Yahoo!ニュース

浜崎あゆみさんの愛犬、声奪われた元保護犬が「乳がん」手術に 繁殖引退犬は要注意?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

浜崎あゆみさんの愛犬「ポテト」ちゃんが乳がんを患い、手術を受ける予定であることを、まいどなニュースが報じています。

浜崎さんは昨年、保護犬の「コンブ」ちゃんと「ポテト」ちゃんを迎え入れました。インスタグラムでは「鳴き声がうるさいなどの理由で声帯を切られていて、声が一切出ない」「逃げ出そうとして何年も柵を噛んでいたから、犬歯が削れて無くなっている」といった、2匹がこれまで置かれてきた過酷な境遇について投稿しています(まいどなニュースより)。

では、なぜこのような保護犬が乳がんになりやすいのかを見ていきましょう。

繁殖引退犬は乳がんになりやすい?

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

浜崎あゆみさんが保護したポテトちゃんは、声帯を切られているのでおそらく繁殖引退犬です。

犬のメスの乳がんと避妊手術には深い関係があります。乳がんは犬に比較的よく見られる腫瘍で、特に避妊していない場合にリスクが高まる傾向があります。しかし、適切な時期に避妊手術を行うことで、そのリスクを大幅に減少させることができます。

乳がんにさせないために避妊手術のタイミング

避妊手術のタイミングは非常に重要です。

犬が初めての発情を迎える前、つまり最初の発情期の前に手術を行うことで、乳がんの発生率を劇的に低下させることがわかっています。犬種にもよりますが、一般的には生後6カ月前後が目安です。

具体的には、最初の発情前に避妊手術をした犬では、乳がんになるリスクはほぼ0%に近いと言われています。

このリスク低減効果は、発情の回数が増えるほど弱まります。2回目以降の発情を迎えた犬でも、避妊手術を行えば乳がんのリスクは大幅に減少しますが、完全にリスクをなくすことはできません。

避妊手術と乳がんになる確率

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

最初の発情前に避妊手術を受けた犬が乳がんになる確率は、諸説ありますが一般的には約0.05%と非常に低い数値です。一方、発情を1度経験した後に手術を行っても、乳がんのリスクは50~70%低減するとされており、避妊手術のタイミングは乳がん予防において非常に重要です。

このリスク低減の理由は、ホルモンが乳腺組織に与える影響にあります。特にエストロゲンとプロゲステロンといったホルモンは、乳腺細胞の増殖を促進し、それが腫瘍のリスクを高めるとされています。避妊手術によって卵巣を取り除くことで、これらのホルモンの影響を抑え、乳がんの予防につながります。

避妊手術の安全性

避妊手術は安全な手術ですが、麻酔をかけます。

その子が、麻酔をかけても大丈夫な体重、心臓、肝臓などの検査してからにしましょう。

他の健康リスクとして、肥満になりやすい、動きたがらないなど行動面での影響もあるため、個々の犬の状態やライフスタイルを考慮し、獣医師とよく相談して決定することが重要です。

繁殖引退犬が乳がんになりやすい理由

繁殖引退犬は出産を目的としているため、避妊手術を受けていないことが多いです(引退後に譲渡される際に避妊手術を受けているケースもありますが、確認が必要です)。

そのため、早期に避妊手術を受けていない犬は、乳がんのリスクが高まります。

繁殖犬はエストロゲンとプロゲステロンというホルモンを必要とし、子犬に母乳を与えるために乳房が使われます。これが乳腺に影響を与え、乳がんのリスクを高める要因です。

まとめ

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

ポテトちゃんが乳がんを患い、手術を受ける予定であるという知らせは、愛犬家や浜崎さんのファンにとって心痛むものです。しかし、早期発見であれば手術によって回復する可能性は十分にあります。

浜崎さんの献身的なケアは、保護犬の大切さと飼育の難しさを広く伝えるものです。保護犬の中には繁殖引退犬も多く、これらの犬たちは早期に避妊手術を受けていないことが多いため、定期的な健康チェックによる早期発見と予防が不可欠です。

ポテトちゃんが無事に手術を終え、浜崎さんの元で穏やかな生活を送ることを祈っています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事