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【FIBAバスケットWC】壮絶な点取り合戦を制し、金メダル奪回を目指したアメリカの夢を砕いたドイツ

青木崇Basketball Writer
アメリカとの激闘を制した後に喜びを爆発させるドイツ (C)FIBA

 8月20日にアラブ首長国連邦のアブダビで対戦した時、ドイツは3Q途中でアメリカから16点のリードを奪いながら、4Qにまくられて逆転負けを喫していた。あの敗戦から19日後となる9月8日、ワールドカップ準決勝の舞台となるマニラのモール・オブ・アジア・アリーナで、再びアメリカに挑むことになった。

 ワールドカップでのドイツは日本戦を皮切りに、遂行力の高いオフェンスを展開し、フィンランド、ジョージア、スロベニア相手に100点ゲームで快勝。ラトビアとの準々決勝は2点差の辛勝だったが、NBAで長年活躍しているデニス・シュルーダーを軸に、全試合で80点以上を記録していた。

 ここまでの6試合同様、ドイツはシュルーダーを起点にボールを動かし、巧みなスペーシングとスクリーンでアメリカのディフェンスを試合序盤から切り崩すことに成功。フランツ・バグナーとシュルーダーが連続で3Pを決めると、4分30秒で25対15とリードを2ケタに乗せた。

 前半で21点差をつけられて負けたリトアニア戦の再現を何としてでも避ける必要があったアメリカは、ミケル・ブリッジズの3Pから反撃開始。ドイツからターンオーバーを3度誘発させるなど、ディフェンス対応が少し改善したにより、残り30秒で31対31の同点に追いついた。2Q序盤にオースティン・リーブスとアンソニー・エドワーズの連続3Pで39対37と逆転に成功したものの、ドイツを引き離すことができずに一進一退の攻防に突入していく。アメリカのジェイレン・ブランソンは試合を次のように振り返る。

「ドイツは最初から最後まで素晴らしいプレーをしていたし、我々が追撃するたびに彼らはタイムリーにショットを決めた。彼らはゲームプランを遂行し続けたから、試合に勝つ術を見つけたということだ。称賛するしかない」

 59対60というハイスコアで迎えた後半、ドイツはダニエル・タイスが3Q序盤で3本のショットを成功。アメリカが最も警戒していたシュルーダー、F.バグナー以外の選手が得点することで、ドイツは再びオフェンスで優位に立てる状況を作った。そのチャンスを最大限活かしたのが、シューターのアンドレアス・オブストだ。

 8分56秒の初めてのショットとなる3Pが決まるなど、オブストは1Qだけで9点をマーク。6分弱プレーした2Qは無得点だったが、いいリズムでプレーできていた。3Q6分6秒にドライブからフィニッシュすると、4分22秒にフェイクでタイリース・ハリバートンを跳ばすことで、フリースロー3本になるファウルをもらうことに成功。さらに、3分26秒にはダウンスクリーンからボールをもらった後、ゴールへ攻めると見せかけてのキックアウトのパスを出すと、イサック・ボンガが左コーナーから3Pを決めていた。

残り1分14秒に点差を4に広げる3Pを決めるなど、チーム最多の24点を記録したオブスト (C)FIBA
残り1分14秒に点差を4に広げる3Pを決めるなど、チーム最多の24点を記録したオブスト (C)FIBA

「ピンダウンでのアンドレアスは正にモンスターだし、彼のようなシューターをガードするのは難しい。アメリカのディフェンスに大きなプレッシャーをかけていたと思う」とF.バグナーが話したように、ドイツはダウンスクリーンのアクションを使い続け、そこからオブストが中距離のジャンプショットと3Pを立て続けに成功。アメリカがこのセットを止めるのに苦労していたことは、4Q開始早々でリードが12点まで広がったことでも明らか。ドイツのゴーディー・ハーバートコーチは、オブストについて次のように表現した。

「私にとってアンディは、FIBAの中で最高のシューターの一人だ。今夜見せたように、彼はシュート以外のこと、ドライブもプレーを作ることもできる。アンディがもたらす最大の特徴は、デニス・シュルーダーとフランツ・ワグナーがプレーするスペースを与えてくれることだ」

 4Q残り5分23秒で12点をリードしていたドイツだったが、ここからアメリカの猛反撃にあい、1分35秒にリーブスのフリースロー2本で108対107の1点差まで詰め寄られる。次のオフェンスを止められた場合は、試合の流れから逆転されてしまう可能性が高まると思われたが、シュルーダーのインバウンドバスをもらったオブストは、残り1分14秒に値千金となるステップバックの3Pショットを成功。残り40秒でシュルーダーが6点差となるショットを決めたドイツは、113対111という壮絶な点取り合戦を制し、ワールドカップ史上初となる決勝進出を果たした。

 F.バグナーが22点、タイスが21点、シュルーダーが17点と、ドイツはNBA選手が期待どおりの活躍で勝利に貢献。しかし、試合に大きな違いをもたらしたのは、チーム最多の24点を記録したオブストである。

「(ピンダウンは)うまく行ったね。デニスは常にいいハンドリングをしてくれるし、ビッグマンたちが素晴らしいスクリーンをセットしてくれる。それを活かすことで僕はショットを打つことも、ドライブするも、パスも出すことができる。だからディフェンスするのは簡単じゃない。コートの反対側にいるデニスのためにスペースを与えることにもなるから、僕はピンダウンのプレーをすごく気に入っているんだ。

 点取り合戦だったとはいえ、アメリカが同一の大会で2度も110点以上を取られて敗戦を喫したのはかなり衝撃的。2006年の準決勝でギリシャのピック&ロールに対する答えがなかったのと同様に、ディフェンスが酷かったという声は当然出てくるだろう。しかし、ドイツが質の高いオフェンスを展開し続けたことに加え、重要局面でディフェンスでアメリカを止めていたのは事実。アメリカ云々よりも、ドイツが素晴らしい内容で勝ったと言える試合だった。

セルビアがカナダに快勝して2014年以来の決勝進出

62.1%という高いFG成功率でカナダを破ったセルビア (C)FIBA
62.1%という高いFG成功率でカナダを破ったセルビア (C)FIBA

 準決勝の第1試合は、アメリカを破ったリトアニアに大勝したセルビアがカナダを撃破し、2014年以来となる決勝進出を果たした。エースのボグダン・ボグダノビッチが3本の3P成功を含む23点とチームを牽引し、チームとしても77%という高い成功率で46点をペイント内で奪うなど、高いオフェンスの遂行力で試合の大半をコントロール。センターのニコラ・ミルティノフは6本すべてのFGを成功させるなど、16点、10リバウンドのダブルダブルで勝利に貢献した。

 カナダは1Qでシェイ・ギルジャス=アレクサンダーとディロン・ブルックスが2つ目を取られるなど、主力のファウルトラブルに泣かされた。2Qでジョルディ・フェルナンデスコーチがテクニカルファウルを吹かれるなど、2日前に対戦したスロベニアがフラストレーションを蓄積させたのと同じ事態に直面。R.J.バレットが23点と奮闘したものの、セルビアに62.1%の高確率でショットを決められたことは、アグレッシブなディフェンスを継続できなかったことを象徴していた。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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