「コナン」を上回る作品は現れる? 今年の夏休み映画、抜け出す一本は不在か?
ここ数年、年間のトップを記録する映画は夏に公開されるケースが多い。過去10年のトップ作品を振り返ると、下記のように10本中6本が7〜8月の夏休み期間に公開されている。
2017年『美女と野獣』(4/21公開)
2016年『君の名は。』(8/26公開)
2015年『ジュラシック・ワールド』(8/5公開)
2014年『アナと雪の女王』(3/14公開)
2013年『風立ちぬ』(7/20公開)
2012年『BRAVE HEARTS 海猿』(7/13公開)
2011年『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(7/15公開)
2010年『アバター』(前年の12/23公開)
2009年『ROOKIES−卒業−』(5/30公開)
2008年『崖の上のポニョ』(7/19公開)
しかしこの2018年は、年間トップを狙えそうな作品があるものの、タイミングや作品の評価などから、当初の予想に比べて決め手に欠ける部分もあり、群雄割拠の状態になりそうだ。現在、2018年の興収ランクでは『名探偵コナン ゼロの執行人』が82億円を超えて1位。年末からの『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が75億円で2位となっている。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
(7/13公開)
3年前の前作が95.3億円で、年間のトップに立ったことから、この夏、最も期待がかかる一作ではある。恐竜ファンは多いし、「ジュラシック」はスピルバーグ監督作からのブランド力も備えている。ただ、続編の多くは前作の80%くらいの興収が現実的。そして今回の作品評価は、映画批評サイトのロッテントマトで前作の71%から、今回は50%へと大幅ダウン。新種の凶暴な恐竜も登場するのだが、展開が全体に甘く、後半は壮大なスケール感が薄めになっている。とはいえ、作品に求める要素は揃っており、夏休みにふさわしい一作なのは間違いない。
予想:60〜70億円
『未来のミライ』
(7/20公開)
細田守監督の新作で、邦画アニメの夏の目玉とされていることから、「コナン」を超えるポテンシャルはある。細田作品は『サマーウォーズ』が16.5億円、『おおかみこどもの雨と雪』が42.2億円、『バケモノの子』が58.5億円と数字を伸ばしてきたので、その勢いが加速すれば、70億円以上は狙える。ただ、今回はすでに観た人から賛否両論も耳にする。筆者にとっても、過去の作品に比べるとインパクトが少なかったので、期待ほど数字は伸びないかもしれない。ただ、いつもの細田作品らしい部分と、斬新な表現は用意されているので、安定感はあるとみる。
予想:60億円
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
(8/3公開)
安定感でいえば、この作品。シリーズ6作目になるが、直近の5作目が51.4億円、その前の4作目が53.8億円、3作目が51.5億円と、数字が横ばい。これはシリーズものとして異例のキープ力だ。トム・クルーズは、数少なくなった「名前で観客を呼べるスター」であり、まだ作品の仕上がりは判断できないものの、今回もアクションの見せ場は申し分ないはず。他の作品が伸び悩んだら、もしかして夏のトップになる可能性も。
予想:50〜60億円
『インクレディブル・ファミリー』
(8/1公開)
観客への事前の調査などで、この夏、かなり高い期待値が得られたディズニー/ピクサー作品。すでに公開されたアメリカでも数字・批評とも圧倒的で、日本でももしかしたら特大ヒットにつながるかもしれない。ロッテントマトでも94%(一般も87%)。前作『Mr.インクレディブル』も52.6億円を達成しているが、それは14年前のことなので、そこから今回の数字は予想しづらい。しかし、その間にファンを増やしたことを考えると、前作並みかそれ以上の数字も期待できる。
予想:50〜60億円
『銀魂2 掟は破るためにそこにある』
(8/17公開)
昨年、実写の邦画でトップになった『銀魂』は、さらにキャストをバージョンアップさせたこの続編で、数字を伸ばす可能性がある。ただし前作の数字は38.4億円なので、伸びしろを考えても、夏休みのトップの座は難しいか。
予想:40〜50億円
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
(6/29公開)
「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ作品ということで、当初、夏休み映画の目玉のひとつと期待されていたが、アメリカの数字もそれほど伸びず、今後のスピンオフの企画が中断するかも、などとネガティヴなニュースも多く流れてしまった(作品の出来が悪いとは言えないのに!)。前回のスピンオフである『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が46.3億円だったので、そのあたりには届きたいところ。なんだかんだ言って、「スター・ウォーズ」の数は侮れないし、やはりハン・ソロというキャラクターは人気なので。
予想:40〜50億円
以上が夏のトップを狙えそうな話題作だが、その他にも数字を伸ばす期待作が、今年は目白押しである。
まず大ヒットの可能性を秘める、邦画アニメの3本。
『ペンギン・ハイウェイ』(8/17公開)
今後の日本アニメーション界での躍進に期待がかかる、スタジオコロリドによる作品で、ベストセラー作家の森見登美彦の同名原作を映画化。突如として町に現れたペンギンたちと、ひと夏の少年の成長&冒険物語がシンクロするのだが、これがかなり予想外の展開。チャレンジ精神にあふれ、大げさに言えばアニメ版『2001年宇宙の旅』と形容したくなる。もしかしたら意外な爆発力を発揮するかも?
『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』(7/13公開)
シリーズ第21作で、2014〜2016年のXYシリーズは30億円に届かなかったが、昨年の前作は35.5億円に復調。過去にさかのぼると40億円以上は常識だったので、今回も堅調か。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 〜2人の英雄〜』(8/3公開)
週刊少年ジャンプの人気コミックがTVアニメを経て、満を持しての劇場版ということで、大ヒットのポテンシャルを備えている。
『劇場版 コード・ブルー−ドクターヘリ緊急救命−』(7/27公開)
人気ドラマの映画化。山下智久が主演で安定的な数字は残しそう。かつての『海猿』のようなヒットにつながるか。
『センセイ君主』(8/1公開)
他の作品が夏休みらしいアクション系やアニメなので、その隙をついて台風の目になるかもしれない。配給会社がかなり宣伝に力を入れているという話もチラホラ。
『オーシャンズ8』(8/10公開)
今回は女性8人の犯罪大作戦で、「メットガラ」という超ゴージャスなパーティが舞台なので、女性観客にどこまでアピールするか。ちなみに「オーシャンズ」シリーズの過去の興収は、1作目から順に、70億円(!)、36億円、32億円。
『BLEACH』(7/20公開)
このところ人気コミックの実写化は厳しい目にさらされており、今作もやや苦戦を強いられるのだろうか……。
以上、まさに群雄割拠の夏休み映画だが、冷静に判断して、「コナン」を上回る爆発的ヒットを達成するのは至難の業だ。しかし、そんな予想を覆す大ヒット作の出現に期待したい。最後に、一昨年、夏の終盤から特大ヒットが始まった『君の名は。』を、ちょっとだけ連想させる作品がある。アニメ版の『君の膵臓をたべたい』(9/1公開)だ。昨年公開の実写版も35.2億円というヒットを記録したが、このアニメ版も事前の調査で予想外に期待値が上がっているという。夏が終わる頃にサプライズが起こるかもしれない。