Yahoo!ニュース

ヤンキースの選手が「オールスター出場」に続いて「もう一つの夢」を叶える

宇根夏樹ベースボール・ライター
ネスター・コーテズ(中央)とアロンドラ・G・エスタレス・ルーシー(右)(写真:REX/アフロ)

 オールスター・ゲームの6回裏、マウンドに上がったネスター・コーテズ(ニューヨーク・ヤンキース)は、無失点でイニングを終わらせた。与四球と与死球で2人を出塁させたが、被安打はゼロ。最初と最後の打者からは、三振を奪った。

 コーテズは、27歳のキューバンだ。今シーズンは、メジャーリーグ5年目。オールスター・ゲームには、初めて選ばれた。

 登板の翌日、コーテズはインスタグラムに、オールスター・ゲームで投げている自身の写真をアップした。そのコメントの冒頭には、「オールスター・ウィークに2つの夢が実現した。オールスター・ゲームで投げた。そして、ベストフレンドにプロポーズした」とある。

 プロポーズの相手は、アロンドラ・G・エステラス・ルーシーだ。彼女のインスタグラムによると、場所はロサンゼルス・カウンティ美術館のアーバン・ライツの前らしい。薬指に指輪をはめた左手の写真には「アーバン・ライツ」「そして……もちろん、イエスって言ったわ!」と書き込んである。

 コーテズは、トップ・プロスペクトではなかった。ドラフト指名は、2013年の36巡目・全体1094位。この年、ヤンキースが指名した42人の38人目だ。ちなみに、2人目はアーロン・ジャッジ、4人目は加藤豪将(現ニューヨーク・メッツ)、6人目はタイラー・ウェイドだった。

 ずっと、ヤンキースにいたわけでもない。2018年はボルティモア・オリオールズで4試合に投げ、2020年はマリナーズで5試合に登板した。それぞれ、ルール5ドラフトとトレードでヤンキースから移り、2度とも、ヤンキースへ戻った。1度目は、メジャーデビューから4登板したところで、オリオールズがコーテズをヤンキースに返却した。2度目は、2020年のオフにAAA降格を告げられたコーテズが、FAになることを選択し、ヤンキースとマイナーリーグ契約を交わした。

 そこから、コーテズは頭角を現してきた。2018~20年の計79.0イニングで防御率6.72に対し、昨シーズンは93.0イニングで防御率2.90、今シーズンの前半戦は95.2イニングで防御率2.63だ。今年5月にUSAトゥデイのゲーブ・ラックが発表した記事によると、2018年のドミニカン・ウィンター・リーグで、同じキューバンのオドリサマー・デスパイネにカッターを教わったことが、ブレイクにつながったという。

 なお、オールスター・ゲームではないが、カルロス・コレイア(現ミネソタ・ツインズ)は、ワールドシリーズが終わった直後にプロポーズしている。コレイアをはじめ、プロポーズに趣向を凝らした選手については、こちらで書いた。

「メジャーリーガーの「プロポーズ大作戦」あれこれ。ワールドシリーズで敗れていたら、あのプロポーズは……」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事