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ペットショップの「お年玉セール」 命の叩き売り報道で知ってほしいこと

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

コロナ禍で「自宅にいる時間が長くなる」「人と距離を取る」など生活様式が変化しました。そんななか、ペットの存在がより重要になってきています。

一般社団法人ペットフード協会の調べによりますと、新規飼育頭数は、新型コロナ前よりも現在の方が多くなっています。つまり去年は、犬や猫を新規に飼う人が増えたのです。

犬や猫の値段はどれぐらいが適正なのかは難しいところですが、いまでは、数十万円するのは、普通になっています。高価な場合は、70万円や80万円するのもそう珍しくないです。

一般的な子どものお小遣いで買うには、手が届かない額になっています。そんなことを受けて、NEWSポストセブンに「ペットショップの「お年玉セール」に違和感、命が叩き売られていいのか」という記事が掲載されて、反響をよんでいました。

今日は、「クリスマスセール」「歳末感謝祭」「お年玉セール」などの広告を打つことにペットショップは違和感がないのだろうかを考えてみましょう。

「クリスマスセール」「歳末感謝祭」「お年玉セール」などの広告を打つペットショップとは?

写真:アフロ

NEWSポストセブンによりますと、ペットショップの中には、生後半年を過ぎた犬や猫のケースに「バーゲンセール」とカラフルなポップが踊っていたところもあるそうです。

クリスマスや年末年始の時期になれば、ペットをプレゼントしたり、お年玉で購入したりする人が増えます(できれば年末年始は事故が多いし、動物病院が閉まっているところが多いので避けた方がいいのだけれど)。

そのためこのような「クリスマスセール」「歳末感謝祭」「お年玉セール」を打つペットショップもあるのでしょう。

その理由としては、以下です。

日本の消費者は子犬や子猫を好む傾向があります。そのため生後半年を過ぎた犬や猫は人気がないので値段を下げる

バーゲンやセールという言葉は、一般的には品物に使うのだけれど、ペットショップでは命のあるものにつけて違和感がないところもある

ペットショップで生体販売をするということは、やはり物を並べて売るという感覚が強くなります。それは、やはり異常なことなのです。

ペットを購入することは命を預かること

写真:アフロ

消費者は、ペットを購入することは命を預かることという意識を持つともっと違ってくるのでしょう。

ペットショップで犬や猫を購入する場合は、料金さえ払えば飼えるシステムになっています。そのため以下のことをしっかり理解してほしいのです。

・犬や猫の寿命は、10年以上あるのでずっと面倒を見る

・一度ペットと暮らすと、飼い主の体調にかかわらずずっと世話をする

・飼い主が入院や病気などの理由で世話ができないとき、ペットホテルやペットシッターや知人などに預ける

・犬や猫は、命あるものなので病気も老いもあることを理解する

・ペットフード代やトイレ用品代がいる

・医療費がいる

・しつけがいる

・犬の場合は狂犬病ワクチンを打つことが法律で義務付けられている

などです。

それらのことを理解して犬や猫を購入してください。終身飼育が基本です。

ペットショップのように簡単に購入できませんが、できれば保護施設などから犬や猫を迎えるという方法も考えてみてください。

60回分割で犬や猫を買う

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

全てのペットショップが年末年始に生体のバーゲンセールをしているわけではありません。しかし、上述しましたように、子犬や子猫の値段が高騰しているので、60回の分割で購入できるシステムになっているところもあります。

たとえば、30万円前後のペットだと、ひと月に5000円だとしても60回で5年続くわけです。

分割払いした費用だけを払い続けるだけではなく、それ以外にも上述したフード代やらワクチン代、そして1年目では不妊去勢手術費用もいります。このようなことを熟考してから、子犬や子猫を家族の一員にしましょう。

写真:アフロ

SNSで見る犬や猫は、かわいいです。そしてその映像を見ているだけで癒やしになります。それならと思って家族の一員にしようと思うことは理解できます。

その一方で、命を預かることだということを十分に理解してほしいです。老いて「オムツ」をしている姿が、長年時間を共有しているので愛おしいと思える人が増えるように願っています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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