クレジットカードを不正利用された時の皆さんの対応は早い?遅い? 補償の有効期間を知らない人は半数以上
年末年始に向けて、クレジットカードを利用する機会が多くなります。それだけに不正利用の被害の心配も出てきます。もしかすると、利用者のなかには、クレジットカードの不正利用の被害にあっても、カード会社が補償をしてくれるから大丈夫と考える人もいるでしょう。案外、その安易な思いが、命取りになってしまうことがあるかもしれません。
一般社団法人日本クレジット協会によると、クレジットカードの不正利用による被害額は、2024年第2四半期(4月~6月分)で、すでに144.1億円となっており、前年同期と比べて2.2%の増加がみられ深刻な状況です。
不正注文検知サービス「O-PLUX(オープラックス)」の導入を通じて、通販業界を中心に、不正決済対策のソリューションを提供しているかっこ株式会社は、ネットショッピングをしたことがある人たちへのアンケートを行っています。利用実態から、なぜ不正利用の被害が広がり続けているのか。その理由と今後の課題がみえてきます。
不正利用された被害額の半数近くが、1000円から5万円の間
同社の担当者は「過去にクレジットカードが不正利用された経験がある400人を対象にしたアンケートのなかで、被害に気づいたきっかけがカード会社からの連絡と答えた方が44.3%と一番多く、自分で利用明細を確認して気づいた方が41.5%となっています」と話します。
回答のなかで100万円以上の不正利用被害が1%ありますが、これはあくまでもレアなケースで「1000円から5万円の間が47.1%と半数近くをしめていて、見覚えのない海外サイトの履歴から気がつくケースが一番多かった」ということです。
ここからわかることは、不正利用者たちは一気に高額な決済をすると不正行為が発覚する恐れがあることから、カード会社の検知に引っ掛からず、利用者の側にも不正利用に気づかせないような金額を使い、商品を騙し取ろうとしていることです。
不正利用された方の13.3%の方が補償されていない
深刻な状況も浮かび上がっています。
「不正利用された方の13.3%の方が補償されず、自らお金を払う結果になっています」
その理由について「クレジットカード会社では基本的に60日間過ぎると補償されないルールを定めていますが、不正利用の発覚から補償期間を過ぎてしまって、補償されなかった人たちが24.5%でとても多い」と指摘します。
補償の有効期間を「知らない」と答えた人は57.3%と回答
なぜ、補償期間を過ぎてしまったのでしょうか。
アンケートの回答で補償の有効期間を「知らない」と答えた人は57.3%となっている点も見逃せません。
「『知らない』と答えた方の年代をみると40代が57.5%、60代、70代にいたっては7割を超える方が補償の有効期間を知らなかったというデータになっています」(同社担当者)
利用者側の知識不足が、補償期間を過ぎてしまった理由の一つにあるようです。
かなりの数の人たちがクレジットカードを利用する上で最低限知っておくべきことを知らずに、利用していることになります。
不正利用に気づいた後、カード会社への通報に時間がかかっている現実も
利用者がクレジットカードの不正利用に気づけば、カード会社への連絡をするわけですが、皆さんが不正利用に気づいてから、引き落とし先などのカード情報変更までにどの位の時間がかかっているのでしょうか。
同社の担当者は「1週間未満で対応が完了したという人たちは37.8%です。1週間から2週間が31.8%で、2週間から1か月未満は20.5%、1か月以上かかってる人も10%もいます」と話します。
これは驚くべき数字といえます。カード会社への通報から対応されるまでに手間や時間がかかるほど、悪意ある者たちがカードを不正利用し続けることにつながります。カードの不正利用被害が横行している一因には、こうした対応までに時間がかかっている点にもあると考えられます。
カード会社への通報に時間がかかった理由は?
同社の担当者は「カード会社のなかには、通知ボタン1つで簡単に手続きができるケースもありますが、時間がかかった人から出てくる話として、カード会社の対応窓口は時間帯によっては、すぐつながらなくて、待たされ続けて面倒になってしまう」ことがあるとしています。
この辺りは、筆者も思いあたるところです。
普段、クレジットカードの利用通知サービスを使っていますが、メールボックスをみると記憶のない3万円のカードの利用の記載がありましたので、すぐにカード会社に確認の連絡をしようとしました。
まずカードの通報先の連絡先を調べます。慌てていることもあり、受話器のボタンを何度も押しては間違えて、やっと電話をかけました。しかし先方につながっても自動音声ガイダンスが流れ続けて、いくら待ってもオペレーターにつながらず、そのうちに次の予定の時間がきてしまい、その日は諦めざるをえませんでした。不安をかかえたままに、時を過ごした経験があります。
この時は幸い、不正利用ではなく忙しい時間の合間を縫って、ふるさと納税をネット上で行っていたのを失念していただけでしたので、ことなきをえました。
しかし、もしこれが不正利用だった場合、すぐのカード会社への通報ができないことになり、さらなるカードの不正利用が行われてしまう可能性が出てきます。
なかには、すぐに利用確認の電話がつながらない状況から、通報を諦めようとする人もいるかもしれません。それが通報の遅れの理由にもなっていると思われます。
カード利用者が迅速な通報ができるようにすることこそが、不正利用を減らすことにもつながるはずです。クレジットカードの不正利用をなくすためには、ユーザー目線にたって「面倒だから」という意識をさせない取り組みが必要とされています。
商材別不正注文検知件数のランキングに、サブスクサービスやスポーツ用品も
カードの不正利用者の目的の多くは、商品の転売です。
2023年度の商材別不正注文検知件数のランキングでは「デジタルコンテンツ」「ホビー・ゲーム」「チケット」が上位を占めています。これは昨年とは変わりありませんが、上位に急にランクインしたものに、8位サブスクサービスや11位スポーツ用品があります。
サブスクサービスについては「家電や家具など、さまざまな製品がサブスクとして利用できるようになりました。商品を実際に見てから購入したいというニーズが背景にあります。特に家電やブランド品は、換金しやすく、転売されやすいため、不正のターゲットになりやすい傾向があります。そのため、サブスク利用においても不正が増加していると考えられます」と同社の担当者はみています。
スポーツ用品では、ゴルフクラブやテニスラケットなどが多いといいます。確かにゴルフクラブもそうですが、テニスのラケットも3万円はするものも多く、それなりに単価の高い商品が狙われていることがわかります。
カード会社と利用者が一体となった対策が求められる
いずれにしても、利用者が1週間以上もクレジットの不正利用に気づきながらも、放置されてしまっているような状況はなんとかしなければなりません。それは結果として、犯罪者の懐を肥やすことにつながるからです。
クレジットカードの不正利用の被害が大きくなっている要因には、補償の有効期間への知識が乏しい人が多いことや、カードの不正利用に気づいてからカード会社に通報し、カード情報を変更するまでに手間がかかっていることがあげられます。
今回の回答でも、不正利用対策として6割近くの人が利用明細をみるといった行動をとっており、利用者の意識は高まってきていますので、カード会社の側ももっと不正利用が起こった後の対応を簡略化させるといった改善策を講じることが求められます。
カード会社と利用者が一体となった対策こそが、クレジットカードの不正利用被害を防ぐことにつながります。