なぜバルサはフェラン・トーレス獲得に動くのか?シャビとグアルディオラの駆け引きの行方。
冬の移籍市場が、幕を開けようとしている。
マーケットが開くのは2022年1月1日だ。だが、そこに向けてすでに動き始めているクラブがある。バルセロナだ。
ラヒーム・スターリング(マンチェスター・シティ)、エディンソン・カバーニ(マンチェスター・ユナイテッド)、アルトゥール・カブラル(バーゼル)、カリム・アディエミ(ザルツブルク)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)...。多くの選手の名前がメディアで踊っている。
なかでも、バルセロナが関心を強めているとされるのが、マンチェスター・シティでプレーするフェラン・トーレスだ。現在、負傷離脱中だが、バルセロナはマテウ・アレマニーFD(フットボールディレクター)とフェラン・レベルテルCEOがマンチェスターに赴き、エクトル・ペリス代理人と接触したようだ。
■ウィングを求めるシャビ
バルセロナのシャビ・エルナンデス監督は、ウィングを重視している。初陣となったエスパニョール戦では、カンテラーノのイリアス・アコマックを先発起用。また、エズ・アブデを重宝しており、その起用法で周囲を驚かせている。
「ポジショナルプレーにおいて、ウィングは鍵を握る存在だ。ピッチをワイドに広く使いたい。サイドをうまく使えれば、内側にスペースが生まれる」とはシャビ監督の弁だ。
シャビは以前、インタビューで自身が好むウィングの選手を挙げていたことがある。その際、ネイマール、セルジュ・ニャブリ、ジェイドン・サンチョといった選手に触れていた。
突破力のあるウィング。端的に言えば、それがシャビの求めるウィング像だろう。そして、フェラン・トーレスの特徴はその意味合いで合致する。
幼い頃からホアキン・サンチェスに憧れていたというフェランは、右ウィングを本職とする右利きのアタッカーだ。バレンシアの出身で、6歳からそのカンテラでプレーを始めた。
バレンシアの育成年代でスカウトを担当していたホセ・ヒメネスはかつて、スペインのU―17代表に選ばれていたフェランについて「多くの局面を支配できる完璧な選手だ。ドリブルする際のスピードやコーディネーション、スタミナ、ジャンプ力。サイドでも中央でも突破ができる。左右両足が使えるので、相手からすれば予測できない。クロスやフィニッシュも精度が高い」と語っていた。
■フェラン・トーレスの進化
そのフェランは、バレンシアでトップデビューした後、ドリブラーとして評価を高め、2020年夏にマンチェスター ・シティに移籍した。
フェランを待っていたのは、ペップ・グアルディオラ監督との出会いだ。ペップはフェランを複数ポジションで起用するようになった。ファルソ・ヌエべ(偽背番号9/ゼロトップ)での起用はその最たるものである。
2019−20シーズン、バレンシアでのラストシーズンで、フェランは44試合に出場して6得点8アシストを記録した。その時点では決して得点力のある選手ではなかった。
しかしながらシティに移籍してファーストシーズンの2020−21シーズン、フェランは36試合に出場して13得点3アシスト。キャリア初の二桁得点を挙げている。
ただ、シティのようなビッグクラブでは、当然ながら厳しい競争がある。
スターリング、ベルナルド・シウバ、リャド・マフレズ、フィル・フォーデン、ガブリエウ・ジェズスらが前線に控えている。この夏には、移籍金1億1700万ユーロ(約152億円)でアストン・ヴィラからジャック・グリーリッシュが加入した。
■競争とポジション
一方、バルセロナでは、右ウィングのポジションが空いている。
イリアスやアブデといったカンテラーノが、虎視淡々とチャンスを狙っているが、現行契約を2022年夏までとしているウスマン・デンベレが契約延長問題で揺れており、去就が不透明な状況だ。
そして、現在のフェランであれば、3トップのどこでもプレーできる。右WG、左WG、CF。得点力もついてきており、シャビ監督としては頼れる存在になるだろう。
「フェランについてコメントするのは私の仕事ではない。彼の代理人か(フットボールディレクターの)チキ・ベギリスタイン、あるいはバルサに電話をしてくれ」とはペップの言葉だ。
「だが我々に選手をプレゼントする考えはない。我々に対しては、マンチェスター・シティであるという理由で、高額な移籍金が要求される。我々は選手を無料で譲ったりしない。クラブ間の交渉で、合意に至らなければいけない」
シティは、フェラン獲得に際して、移籍金固定額2400万ユーロ(約31億円)+ボーナス1200万ユーロ(約15億円)でバレンシアと合意に達した。
今回のフェラン獲得には7000万ユーロ(約91億円)の移籍金が必要になると伝えられている。
また、バルセロナはサラリーキャップの問題を抱えている。来年1月1日に選手登録が可能になるダニ・アウベスに関しては、ラ・リーガ1部の最低水準のサラリーで加入したと言われている。その年俸額は15万5000ユーロ(約2000万円)だとされる。
フェランを獲得するには、現実的にまず選手を売却する必要がある。サミュエル・ウンティティ、フィリップ・コウチーニョといった高年俸の選手が対象だろう。だが、元々、バルセロナは交渉上手なクラブではない。厳しい冬が、彼らを待ち受けているかもしれない。