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クリスマスリースを“反時計回り”に作る理由!リースを飾る理由や込められた意味は?【制作現場を密着!】

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
クリスマスリースは反時計回りに作っていく/筆者撮影

 クリスマスが近づいてきましたね。街中でもクリスマスツリーやイルミネーションが輝いています。自宅の玄関にクリスマスリースを飾っている方もいるのではないしょうか。

クリスマスリース/写真提供:JFTD学園日本フラワーカレッジ
クリスマスリース/写真提供:JFTD学園日本フラワーカレッジ

 実はこの「クリスマスリース」。作り方や使用する植物、使う色味などに「意味」があることをご存知ですか?

 今回は、元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、一般社団法人JFTDが運営する『JFTD学園日本フラワーカレッジ』のフラワーデザイン講師・大喜多映美さんに、クリスマスリースの作り方や意味について教わりました。ご家庭でクリスマスリースを飾る時の参考にしてくださいね。(取材・文=コティマム)

新聞紙とワイヤーで土台作り&大量のモミ枝をカット 準備も大変なクリスマスリース

日本フラワー会館(一般社団法人JFTD:JFTD学園日本フラワーカレッジ)/筆者撮影
日本フラワー会館(一般社団法人JFTD:JFTD学園日本フラワーカレッジ)/筆者撮影

 一般社団法人JFTDは、日本国内で生花の通信配達を目的として設立された法人です。1984年には生花通信配達システムを『花キューピット』と名づけました。1991年に花き業界の未来を担うフローリストの後継者育成を目指し、『JFTD学園日本フラワーカレッジ』を開校。2021年に創立30周年を迎え、現在までに約1600人が卒業しています。

 今回筆者は、『JFTD学園日本フラワーカレッジ』の授業に伺い、約40人の学生さんがクリスマスリースを作る様子を見学しながら、クリスマスリースにこめられた「意味」を教えていただきました。

クリスマスリースに関する授業を学ぶJFTD学園日本フラワーカレッジの学生さんたち/筆者撮影
クリスマスリースに関する授業を学ぶJFTD学園日本フラワーカレッジの学生さんたち/筆者撮影

 この日は学生さんが授業を受けながら、実際にモミの枝や木の実を使ってクリスマスリースを制作。使った材料は以下です。

◎クリスマスリースの材料◎

・モミの枝 適量

・ジュニパー(青い実) 適量

・サンキライ(赤い実) 1本を切り分けて約5箇所に飾る

・マツカサ(まつぼっくり) 5個

・装飾用のベル 48mm

・リースワイヤー

・ロングワイヤー

・リボン(厚みのあるベルベット調のリボン) 36 mm

・新聞紙

・枯れ木オーナメント 5~6個

クリスマスリースに使用するモミ枝/筆者撮影
クリスマスリースに使用するモミ枝/筆者撮影

 さすが、“花き業界のフローリストを育てる学校”だけあり、教室中にたくさんのモミの枝やジュニパーなどフレッシュな植物が用意されています。

ウッディな香り漂うジュニパーベリー/筆者撮影
ウッディな香り漂うジュニパーベリー/筆者撮影

 講師によるとジュニパーは北半球に生息するヒノキ科の針葉樹。お酒のジンの香りづけにも使われており、スパイシーでウッディな香りが特徴です。アロマオイルの「ジュニパーベリー」も有名で、“身体や心を浄化する香り”として使われることもあります。この日も教室中にジンの清々しい香りが漂っていました。

 今回のリースには5箇所ほど装飾として使われます。赤い実のサンキライは、モミ枝の緑とのコントラストがクリスマスらしさを演出します。

モミ枝の準備をする学生さん/筆者撮影
モミ枝の準備をする学生さん/筆者撮影

 まずは太いワイヤーに新聞紙を巻き付けて丸い土台を作り、この土台にカットされたモミ枝や木の実をワイヤーでくくりつけていきます。

クリスマスリースの土台/筆者撮影
クリスマスリースの土台/筆者撮影

 モミはボリュームや流れを出すために13cm(大)、10cm(中)、8cm(小)の3種類を準備する必要があります。学生さんはテープを13cm、10cm、8cmに切って机に貼り、そのテープに合わせながらモミを大・中・小にカットしていました。教室中にチョキチョキとモミ枝を切るハサミの音が響きます。

テープを使いモミ枝を大・中・小に切っていく/筆者撮影
テープを使いモミ枝を大・中・小に切っていく/筆者撮影

 準備ができたら、大、中、小のモミ枝の切り目をそろえで1セットにします。リースの外側にくる部分が大、真ん中が中、リースの内側が小のモミです。茎の下から2センチ部分にワイヤーを2~3回まわして締めていきます。

モミの長さやくくりつける位置を教わる学生たち/筆者撮影
モミの長さやくくりつける位置を教わる学生たち/筆者撮影

 1セットを巻き付けたら、3つの茎がそろった部分から1cm下げたところにまた大、中、小のモミ1セットをくくりつけます。

まずは講師がお手本を見せる/筆者撮影
まずは講師がお手本を見せる/筆者撮影

 こうして、葉が上を向いた状態で、茎(切り目部分)が下へ下へと向かうように反時計回りにモミ枝をくくりつけていきます。途中でモミ枝に木の実や枯れ木のオーナメントをくくりつけながら、装飾を施して円の形にしていきます。

学生たちも早速制作スタート/筆者撮影
学生たちも早速制作スタート/筆者撮影

 学生さんも慣れた手つきでモミ枝をまとめ、テキパキとワイヤーでくくりつけながら、ゴージャスなリースを作りあげていきます。

途中で木の実も入れながらくくりつけていく/筆者撮影
途中で木の実も入れながらくくりつけていく/筆者撮影

 途中でサンキライやジュニパーベリー、マツカサ(まつぼっくり)などを入れ込みながら、どんどんボリューミーになっていくクリスマスリース。筆者は超不器用なので見ていても何がどうなっているのかチンプンカンプン! 見惚れる手さばきでした!

どんどんボリュームが出てくるクリスマスリース/筆者撮影
どんどんボリュームが出てくるクリスマスリース/筆者撮影

 ちなみにリースの理想の形は、モミ枝をくくりつけた外側から内側:内側の空洞:内側から外側までの長さが1:1:1。きれいなドーナツ状です(ホワイトボードの写真参照)。

1:1:1が理想のリースの形/筆者撮影
1:1:1が理想のリースの形/筆者撮影

 では、なぜ「反時計回り」に下へ下へとモミ枝をくくりつけていくのでしょうか? これには「クリスマス」を祝うための「意味」があります。

使うのは常緑樹や木の実 葉の向きで『永遠』や『ずっと繋がっていく』を表す

完成した学生さんのクリスマスリース/写真提供:JFTD学園日本フラワーカレッジ
完成した学生さんのクリスマスリース/写真提供:JFTD学園日本フラワーカレッジ

――クリスマスリースは、葉が上を向くように反時計回りに下に向かって枝をくくり付けて作られていました。その方が作りやすいのですか?

フラワーデザイン講師・大喜多映美さん(以下、大喜多)

「実はクリスマスリースは“流れ”が決まっていて、作る際は『時計の流れと同じ』になるようにしなければいけません。時計の1時から5時の方向になるように、時計回りに“流れ”が進む必要があり、逆行してはいけません

反時計回りに作らなければいけないクリスマスリース/筆者撮影・加工
反時計回りに作らなければいけないクリスマスリース/筆者撮影・加工

――そうなのですか!

大喜多「クリスマスはキリストの降誕をお祝いする日です。そのためクリスマスの行事も西洋文化から入って来ています。クリスマスリースには、『ずっと繋がっていく』『エンドレス』『永遠』の意味があります。『平和や愛がずっと続きますように』という思いも込められています。

その“永遠”を表すために、葉が“時計回り”に続いていくように作ります。終点がなく輪っかになっているので、『永遠に続く』という意味を表します。そのため、使う葉もモミのような常緑樹です。枯れて葉が落ちる落葉樹ではなく、常に緑色をしている“エヴァーグリーン”の常緑樹を使い、葉の流れが時計の流れ(時計回り)になるように作ります。そのため、作る際は反時計回りに作業します」

完成時に時計回りに見えるように反時計回りにくくりつけていく/筆者撮影・加工
完成時に時計回りに見えるように反時計回りにくくりつけていく/筆者撮影・加工

――なるほど。完成版を時計回りに見せるために、作業は逆になるのですね。

大喜多「そうです。作る時に時計回りで進めてしまうと、葉が逆方向(反時計回り)の流れになってしまうため、作る際は葉を上にして茎を下に向け、反時計回りに下方向へ作っていきます。そうすると、完成時は葉の流れが時計回りに見えます。『時計回りに見えるようにする』『常緑樹を使う』という部分は、西洋文化とは直接関係のない日本でも守られていることです

――完成時の見た目を考えて作られているのですね。

完成時には葉の流れが時計回りに見える/筆者撮影・加工
完成時には葉の流れが時計回りに見える/筆者撮影・加工

大喜多「また、クリスマスカラーの代表的3色として『赤・緑・白』があります。

赤=キリストの流した血、深い愛を象徴、神様の愛

緑=永遠、エヴァーグリーン

白=純潔、清らかな心、新年に向けての平和の象徴

です。色に意味がこめられています。そのためサンキライなどの赤やモミ枝の緑を使います。今回の授業では白を入れていませんが、綿を使うなどオーナメントとして取り入れることもあります」

赤や緑のクリスマスカラーを使う/筆者撮影
赤や緑のクリスマスカラーを使う/筆者撮影

クリスマスの約4週間前の日曜日から始まる“アドベント” ロウソクを飾る置き型リースも

――そもそもクリスマスリースは何のために作るのですか?

大喜多「西洋では、アドベントというキリストの降誕を待ち望む期間があります。クリスマスの直前の日曜日を含め、4回前の日曜日からクリスマスに向けて準備していくのです。クリスマスリースもこの期間に飾られます。ドアにかけるだけでなく室内用にキャンドルを立てた置き型のものも多くあります。

置き型のクリスマスリースではリースに4本のロウソクを立て、『クリスマスからさかのぼって4回前の日曜日から日曜日毎にロウソクを1本ずつ灯していく』という文化があります。1回目の日曜日を第1アドベント、2回目の日曜日が第2アドベント、3回目の日曜日が第3アドベントとして火を灯していきます。第4アドベントがクリスマス直前の日曜日になります。

ロウソクが4本立っているアレンジメント(JFTD学園日本フラワーカレッジのロビー)/筆者撮影
ロウソクが4本立っているアレンジメント(JFTD学園日本フラワーカレッジのロビー)/筆者撮影

アドベントには、太くて長い時間灯せるロウソクを使ったクリスマスリースをリビングやダイニングルームに置いて、食事をしたり、ジンジャークッキーを飾ったりと楽しみます。ちなみに2024年は12月1日の日曜日が第1アドベント、第4アドベントは22日ですね。」

――本場のお祝いの仕方なのですね。

大喜多「私はドイツに住んでいたことがあるのですが、クリスマスのリースやアレンジメントのデザインはさまざまで、キャンドルが1本しかないアレンジメントもあります。リースだけでなく背が高く作ったものや横長のものなど、家庭の置きたい場所に合うデザインや大きさのもの探すのも楽しみのひとつです。

ロウソクが2本立っているアレンジメント(一般社団法人JFTDのロビー)/筆者撮影
ロウソクが2本立っているアレンジメント(一般社団法人JFTDのロビー)/筆者撮影

ドイツでは10月頃から花屋さんがクリスマスリースを作り始め、第1アドベントの直前にクリスマスの展示会を開きます。花屋さんによってカラーやデザインが違い、ナチュラルなものやモダンなデザイン、カラフルなものとさまざまです。

花屋さんはひとつのひとつの手作りしたリースやアレンジメントをきれいに並べて、寒い中訪れるお客さまをグリューワイン(スパイス入りの温かいワイン)でもてなします。その時期は展示会をめぐるのが楽しいです。みんな、花屋さんに行って自分の家に飾るクリスマス用の装飾を買います」

――素敵ですね。クリスマスリースは植物で作られていますが、どれくらい日持ちするのですか?

「生のお花は枯れてしまいますが、常緑樹や木の実で作ったものは1か月くらいもちます。『JFTD学園日本フラワーカレッジ』の授業でも毎年11月終わり頃にクリスマスリースを作りますが、クリスマス過ぎる頃までは飾ることができます。

学生は11月下旬にクリスマスリース作りの授業を行う/筆者撮影
学生は11月下旬にクリスマスリース作りの授業を行う/筆者撮影

日本はお正月があるので12月25日の最後には片付けますよね。デパートや街中の装飾は、25日まではクリスマス、25日の夜中の内にお正月飾りに取り変えます。

ドイツの家庭ではクリスマスツリーを飾り付けるのは12月24日になってから。そして公現祭の1月6日まで飾ります。1月になると『モミの木回収の日』があり、家の前の道路にツリーを出しておくと回収車が回収してくれるシステムもあります」

――文化や習慣で装飾を飾る時期も全然違いますね! クリスマスリースの意味や習慣も知らなかったので勉強になりました!

クリスマスリースでクリスマスを迎えよう/筆者撮影
クリスマスリースでクリスマスを迎えよう/筆者撮影

 もうすぐクリスマス。クリスマスリースを飾る時は、込められた意味をちょっと思い返してみてくださいね。

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※今回の記事は、主催者に掲載の許可をいただいた上で公開しています。

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。歌舞伎や舞台、芸能イベント、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5200回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』など。24年11月に合同会社パラレルコネクトの設立メンバーに。メディアやインフルエンサーと企業をつなぐサポートもしています!

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