。

69年には、「アポロ計画」に代表される宇宙開発で月面探査機「アポロ11号」が史上初の月面着陸に成功しましたが、その際、牛肉やポトフなど5品目をレトルトで持って行きました。初めて月に持ち出されたレトルト食品です。

家庭用レトルト食品は日本が世界初 

ニシキヤキッチンのレトルトカレー/筆者撮影
ニシキヤキッチンのレトルトカレー/筆者撮影

――歴史的にはレトルト食品は軍事用や宇宙開発目的で作られてきたのですね。初めて家庭用に作られたのはいつ頃ですか。

菅原:家庭用レトルト食品は、実はアメリカではなく日本が初めて作っています。「アポロ計画」の前年の68年に、大塚食品さんがボンカレーを世界で初めて家庭用のレトルト食品として販売されました。当時、弊社の菊池洋代表はスキーをしていたのですが、「雪山の上で食べたボンカレーが最高においしかった」と話してくれたことが印象的です。

――家庭用は日本が世界初なのですか! にしき食品さんも75年からレトルト食品に参入していますね。

菅原:もともと佃煮を作っている会社でしたが、当時の時代背景として健康志向や共働きが少しずつ増え始めていたり、レトルトの新しい技術も出てきていたりしたので、75年にレトルト機を導入し、試行錯誤の中、レトルト食品づくりが始まりました。当初はカレーやスープなどの業務用商品が主流でしたが、その後、1人前の小売り用商品づくりへと転換していきました。

120種類のレトルト食品を販売するニシキヤキッチン/筆者撮影
120種類のレトルト食品を販売するニシキヤキッチン/筆者撮影

――家庭用の商品を手掛けるようになったのはいつ頃ですか?

菅原:1995年頃からなので、約30年前からですね。カレーやスープなど、他社さまの商品づくりも受託しており、会社としては約500種類以上を手掛けています。ニシキヤキッチンでは約120種類を販売しています。

レトルトで「簡単においしいものが食べられる価値」を届ける

――ニシキヤキッチンさんのレトルト食品へのこだわりを教えてください。

菅原:“素材をいかした味”ですね。水や塩などにこだわり、そのレトルト食品の料理に合った厳選し、素材の持ち味をいかした味づくりをしています。100度以上で加圧・加熱して煮込む“煮込み料理”なので、カレーやスープなどはレトルトに向いていると思います。

トウモロコシの甘みを感じるコーンポタージュ/筆者撮影
トウモロコシの甘みを感じるコーンポタージュ/筆者撮影

ニシキヤキッチンの考えてとして、「安心して食生活を楽しめる場を提供する」「忙しい生活の中で料理を作る人の負担が軽くなってほしい」という思いがあります。レトルトだから簡単に食べられ、レトルトなのに素材にこだわったものが食べられる。「簡単においしいものが食べられる価値」を提供したいです。

実際に食べてみたバターチキンカレーと豚の角煮カレー/筆者撮影
実際に食べてみたバターチキンカレーと豚の角煮カレー/筆者撮影

具材がゴロゴロ入っている/筆者撮影
具材がゴロゴロ入っている/筆者撮影

――レトルトを食べても罪悪感がなく、種類も豊富で選ぶ楽しみもありますね。

菅原:ニシキヤキッチンで販売するカレーは約60種類あり、今年はキッズシリーズも18品に増やしました。お子さまやママ、ファミリー向けの“大変ごと”に少しでも役に立てたらと思っています。

キッズ向けのラインナップも豊富/筆者撮影
キッズ向けのラインナップも豊富/筆者撮影

レトルト食品だからといって手抜きではなく、簡単だけどおいしい。本来調理にかかる手間は我々が行う。そこから生まれた時間で、ご家族やご自分の好きな時間を増やしてもらえたらと思っています。

 いかがでしたか? 『レトルト』の語源が『蒸留器』だったのは意外でしたね。

 ニシキヤキッチンさんには、レトルト食品の備蓄や防災意識にオススメの“無意識ローリングストック”と“フェイズフリー”についてもインタビューしていますので、防災について考えるこの期間にぜひお読みいただけるとうれしいです(記事はこちら:『防災の日』に注目ワード!レトルト食品会社に聞く“無意識ローリングストック”と“フェイズフリー”とは

 言葉に関する記事については「打ち上げ花火に名前があるって知ってた? 花火屋さんに聞いた“フィナーレ豪華花火”の意外な名前とは?」もご覧ください。「打ち上げ花火の名前」について花火屋さんにインタビューしています。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。

※今回の記事は、にしき食品さまに掲載の許可をいただいた上で公開しています。取材時にレトルト食品の試食をしています。本記事制作にあたって はガイドラインに基づき公平中立に制作しています。

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。歌舞伎や舞台、芸能イベント、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5200回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』など。24年11月に合同会社パラレルコネクトの設立メンバーに。メディアやインフルエンサーと企業をつなぐサポートもしています!

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